中国の富裕層、特に百万長者や億万長者が海外移住を進めている。中国共産党(中共)政府の経済運営と中国経済の将来に対する評価を移住という形で評価している。賢明な資金は中国から逃げ出しているようだ。2024年には、1万5200人の移住が見込まれ、過去最多となる。
投資移民を専門とする企業Henley & Partnersはこの動向を追跡しており、今年の予想数値は2023年の1万3800人から約10%増加していると報告している。これに加えて、香港からも500人の富裕層が離れると予想されている。移住先は主にアメリカ、カナダ、シンガポールだ。これらの富裕層がどれだけの財産を持ち出すかを正確に把握できないが、過去の経験から、Henley & Partnersは各移住者が3千万ドルから10億ドル相当の財産を持ち出すと推定している。
移住の理由は様々であるが、大半が中国現在の経済状況に内在する不確実性と、それが将来の投資収益に対する懸念が挙げられている。進行中の不動産危機と不動産市場の混乱がこの不確実性の根底にある。特に不動産価値の下落が家計の富を損ない、それが中国の経済成長全般に疑問を投げかけている。
一部の移住者は中国を離れるとして、中国の経済見通しがムーディーズとフィッチの2つの信用格付け機関によって格下げされたことを挙げている。明言されていないが、習政権が過去に示した民間企業や個人の富に対する敵対的な態度も明らかな理由だ。
かつて、シンガポールはこのような移民にとって最も人気のある移住先だった。しかし最近、シンガポールは中国からの富の流入に対する監視を強化している。何も隠すものがない人々でさえ、シンガポールのヘイブン(隠れ家)に暗黙の了解となっている煩わしさやとプライバシーの喪失を避けたいと思うかもしれない。
前述のように、カナダとアメリカは引き続き中国の富にとって人気のある代替地だ。アラブ首長国連邦も所得税ゼロであり、贅沢な生活スタイルが得られ、投資資金の移動を容易かつプライベートにする「ゴールデンビザ」を提供していることで、人気を博している。日本も、中国に近く、魅力的な生活スタイル、そして世界で最も安全な国の一つと言え、人気を集めている。
富裕層の流出が見られるのは中国だけではない。韓国と台湾でも同様な事態が起こっている。韓国と台湾の場合、経済よりも安全保障が主要な懸念事項である。韓国では北朝鮮の強硬姿勢が大きな影を落としており、台湾では中国共産党の挑発的な姿勢が人々を移住に駆り立てている。アメリカが台湾を防衛する意思があるかどうかについての疑問も影響を与えているに違いない。
中国問題専門家にとって、この移住ニュースは2つの重要なメッセージを伝えている。一つは、中共政府の経済運営に対する明確な否定的評価である。もう一つは、この富の流出が北京政府の中国経済再生の努力を一層困難にすることであるが、この影響を数値化する方法はない。
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