米軍、第一列島線での衝突に備え戦備拡大

2024/04/10 更新: 2024/04/10

2024年において、米国防省は中国共産党を国家安全保障上の最大の脅威と位置づけ、フィリピン海での共同訓練を含む一連の動きを通じて、第一列島線における潜在的な衝突に備えている。

米国防省、中共を国家安全保障の脅威と認定

米国防省が中共を国家安全保障上の最大の脅威と位置づけた後、20年間にわたり中東での地上戦闘の経験を有する米海兵隊は、アジアの広大な島嶼部や海岸線での海戦に向け準備を進めている。

3月29日には、ワシントン・ポストが、台湾有事や中共(中国共産党)軍の軍事的示威活動に対応するため、日本やフィリピンなどの同盟国と協力し、米海兵隊が戦闘体制を整えていることについて報じた。

第3海兵沿岸連隊(MLR)の指揮官ジョン・レハネ大佐は、「過去20年間、我々は技術的に進んだ武器や強大な国家力を持たないテロ組織に注力してきた。しかし現在、我々は組織の再編を行い、技術的に進んだ武器や強大な国家力を有する可能性のある敵に対応するための準備が必要だ」と強調した。

今後10年の再編計画「2030年の部隊設計」を基に、米海兵隊は潜在的な敵国の挑戦に対応するため、より機動的で効率的、技術的に進歩した部隊へと変貌を遂げる予定だ。

「海兵沿岸連隊」は、敵のミサイル攻撃の射程圏内において小規模の兵力で偵察や情報収集、ミサイル攻撃などを行う「スタンド・イン・フォース(敵のミサイルなどの射程圏内にとどまり、たたかう部隊)」として、離島に分散しながら展開する。

海兵沿岸連隊は、米陸・海・空軍と行動を調整しながら、太平洋の同盟国やパートナーと協力する広範な戦略の一環として活動している。中共がその影響力を拡大しようとする「第一列島線」に注目している。

「第一列島線」とは、沖縄県・尖閣諸島や台湾を結んで設定した防衛ラインのことだ。

海兵沿岸連隊は沿岸戦闘チーム(LCT)、沿岸兵站大隊(LLB)および沿岸防空大隊(LAAB)で構成され、軍種横断的な作戦を支援する。

米太平洋海兵隊のキャリー・バトソン大佐は、「この部隊だけで世界を救うことはできないが、もし戦闘が発生した場合、重要な役割を果たすだろう」と表明している。

ワシントン・ポストによると、アナリストらは海兵沿岸連隊を含めた戦略が大きな可能性を秘めているとしつつも、多くの課題に直面していると指摘。特に、戦争が勃発した場合の広大な海域で後方支援の課題、米議会で予算確保の争いによる装備や新技術の供給の困難、国防産業への過剰な圧力、さらには日本などの同盟国が米軍の作戦を自国の領土で許可するかどうかの不確実性が挙げられている。

中共は近年、軍事の近代化と拡張に注力しており、日米などは警戒感を増しており、米中間の潜在的な衝突への懸念が高まっている。

「台湾有事」への米軍の戦略的対応

過去20年間で、中共は軍事の現代化に注力し、西太平洋におけるアメリカの優位性に挑戦してきた。具体的には、南シナ海での人工島の建設や、インド洋及び太平洋における軍事基地の拡張を通じて、太平洋地域における影響力を拡大しようとしている。

米情報機関は、カンボジアの海軍施設が中共軍専用となっていると指摘している。

台湾をめぐり、中共は武力統一を辞さない考えを示している。もし台湾が占領された場合、大規模な犠牲者と破壊を伴うだけでなく、世界の半導体産業や、世界で最も利用される海路である台湾海峡と南シナ海ルートに甚大な影響を与え、経済に深刻な打撃を与えることが懸念される。このことは、世界中の企業や消費者にとって大きな不確実性をもたらす。

海兵沿岸連隊の役割は、衝突発生時に迅速に現地に展開し、収集した情報を基にして空軍のB-1爆撃機に敵の位置を送信することである。これにより、数百キロ離れた中共軍の護衛艦を標的にミサイルを発射したり、日米などの部隊に目標データを提供して南シナ海の争点となっている駆逐艦に巡航ミサイルを発射させたりすることを目的としている。

米海兵隊、先進戦術による準備加速

ワシントン・ポストの記事によると、米ランド研究所のコリン・スミス研究員は海兵隊の遠隔地派遣について、長期的な補給体制の確立には実戦に近い条件下での反復訓練が不可欠であると述べた。平時に可能な移動手段が、長期的な戦争状態では必ずしも同じ効果を発揮しないとの見解を示している。

10月までに、海兵沿岸連隊は「遠征前進基地作戦(EABO)」のために、無人地対艦ミサイル発射システム「NMESIS(ネメシス)」を装備する予定である。

このシステムは、無人で機動性のある攻撃妨害装置であり、無人トラックから海上攻撃ミサイルを2発同時に発射できるものである。これにより、海上及び陸上の目標を撃破できる能力を持つ。

海兵沿岸連隊のライアン指揮官は、部隊の最大の強みは高度な攻撃力ではなく、「戦況の把握、目標データの取得、他では把握できない情報を明らかにする能力」にあると強調した。これは、米国防省が予測する中共との潜在的な衝突において、アメリカの衛星が妨害や破壊を受け、艦船のコンピュータネットワークが攻撃される可能性があるため、重要な能力とされている。

フィリピンとの共同軍事演習を強化

昨年4月には、フィリピンが米国との防衛協力強化協定(EDCA)に基づき米軍が新たに利用や駐留などができる国内4か所の拠点を発表。この中には、台湾海峡に近いルソン島にある2つの基地が含まれる。同月には、アメリカとフィリピンの軍が史上最大規模の合同演習を展開した。

ルソン島北西部では、米海兵隊とフィリピン海兵隊が制空権を確保するための演習を実施し、島の要塞化を図った。これらの基地は、情報収集と攻撃作戦のために使用された。

実弾演習においては、第3海兵沿岸連隊が米海兵隊第3海兵師団の援助のもと、目標船の位置情報を収集し、その後迅速に撃沈した。この船は第二次世界大戦に退役したフィリピン船である。

ワシントン・ポストによると、フィリピン海防連隊の指揮官ギエラム・アラゴネス大佐は、近い将来フィリピン軍がミサイル発射能力を獲得する見通しであると語った。

アラゴネス氏は、「米海兵隊からの支援は計り知れないほど大きく、基礎的な段階からの指導を受けてきた。現在は、その歩みをさらに進めている」と述べた。

訓練は相互に行われている。フィリピン海兵隊は、米軍兵士にジャングルでの生存技術、例えば、竹を使った水の探索・浄化方法や、ジャングルでの豚や山羊の調理方法を教えている。

近年、中共はフィリピンの漁船や海上保安隊に対する妨害を強めている。最近の一件として、3月23日に中国海警局(沿岸警備隊)の船が係争中の南シナ海のセカンド・トーマス礁で正当な補給任務を行っていたフィリピンの船に対し、放水銃を発射した。これらの挑発行為に対抗するため、フィリピンはアメリカとの防衛協力を一層強化している。4月には、両国は再び共同軍事演習を実施する予定だ。

中共の挑発が日本を覚醒

日本の北部から約800キロ離れた地点に、昨年11月に設立された米海兵隊の「第12海兵沿岸連隊」が存在する。この連隊は、沖縄に駐留していた「第12海兵連隊」を改編したものだ。

この連隊は、沖縄の南西にある島々での作戦活動を予定しており、これらの島々は台湾からわずか100マイル(160.9キロ)以内の場所に位置している。

台湾海峡における緊張が高まる中、日本政府はその軍事的焦点を北部から南西にあるこれらの島々へと移行した。これは、冷戦時代に日本の北部が旧ソ連の脅威に直面していた状況からの変化を反映している。

特に、中共は米下院議長ナンシー・ペロシ氏の台湾訪問に激しく反応し、台湾を取り囲む形で軍事演習を実施。その間、ミサイル11発が発射され、うち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下、4発が台湾上空を飛翔した。

これらの出来事を背景に、過去1年半で日本政府は国防予算を大幅に増加させ、アメリカやフィリピン、オーストラリアとの安全保障関係を強化している。

李皓月
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