国際エネルギー機関(IEA)が10月16日に発表した「2024年世界エネルギー見通し」報告書は、電力需要の急増がエネルギーシステムに大きな負荷をかけており、再生可能エネルギーや代替エネルギーの導入が急速に進んでいるが、化石燃料は21世紀半ばまでエネルギー源の主要部分を占め続ける見通しだと指摘した。
この報告書では、特に風力や太陽光発電の分野でクリーンエネルギーの導入が加速している一方で、化石燃料への依存を大幅に減らすためには、現在の進行ペースでは十分ではないと指摘している。IEAの「既存政策シナリオ(STEPS)」によれば、現行の政府政策に基づくと、化石燃料は依然として主要なエネルギー源として位置づけられている。
STEPSのシナリオでは、2030年までに石炭、石油、ガスの使用量がピークを迎えるものの、化石燃料は2050年でも依然としてエネルギー源の58%を占めると予測されている。これは、2023年の80%から減少しているが、気候に焦点を当てた代替シナリオが掲げる目標と比較すると大きく遅れを取っている。
IEAによると、APS(発表済みの公約シナリオ)では、2035年までにクリーンエネルギーが世界のエネルギー需要の40%を、2050年までに約75%を占めると予測されている。最も野心的なネットゼロ排出シナリオでは、2050年にはクリーンエネルギーが90%のエネルギー需要を満たすとされている。
また、IEAの報告書は、2020年代後半に石油や液化天然ガスの供給が過剰となり、価格が低迷する可能性があることを指摘している。これにより、グリーンエネルギーへの移行が遅れるリスクがある。
IEAのビロル事務局長は声明で、エネルギー価格が低下すれば、価格高騰で打撃を受けた消費者にとっては救済となる一方、代替エネルギーへの投資の緊急性を低下させる可能性があると述べている。
さらに、報告書は、輸送エネルギーの電化やデータセンターのエネルギー消費の増加、冷却需要の拡大により、世界的な電力需要が急増していることを強調している。しかし、クリーンエネルギーインフラへの投資が追いついていない。
「現在、再生可能エネルギーに対して1ドルの投資が行われるごとに、送電網や蓄電設備に60セントが投じられているが、これはクリーンエネルギーの成長を支えるには不十分である」とIEAは指摘している。
先進国を含む多くの地域では送電網の拡張や許認可プロセスが遅れていることが、クリーンエネルギーの成長を妨げている。発展途上国では、資本コストの高さや政策の不透明さが、クリーンエネルギーインフラプロジェクトの進行を阻んでいる。このインフラギャップは、グリーン移行のペースを遅らせ、化石燃料への依存を継続させる大きな要因となっている。
「クリーンエネルギーへの移行が勢いを増しているものの、世界はネットゼロ排出目標に向けた軌道にはまだ遠い」とIEAは結論づけている。
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