パラオ 観光業の多様化で中国依存からの脱却を目指す

2024/12/03 更新: 2024/12/03

パラオ台湾との外交関係を断絶しない姿勢を貫いており、中国共産党(中共)からの報復として観光業に圧力を受けている。中共政府は中国人観光客のパラオ訪問を制限している。これはパラオ経済に影響を及ぼしているが、同国は依存脱却を目指し多様化を進めている。その成果が徐々に表れ始めており、複数の航空会社が新たにパラオ行きの路線を発表している。

中共は長年にわたり、経済を武器に台湾と外交関係を維持している国に圧力をかけてきた。ソロモン諸島とキリバス、ナウルが台湾と断交して中共と国交を樹立したが、パラオは台湾との関係を断つことを強く拒否している。

パラオ大統領、中国による「観光業の武器化」を非難

パラオのスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領は7月に、中共が観光客需要を武器化し、圧力を加えていると指摘した。

国際通貨基金(IMF)のデータによれば、パラオのGDPの約半分が観光業に依存している。中国人観光客が全体の約半分を占めていた。

2017年、中共政府は国営旅行会社に対し、パラオへの団体旅行を禁止した。その結果、中国人観光客は同年末までに22%減少した。

今年5月には、マカオで開催されたアジア太平洋観光フォーラムへの参加を禁じられた。パラオ政府は、この措置の背後に中共政府がいると非難している。

さらに、6月に、中共政府は中国人観光客の安全が脅かされる可能性があり、パラオへの旅行を慎重に検討するようにと述べた。中共の官製メディア人民日報は、これは中国人観光客の安全を脅かす事件の増加に対する「自然な対応」だとしている。しかし、パラオの観光大臣はこれを否定し、中国人観光客の安全を脅かす事件は一切発生していないと述べている。

中共が観光業を外交手段として利用するのは初めてではない。2017年、韓国がソウルにアメリカの支援するミサイル防衛システム(THAAD)を設置する計画を進めた際、中共政府は報復措置として、中国人観光客の韓国への団体旅行を禁止した。

ウィップス大統領は、中国人観光客への依存を減らし、経済の多様化を図る必要性を強調している。中国政府はパラオに対し、台湾との関係を断つならば大規模なホテル建設や観光客の誘致を約束すると提案したが、パラオはこれを拒否した。

パラオ観光業、脱中国依存して多様化へ

かつて中国人観光客は外国人観光客の中で最大の割合を占めていたが、その数は2015年の9万1千人から現在では約1万5千人にまで激減している。

同国のトメトゥチル観光大臣は、世界中でパラオの観光業を積極的にPRし、新たな航空路線の誘致に取り組んでいる。

同氏は「私たちには文化や環境を尊重する成熟した観光客が必要だ」とし、「収益に貢献する観光客」をターゲットにしていると述べた。特に日本と韓国を主要市場とし、年間12万人の観光客誘致目標を達成することを目指している。。

新たな航空路線がパラオ観光を後押し

パラオの取り組みは実を結びつつある。アメリカのユナイテッド航空は、2024年4月に東京とパラオを結ぶ直行便を開設すると発表した。さらに、カンタス航空も11月にオーストラリアからパラオへの直行便を開始すると発表した。これらの新路線により、パラオの観光市場は多様化し、アジア市場の変動に対する影響が軽減される見込みである。

アジア諸国からの直行便復活を背景に、世界銀行はパラオが2024年に11.2%の経済成長を達成すると予測している。トメトゥチル氏は、中国の影響を抑えるため、私たちは経済を強化し、各国を結ぶ新たな航空路線の確立を築く必要があると語った。

 

張婷