四川省成都市で19日夜、「城管」が果物売りの露天商に暴力を振るい、城管が呼びつけた警察が別の露天商を逮捕したことが発端となり、怒った民衆が一気に集まってパトカーを取り囲んで抗議するという、非常事態となった。
なお、「城管(城市管理)」とは、主として無許可での路上販売を取り締まる公的な管理者である。しかし、その暴力的なふるまいから市民の反感や恨みを買うことも多い。
今回の事件は、そうした「城管」に対して、市民が日頃から抱いていた怒りに火が着き、一気に爆発した結果とも言える。
その日の夕方、城管は果物売りの露天商を追い払う際に暴力を振るって負傷させた。そのことが別の露天商たちの怒りに火を付けることとなり、城管と露天商の間で激しい衝突に至った。
そこで、城管は露天商たちを弾圧させようと警察を呼び、警察が負傷した露天商ではない別の露天商に手錠かけて連行し、現場から立ち去ろうとした時、城管や警察のやりかたに不満を爆発させた市民は城管や警察の車両を取り囲んだ。
民衆は、城管や警察に対し、「負傷した露天商を病院へ送って治療させろ」「逮捕した露天商を開放しろ」と求めた。
しかし、城管も警察も最初のうちは民衆の要求に応じず、混乱に乗じて現場から立ち去ろうとしていたため、ついに事態はエスカレートし、抗議行動に発展した。抗議活動に加わる市民の数はどんどん増えていき、「ピーク時で千人は超えていた」とされる。
怒涛の民意を前に、警察は最終的に妥協することになり、捉えた露天商を開放した。自由になった露天商はパトカーの上によじ登り、片方、外された手錠がまだついたままの手を突き上げるなどして、城管の暴力に抗議する叫びを上げ、周りの市民から歓声が巻き起こっていた。
抗議活動は夜中の10時まで続き、警察が負傷した露天商を病院へ送ったのを見届け、抗議市民はようやく解散しはじめた。
庶民いじめか
中国の街角には、自家で育てた野菜や果物、ニワトリや卵などを担いで売りに来る農民や、生計を立てるために小商いをする露天商がいる。
そうした人たちが、城管の暴力的な「公務執行」に遭ったり、それが原因で死亡したりする事件が、中国各地で昔からしばしば起きており、ニュースにもなっている。
「城管」のやることは、あまりにも暴力的であり、ほとんど「庶民いじめ」のようにも見える。無許可の路上販売をしないよう指導するにしても、もう少し穏便な方法はないものかと考えるものも多い。
SNS上には、そのような「城管」による、残酷な「公務執行現場」を捉えた動画が数多く拡散されている。
それらは、複数の城管による集団暴行シーンや、城管によって路上にぶちまかれ、踏みつけられた商品を泣きながら拾い集める女性。没収されようとする売り物を返してもらおうと、城管の腰に泣いてしがみつく老婆など、心が痛む光景ばかりだ。
そのため露天商ではなくても、以前から「城管」に対する中国の人々のイメージは最悪になっている。
その証拠にSNS上では、どこそこの城管が市民に報復された。城管が交通事故に遭った。城管の車が河に落ちたなどといった投稿があがり、その度にコメント欄には決まって大歓声があがる。
そこには「ついに天罰が当たった」といったコメントがあふれるのだが、今回の騒動にしても、集まった群衆は、全員が「反城管」であることは間違いない。
(野菜売りの中年女性の露天商を暴力で駆除する当局者)
体制転覆の「火種」を恐れる中共
もちろん個別的な「城管」の資質の問題もあるが、そうした輩を「公務」に就かせている政治体制に対して、市民の不満はもはや限界に近くなっている。
英語に「It is the last straw that breaks the camel’s back」という諺(ことわざ)がある。「ラクダの背骨を折るのは最後の藁だ」という意味である。
軽いワラ1本であっても、その1本で荷重に耐えられる限界を超えた時、ラクダの頑強な背骨も折れる、というのだ。
民衆の不満が積もりに積もって限界を超えたとき、その火種は、中国全土を巻き込む「造反」のきっかけにもなる。
中国共産党は今、それによって引き起こされる革命を心底恐れている。
実際、中国では近年、城管や警備員(団地・マンションを管理)による市民いじめに対抗するための大規模な抗議活動が増えている。
台湾国際放送によれば、中国における大規模な抗議活動の発生件数は年々急増しており、過去は年間数千件であったが、いまでは少なくとも10万件以上発生している。
「毎日、平均約500件の抗議事件が中国で起きている」と推量されており、これら抗議事件のうち、中共(中国共産党)当局が譲歩して民衆側の要求をのむケースも局が屈服し、民衆の要求が満たされるケースも増え始めている。
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