中国共産党、5月1日に臓器移植新法を施行…識者「いまや誰しもが臓器狩りのターゲット」

2024/04/29 更新: 2024/04/29

中国では5月1日より、違法な臓器取引を取り締まる新法が施行される。だが、長年にわたり死刑囚や囚人からの強制的な臓器摘出の証拠が絶えない中、新法でこの問題が終結するのか。専門家は一様に首を横にふる。

新法は、正式名称を「人体器官移植条例」から「人体器官捐献・移植条例」に改め、臓器提供の自発性と無償性を強調している。提供者の配偶者や直系血縁者が過去に臓器提供をしていた場合、移植手術の際に優先されるとの規定も盛り込まれた。

ドナーの臓器提供や調達、分配についても規定が設けられ、違法行為に対する処罰も強化され、臓器提供と移植の分野での違法行為を厳しく取り締まるとしている。しかし、これらが実効性を伴うのかについては強く疑問視されている。

誰しもが臓器狩りのターゲット

ウイグル人の元外科医エンバー・トフティ氏は、1995年にウルムチ郊外の処刑場で、まだ完全に死んでいない囚人から臓器摘出を強要された経験を持つ。トフティ氏は「中国共産党の支配下では、誰もが臓器狩りのターゲットになりうる」と警鐘を鳴らす。亡命後、現在は英ロンドンで臓器狩りの実態を訴え続けている。

中国政府は2015年に死刑囚からの臓器摘出を違法化したが、未だに臓器狩りが行われているとの報告は後を絶たない。大紀元の取材で、中国では収容施設はおろか最近は学校でも不審な健康診断やDNA採取が行われ「臓器狩りで狙われているのでは」と実しやかに噂が広がっているという。中国共産党政府はこうした指摘を全面的に否定している。

中国出身で現在は北米在住の医師であるヤン氏(匿名)によれば、臓器移植の半数は軍の病院で行われているという。「軍が介入すれば、地方政府や赤十字は傍観するしかない」とラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に述べた。「臓器移植は一般市民のためではなく、権力者へのサービスだ」とヤン氏は断じる。

国際的な医学倫理組織「臓器の強制摘出に反対する医師の会(DAFOH)」の主席トルステン・トレイ氏も、新法の実効性に疑問を呈する。「ドナーへの透明性あるアクセスが保証されていない」とし、中国の臓器提供プログラムは移植数に見合うほど大規模ではないと述べる。

十数年に渡り調査を続けるカナダの人権弁護士デービッド・マタス氏は、新法について「臓器狩りを隠すための隠れ蓑だ」と一蹴する。「原則や規則は立派に見えるが、実際に履行されているかどうかはわからない」「全ては隠蔽工作、ごまかし、疑惑の否定、対抗する語りに過ぎない」と大紀元に語った。

世界で最も権威のある米移植専門誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・トランスプランテーション」に掲載された2022年の研究では、死刑囚71人から「臓器摘出による処刑」の証拠が見つかったと報告されている。つまり、臓器摘出が死因だったというのだ。

国際心肺移植学会(ISHLT)も同年、「死刑囚からの臓器摘出」が疑われるとして中国からの臓器移植研究論文の発表を全面的に禁止すると発表した。

「ドナー」となる死刑囚だが、中国の処刑数は国家機密とされ、実態は不透明のままだ。

共産党政権では恣意的な法執行によって信仰者や少数民族など無実の人々が多数拘束されている。つまり、日本など海外から中国へ渡航移植をした場合、その無実の拘束され人々が「ドナー」となり、臓器を取り出され殺される可能性があるのだ。

中国は近年、脳死者からの提供臓器を使用していると説いている。しかし、脳死の定義があいまいな中国では、生きた囚人から摘出した臓器を「提供された」と偽装できるとの指摘もある。マタス氏は「個々の臓器のトレーサビリティを備えた透明性の高い臓器提供プロセスがなければ、抜け穴だらけだ」と訴える。

トフティ氏は共産主義政権の悲劇を、自身の故郷で何度も目の当たりにしてきた。「私が育ったのは野蛮な社会だった」と振り返る。幼い頃から何らかの理由で処分された遺体を、街や路上で日常的にみてきた。臓器狩りは、人命軽視の社会ではほんの一例に過ぎないと付け加えた。

専門家らは口をそろえて「透明性と外部監査なくして、臓器狩り問題の解決はない」と訴える。中国共産党の新法は画餅に過ぎず、非人道的な蛮行は闇に葬られている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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