河野太郎デジタル担当大臣は、オンラインでの投票の実現に向けて意欲を示した。エストニアでは既に国政選挙の51%がオンラインで行われており、日本でも技術的には可能だと述べた。いっぽうオンライン投票はサイバー犯罪のリスクが拭えず、専門家は警鐘を鳴らす。
河野氏は26日に公表した自身のインターネット動画番組で、エストニアでのオンライン投票の事例を挙げて不正防止は可能だと説明した。オンラインと投票所での投票では、後者が優先されるため、「たとえ脅迫されて(自らの意思にそぐわない人物へ)オンラインで投票しても、後から投票所で自分の意思で投票すれば、それが有効になる」と述べた。
日本でオンライン投票を実現するには、公職選挙法の改正が必要となる。選挙に関する事項は議員立法によらなければならないため、デジタル庁は法案を提出できない。河野氏は、自民党の選挙制度調査会長や公明党に対して、与野党で議論を活発化させ、法改正を求めていると述べた。
デジタル投票 技術的課題は山積み
いっぽう、サイバーセキュリティの専門家は、オンライン投票は「非常にリスクが高い」と警告している。
米カリフォルニア大学バークレー校の研究グループは一昨年の報告で、安全なインターネット投票の実現は現状では不可能であり、検討の基準となる標準すら策定できないと結論づけた。
研究は、インターネット経由の投票では、選管が結果を確認する信頼できる方法がないと指摘する。マルウェア、標的型のサービス拒否攻撃、本人確認のためのデジタル認証基盤の欠如、大規模な攻撃の脅威など、解決すべき技術的課題は山積みだ。さらに、インターネット投票は紙の記録を残さないため、有権者に結果の正当性を説得するのはさらに難しくなると専門家は警鐘を鳴らしている。
米ニューヨーク大学ロースクールのブレナン司法センターも以前、電子投票システムのセキュリティと信頼性の欠如を指摘している。投票機器へのサイバー攻撃は個々の機器の故障や有権者の信頼を大きく損ねる可能性があり、特に接戦の選挙区では問題になり得ると警鐘を鳴らしている。
デジタル庁が2023年公表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」ではオンライン投票について、日本国外に住む邦人が投票する「在外投票」の場合、オンライン投票の導入を検討すると明記しているが、国内の国政選挙への導入について記載はない。
日本は国政選挙の投票率が低く、国も対策を検討している。総務省によれば、国政選挙の年代別投票率は10代から30代の投票率は40%台以下にとどまり、「特に若年層への選挙啓発や主権者教育に取り組む」としている。
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