韓国 尹錫悦大統領の逮捕状執行 緊迫の6時間攻防の末 中断

2025/01/03 更新: 2025/01/04

1月3日、韓国当局が弾劾された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する逮捕状を執行しようとしたが、大統領官邸の安全要員によって阻止された。最約6時間の対峙の末、最終的に検察と警察は逮捕状の執行を見送り、官邸を退去した。

背景と逮捕状の経緯

尹錫悦氏は2024年12月3日に一時的な戒厳令を発動し、これによって弾劾されるとともに、内乱罪での刑事訴追に直面している。これまでに3回の出頭要請を拒否したため、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)はソウル西部地方法院に逮捕状を申請し、2024年12月31日に承認を受けた。

公捜処は1月3日、逮捕状の執行を開始したと発表。約3千人の警察を動員し衝突の拡大を防ぐ体制を敷いたが、官邸周辺には尹錫悦支持者が数百人集結。「人民が大統領を守る」と叫ぶなど緊迫した状況が続いた。

午前6時14分、公捜処の捜査チームは中央政府果川庁舎を出発し、7時21分にソウル龍山区の官邸に到着。しかし、官邸の進入路はバスや軍の障害物で封鎖されており、捜査員が内部に入るまでに時間がかかった。8時2分頃、ようやく内部に進入したものの、官邸の警護部隊との対峙が続き、逮捕状の執行は再び阻まれた。

午後1時30分、検察と警察は「現状では逮捕状の執行は困難」と判断し、撤退を決定。投入された捜査員は約150人で、公捜処関係者30人と特別捜査隊120人が含まれていた。

逮捕状の有効期限は1月6日までであり、もし逮捕に成功した場合、尹錫悦氏は48時間の拘留が可能となる。その後、追加の拘留令を申請するか釈放するかが判断される。逮捕後はソウル拘置所に収容される予定だ。

逮捕状を巡る議論

尹大統領の弁護団は1月3日、「公捜処が尹大統領に対する逮捕状を執行しようとする行為は『違憲・違法な令状』に基づくものであり、その執行自体が違法である」と主張した。

弁護団は声明で、「公捜処には内乱罪の捜査権がなく、逮捕状の申請は違法であり、裁判所による令状の発付も違憲かつ違法で、無効である」と指摘。「この令状の執行は違法行為に該当し、もし公捜処が執行し、警察が協力した場合、公捜処と警察は刑法第124条に規定される不法逮捕罪を犯したことになる」と述べた。

また、逮捕状と共に発付された捜索令状に記載された「刑事訴訟法第110条および第111条の適用を除外する」という内容についても、「法律の効力を停止する判断は憲法裁判所のみが行えるものであり、それ以外は立法の領域に属する」と批判した。

大韓民国 刑事訴訟法第110条
軍事上の秘密を要する場所の捜索・押収に関する規定。この条文では、責任者の承諾なしには軍事機密に関わる場所での押収・捜索ができないと定めている。

大韓民国 刑事訴訟法第111条
公務員が所持・保管する職務上の秘密に関する物の押収についての規定。この条文によれば、所属公務所や監督官公署の承諾なしには、公務員が保管する職務上の秘密に関する物を押収できないとされている

一方、最大野党「共に民主党」の朴燦大院内代表は同日、国会最高委員会議で「逮捕令状の執行には協力すべきだ」と強調した。「尹錫悦氏は国家の分断を招くのではなく、国民の命令に従い逮捕令状の執行に応じるべきである」と述べたうえで、「執行を妨害した者は特別公務執行妨害罪や内乱共犯の疑いで厳しく処罰される」と警告した。

公捜処は違法性を避けるため、逮捕状発行後も約4日間、慎重に執行方法を検討したとされるが、今回の事態はさらなる波紋を呼んでいる。

戒厳令発動とその波紋

尹氏は2024年12月3日深夜、「反国家勢力の排除」を目的として戒厳令を発動。この決定は国内外で大きな衝撃を与えたが、発令からわずか6時間後に撤回された。尹氏は国内の反対勢力を「北朝鮮支持者」と批判し、不正選挙の疑惑を主張したが、具体的な証拠は示されていない。

尹氏は現在、内乱罪の刑事訴追と憲法裁判所での弾劾審理が進行中である。憲法裁判所は尹氏の職務復帰か永久免職かを判断する予定であり、次回の公聴会は1月5日に開催される。

陳霆
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