太陽電池モジュール(太陽光パネル)出荷量が3年連続で世界1位である、中国の太陽光パネルメーカー「ロンジ ソーラー(LONGi Solar)隆基緑能科技股份有限公司」。
そのロンジが、中国の株式市場で株価急落に直面し、このほど約70%の大幅な下落を記録した。
この下落により、同社の株を保有する約100万人の投資家が大きな損失を被った。しかし、こうした逆風の中にあっても、ロンジの社長は192億元(約29億米ドル、約3876億円)の巨額を現金化することに成功している。
2023年5月29日、同社は中国新疆ウイグル自治区ハミ市にある太陽光パネル基地から「大型単結晶シリコンウェハーの価格を引き下げる」と発表した。この衝撃的な発表は、太陽光発電業界全体に影響を及ぼした。
ロンジの株価は、2021年11月末には1株あたり72.55元(約1517円)という歴史的高値を記録した。これは、2020年3月の平均株価が11元(約230円)だったことを考えると、わずか1年余りでほぼ7倍に急上昇したことになる。しかし、その後太陽光発電業界の低迷に伴い、株価は21.6元(約451円)まで大幅に下落した。
2020年10月から12月にかけての株価の上昇期には、多くの投資家がロンジの株を購入した。
ところがこのほど、同社の最大株主でもある社長・李春安氏は「個人資金の必要性」を理由に、34.3億元(約717億円)分の持ち株を売却。さらに同社の株式を高瓴資本(Hillhouse Group)に譲渡して158.41億元(約3312億円)を現金化した。これにより、李春安氏は合計で192.71億元(約4029億円)を手にした。
いっぽう、太陽光発電セクターの株価は2022年7月から下落し始めた。この下落傾向は2024年2月まで続く。株価の下落により、多くの公募ファンドがロンジの株を売却し始めた。そのため、これを扱う機関投資家も2022年6月30日の2107機関から2023年12月末には152機関へと、その数を大幅に減少させている。また、ロンジ株を李春安氏から引き継いだ高瓴資本は、50億元(約1000億円)以上の損失を被った。
かつて中国の太陽光発電セクターは「7か月で市場価値が3倍に増加する」という奇跡を達成したこともあり、2021年には、機関投資家や個人投資家から大きな注目を集めていた。
しかし現在は、3年以上にわたる株価の下落によって、株式を売却しなかった(売却できなかった)株主の平均損失の割合は50%に達している。
中国の、経験豊富なITインターネット評論家「磐石之心」氏は、中国の太陽光発電産業について「過剰生産に悩まされており、業界全体が信頼を失っている」と指摘した。
さらに「磐石之心」氏は、次のように述べた。
「欧米が中国製品に対する輸入関税を引き上げたことが、中国の太陽光発電業界の低迷に追い打ちをかけている。ロンジ株を大量に保有する投資家が損失を回復できるかどうかは、太陽光発電業界が再び高利益、高成長の市場に戻れるか否かにかかっている」
この状況について、ネットユーザーの「阿湛」は次のように表現した。
「この社長(李春安氏)が企業を経営するのは、まるで豚を飼育するようなものだ。豚を太らせたら、売らないわけにはいかない。育て続けるなら、エネルギーも飼料も必要になる」
3月1日、上海A株市場における終値の時点で、ロンジの株価は1株あたり21.60元(約451円)。総市場価値は1637億元(約3兆2903億円)であった。
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