中国「50年債」発行は「国民への債務転嫁」か 専門家「返すつもりあるのかと問いたい」 

2024/05/24 更新: 2024/05/24

コロナ禍以降、中国経済を牽引してきた不動産業の凋落ぶりは凄まじく、当局の財政事情は火の車の様相を呈している。財政部は5月に償還期間が最長50年の超長期債を発行すると発表したが、専門家からは「返済するつもりはあるのか」と疑問の声が上がっている。地方政府は巨額の隠れ債務を抱えており、1兆元の資金は「焼け石に水」との指摘もある。

中国共産党は資金調達のため、5月13日に2024年の一般国庫債券と超長期特別国庫債券を発行する旨の通知を出した。20年満期の国債が3千億元、30年満期が6千億元、50年満期が1千億元で、合計1兆元となる。中国共産党が超長期特別国債を発行するのは6回目となる。

地方政府が運営する投資会社「融資平台」の隠れ債務問題は、中国共産党指導部の頭痛の種となっている。国際通貨基金(IMF)の試算によると、地方政府が公式に発表している債務は35兆元(およそ700兆円)だ。しかし、NHKの報道によると、隠れ債務は56兆元(およそ1100兆円)もあり、合計すると1800兆円になる。

こうした現状について、華人経済学者の李恒青氏は大紀元の取材に対し、1兆元の超長期国債は地方政府の運営費を賄うことしかできず、巨額の債務を前に「焼け石に水」だと指摘した。

「過去2、3年の間、中国当局はあの手この手を使ったが、状況は一向に好転しなかった。特に地方政府にとって、土地財政は収入の30%から40%を占めるところも多い。不動産業界が低迷するなか、多くの地方政府は運営費を捻出することさせままならない状態だ。1兆元の超長期国債は焼け石に水と言わざるを得ない」

米国の経済学者である黄大偉氏は取材に対し、超長期債はインフレリスクがあるため、投資価値は低いと指摘した。政府が超長期債を発行するのは一種の「前借り」行為であり、「一般国民に債務を転嫁する」ことが目的だと指摘した。

李恒青氏はまた、「中国共産党は超長期債の売り出しを急いでいる。販売額が少なければ、『愛国債』として企業や富裕層などに購入を強要する可能性がある」と強調した。

不動産をめぐる不良債務の処理も大きな問題だ。中国経済を長年ウォッチしてきたシンクタンク「国家ビジョン研究会」代表理事の無盡滋氏は取材に対し、中国当局は不良債務を処理しきれないのではないかと指摘する。

「(中国当局は不良債務を)抱えきれないだろう。資本の移動が自由であれば、日本のバブル崩壊のように、ハゲタカファンドが買い取ることができる。中国では政府が処理することになっているが、結局は政府もそれを売却しなければならない。損を被るのは結局は業者か政府かであり、不良債庫の山はどう頑張っても解消されない」

無盡氏はまた、不動産バブルを崩壊させない中国当局の行動によって不良債権は積み上がる一方だと指摘する。

「通常であれば、バブルが崩壊して、企業が破産して、ある程度の区切りが付く。しかし、いつまでもバブルが崩壊しなければ、誰も手を出せない。これでは余計に傷が深くなる」

米国サウスカロライナ大学エイキン校教授の謝田氏は大紀元に寄せた寄稿文で、「中国共産党は、長期国債の少なくとも一部は、中央銀行が購入することを明らかにしている。 これは通常の経済では考えられないことだ」と指摘した。中国の中央銀行は政府から独立していないことを提起し、「国債を直接購入することは市場の歪みを招き、結果的にインフレ率の上昇を招くことになる」と懸念を示した。

日本銀行による国債の引受けは、政府の財政節度を失わせ、中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなることを防ぐため、財政法第5条により原則として禁止されている。

前出の李恒青氏は、より根本的なリスクを指摘した。

「政治的・経済的な混乱が続くなか、20年、30年、50年の超長期国債を発行しても、中国共産党には返済するつもりが本当にあるのだろうか。そして、償還期間が到来する前に、中国共産党政権が崩壊しないと誰が保証することができるのだろうか」

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
寧芯
趙彬
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