中国共産党による国民への弾圧と迫害が激しさを増している。米ワシントンの人権団体「中国人権擁護者」の報告によれば、中国共産党は弁護士や偽ワクチン被害者などを「新たな5つのカテゴリ」と定め、その子どもや家族にまで”連座制”を適用。追跡や家宅を荒らすなどの嫌がらせ、子どもの就学や海外渡航の権利剥奪、精神病院への収容など、残酷で無差別な手段を用いているという。
同報告は、すでに服役を終えた政治的反体制派とその家族に対しても、中国共産党が「集団処罰」を継続的に行っている事例を複数取り上げている。
著名な人権弁護士、王全璋氏の妻、李文足氏は、一家が過去1年間に受けた嫌がらせや強制退去について語った。国家安全当局からの迫害は昼夜を問わず続いている。子どもたちが眠った深夜に大勢の警官が家に押し入り、怒鳴り散らしながら物を投げつけ、子どもたちを引きずり出し「出ていけ」と住居からの退去を強いるという。
また、別の人権派弁護士、李和平氏と妻の王峭岭氏も同様の経験をしている。警察からの圧力で大家が断水や停電を行い、窓ガラスを割るなどして退去を迫った。王氏は、夫が「重点人物」「政治犯の家族」とされたために子どもの就学も困難を極めているが、警察は教会学校に通う子どもたちまで付け回し、学校運営まで妨害していると明かした。
他にも、習近平の家族に関するネットデータを漏らしたとして14年の懲役刑に服す牛騰宇氏の母、可可氏は、息子の冤罪を晴らそうと奔走した結果、長期にわたる迫害を受けたと証言。自身の姉が死の脅迫を受け、同じ事件の被告者の家族は当局から「新黒五類(新しい黒い五つのカテゴリー)」などのレッテルを貼られ、可可氏との絶縁を迫られたという。
さらに、中国の偽ワクチン被害者の権利を求めて活動する「ワクチンベビーの家」の創設者、何方美氏のケースも報告書は取り上げた。何氏は2020年10月、河南省輝県の県庁舎前でインクをまいて抗議した際、2人の子どもと共に逮捕され、全員が精神病院に送られた。当時6か月の妊娠中だった何氏は、精神病院で女児を出産させられた。現在も何氏は釈放されておらず、夫の李新氏も逮捕・投獄された。5人家族はバラバラに離れ離れとなり、2人の娘は今なお精神病院に拘束され、長男は学齢の問題で警察により里親に預けられているという。
人権弁護士、当局の誘惑を拒否
人権派弁護士の王全璋氏はVOAのインタビューに応じ、こうした迫害の手口は聞いたことがあったが、実際に家族で経験してみてその深刻さを知ったと語った。出獄後、極めて慎重に行動しているにもかかわらず、当局からの弾圧は止むことがないという。
王全璋氏は中国の著名な人権派弁護士だ。法輪功信者への弾圧に反対し、信仰の自由のための法的支援を行ってきた。2015年の「709弁護士弾圧事件」で、当局は法輪功やキリスト教徒、土地を奪われた農民などの敏感なケースを担当していた王氏を逮捕。2019年に「国家政権転覆扇動罪」で懲役4年6か月の判決が下された。2020年に出所したが、王氏とその家族への嫌がらせと監視は止むことなく続いている。
王氏は、唯一の道は妥協して沈黙することかもしれないと語る。出獄後、法執行官が接触を試み、仕事を見つけるからと給料まで提示してきたが、同じ目に遭った弁護士仲間たちと同様、これが当局による経済的な誘惑だと理解しており、今も拒否し続けているのだという。
「妥協などできない。(中共)政府と何を話し合えるというのか。山ほどの条件を突きつけてくるだろう。これを保証しろ、あれを保証しろと。要するに、黙って抵抗をやめろということだ。仲間たちも皆、同じような目に遭っている」と王氏は語った。
今回報告を発表した「中国人権擁護者」は、中国当局が人権活動家とその家族を厳しく監視下に置き、外部との連絡を断つことで、実態の訴えを封じ込めていると指摘。こうした違法な人権侵害行為は、中国の国際的影響力拡大と共に世界的な警戒を呼ぶべき問題だと訴えている。
台北の非政府組織「華人民主書院」理事長の曾建元氏は、中国政府が人権活動家と家族、社会、国家の関係を断ち切ることで処罰する手法は、古代の「連座制」に似ており、非常に残忍で現代の法治の論理にも反すると批判した。ハイテク監視システムの発達で、かつては逃れられた当局の目も避けられなくなったが、こうした高圧的統治は民心を失う結果を招くだろうと曾氏は語った。
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