米中経済・安全保障再検討委員会(USCC)のメンバーで、米データ解析大手「パランティア・テクノロジーズ」のアレックス・カープ最高経営責任者(CEO)の顧問を務めるジェイコブ・ヘルバーグ氏は以前からトランプ前大統領の大ファンだったわけではない。
ヘルバーグ氏は、2021年に出版した著書「The Wires of War」の中で、「バイデン氏の勝利後、トランプ氏にあおられた何百万人もの米国人が、トランプ氏が実際に勝利したと主張する根拠のない陰謀論にふけった」と書いている。
2020年のアメリカ大統領選挙期間中には、ヘルバーグ氏は民主党のピート・ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長の資金調達を担当していた。
しかし、ここ数週間、ヘルバーグ氏は、トランプ氏の熱心な支持者として名乗り出ている。5月には、ワシントン・ポスト紙が同氏はトランプ陣営に100万ドルを寄付したと報道している。
ヘルバーグ氏は、エポックタイムズに「トランプ前大統領への追加支援を否定するつもりは全くない」と語った。
2020年、バイデン大統領の最大の支持者の多くはビッグテック出身者だった。例を挙げると、フェイスブック(現メタ)の共同創業者兼CEOマーク・ザッカーバーグ氏、リンクトインの共同創業者リード・ホフマン氏、故スティーブ・ジョブズ氏の未亡人ローレン・パウエル・ジョブズ氏たちだ。
現在も、テクノロジー業界においてはバイデン氏への根強い支持がある。サン・マイクロシステムズの共同創業者であるヴィノッド・コスラ氏は、5月にバイデン氏のために資金調達パーティーを主催した。ヤフーの前CEOマリッサ・メイヤー氏もバイデン氏のためにレセプションを開いている。
しかし、トランプ氏はテクノロジー業界で支持を広げつつあるようだ。
ヘルバーグ氏は、アメリカニューヨーク州地裁の陪審が不倫口止め料をめぐる裁判でトランプ前大統領に対し有罪判決を下したことについて疑義を呈した。
ヘルバーグ氏は、この裁判が「広く見せかけだとみなされている」と述べ、「有罪判決は報復行為のように思える」と語った。
ヘルバーグ氏は、オバマ元大統領に対する考えが変わった理由を問われると、オバマ政権の対中政策(同氏は「管理された衰退政策」と呼んでいる)を理由に挙げた。
テック業界で漸進的にトランプ氏支持の波広がる
テック業界で、漸進的にトランプ氏への支持する声が広がっている。
ヘルバーグ氏のようなパランティアの従業員(パランティリアン)や防衛技術界に関係する人々は、トランプ氏を支持している。
2022年のアメリカ中間選挙では、X(旧Twitter)の従業員からの寄付の大半が民主党に集まった。
他のテック企業と比べると、パランティアからの二大政党への支持は均等に分離している。アメリカの政治資金の流れを調査しているNPO「オープン・シークレッツ」の分析によると、パランティアに関連する議会の寄付金の約56%が民主党に、約40%が共和党に流れている。
アメリカ防衛技術企業アンドゥリル・インダストリーズの共同設立者パーマー・ラッキー氏は、8日にカリフォルニア州ニューポートビーチで、トランプ氏のために資金調達イベントを共同主催した。ラッキー氏の妹は、マット・ゲイツ下院議員(共和党)の妻で、長年トランプ氏や他の共和党政治家への熱烈な支持を寄せている。アンドゥリルは、パランティアのチームによって共同設立された。
著名なベンチャーキャピタル投資家で、シリコンバレーの起業家でもあるデビッド・サックス氏は、フロリダ州のデサンティス知事や、ジョン・F・ケネディ大統領の甥で、無所属での立候補を目指す弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏の大統領選挙キャンペーンを以前支援していたが、6日にはアメリカ著名ハイテク投資家チャマス・パリハピティヤ氏とともに、テック業界向けにトランプ氏のための資金調達のイベントを共同主催した。
パリハピティヤ氏は過去に、「スーパーPAC」と呼ばれる政治団体に100万ドルを寄付するなど、多額の資金を民主党に寄付した人物であった。
パリハピティヤ氏は「私はケネディ・ジュニア氏に寄付した。民主党にも多額の寄付をした。そしてドナルド・トランプ氏にも寄付するつもりだ。そしてもしバイデン大統領と話し、彼の立場を本当に理解する機会があれば、彼にも寄付するだろう」と党派性を排した選挙への支援をすると語った。
ロバート・ケネディ・ジュニア氏をめぐっては、昨年ツイッターの創設者ジャック・ドーシー氏がケネディ氏への支持を表明した。
6日、シリコンバレーの起業家サックス氏は、Xに「有権者はトランプ政権の4年間とバイデン政権の4年間を経験してきた。これをテック業界では『ABテスト』と呼んでいる。経済政策、外交政策、国境政策、法的公平性に関しては、トランプ氏の成績が優れていた」と投稿し、トランプ氏への支持を表明した。
ヘルバーグ氏も6日、「シリコンバレーでこれまで見たことのないような共和党大統領候補に対する熱狂と興奮」を目撃したと述べた。
インターコムのCEO兼共同創設者であるエオガン・マッケイブ氏も、Xで同様の見解を示し、 トランプ氏との自身の写真を投稿した。
「私はそこで6人と話をした。共和党支持者は一人もいなかった。全員が過去に民主党に投票したり寄付したりしていた。彼らは今、戦争、移民、暗号通貨などに関する政策でこの男を支持している。今回の選挙はこうした問題に関する国民投票だ」と書いている。
暗号通貨に対して、トランプ氏は自身が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」に「残っているビットコインを、すべてメイド・イン・USAにしたい!」と投稿した。
ヘルバーグ氏は、テクノロジー業界における現在のトランプ氏支持の勢いの原因について尋ねられると、「人々はだまされていることに気づき始めている」とエポックタイムズに語った。
「ペイパルマフィア」などがトランプ氏を熱烈支持
著名なベンチャーキャピタル投資家で、シリコンバレーの起業家でもあるデビッド・サックス氏は、アメリカ電子決済サービス大手ペイパルを共同で創業したメンバーで構成されているいわゆる「ペイパルマフィア」の一人として知られている。
ペイパルの共同創業者ピーター・ティール氏、スペースXの創業者イーロン・マスク氏、コスラ・ベンチャーズのキース・ラボイス氏は、アメリカ保守派に影響力を持つことで知られるペイパルの元社員だ。ヘルバーグ氏の夫であるラボイス氏は、ニッキー・ヘイリー元米国連大使を支援するスーパーPAC「スタンド・フォー・アメリカ・ファンド」(SFA)の大口献金者だった。
ペイパルの元社員であるロエロフ・ボサ氏は、米ベンチャーキャピタル(VC)大手セコイア・キャピタルのマネージングパートナーになった。
セコイア・キャピタルのパートナーであるダグ・レオーネ氏とショーン・マグワイア氏は最近、今回の選挙期間中にトランプ氏を支持していることで注目を集めている。
レオーネ氏は3日、 Xへの投稿で、破綻した移民制度のあり方、膨れ上がる財政赤字、外交政策の失策などの現在のアメリカの状況を懸念し、トランプ氏に投票すると述べた。
2016年にヒラリー・クリントン氏に寄付したマグワイア氏は先月30日、Xへの投稿で、トランプ氏に30万ドル寄付すると大々的に宣伝した。「2016年当時、私はメディアの熱狂に酔いしれ、トランプ氏について心底怖がっていた」とマグワイア氏は書いている。バイデン氏からトランプ氏に支持を変更した理由について、米軍のアフガン撤退を挙げている。
ヘルバーグ氏は著書「The Wires of War」の中で、2020年の米大統領選挙直後には「権威ある情報源が選挙結果に異議を唱えなかった」と書いている。
ヘルバーグ氏は、エポックタイムズに対し、「大手テクノロジー企業は『誤情報』として罰せられるものの定義を広げてきた。今日、こうしたプラットフォームのほとんどは、新たな理論、特に保守的な見解に対して過度に検閲的かつ敵対的になっている。これは間違いであり、軌道修正されるべきだ」と語った。
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