オピニオン インド太平洋諸国は、自国の船舶、航空機、領土に対する中国の侵略に対抗する責任の大部分を担う必要がある。

インド太平洋諸国 中国の脅威に対抗するため防衛費増額 

2025/02/04 更新: 2025/02/04

論評

南シナ海および周辺海域における中国政府の一層攻撃的な行動は、中国の圧力を受ける国々が、国防費をGDP比3.4%前後のアメリカと同等の水準に引き上げる必要があることを強く示している。

最近、米海軍とフィリピン軍は、南シナ海で二国間の海洋協力活動を実施した。アメリカ側は、米海軍カール・ビンソン空母打撃群が参加し、支援艦として タイコンデロガ級巡洋艦とアーレイ・バーク級駆逐艦が同行した。フィリピン側は小型の水上戦闘艦2隻を派遣。公表された情報によれば、演習は順調に進んだと言う。

中国によるフィリピンへの挑発行為は1999年に始まった。フィリピンは、中国が不法に領有権を主張するセカンド・トーマス礁の領有権を維持するため、意図的に艦船を配備し、座礁させた。しかし、中国は2023年以降、海軍、沿岸警備隊、海上民兵の艦船を動員し、フィリピンの規模の小さい海軍・沿岸警備隊のみならず、商業船や漁船に対しても威嚇・攻撃を強化した。その目的は、威嚇し、損害を引き起こし、さらには乗組員の負傷をもたらすことだ。

最近行われた米比合同海上演習は、中国の嫌がらせを抑止するには至らなかった。演習終了後わずか数日で、中国の沿岸警備隊の艦船と海軍ヘリコプターが、フィリピンの漁業調査船団に嫌がらせして、調査を中止せざるを得なかった。

南シナ海にとどまらない中国の攻撃的な行動

今日、中国によるこうした威嚇行為は南シナ海にとどまらず、黄海、東シナ海、さらに第一列島線(日本、台湾、フィリピン北部を含む小島群)周辺にも拡大している。

中国による継続的な嫌がらせや威嚇行為の影響を受けている国々と、その国防費のGDP比率は以下の通り。

台湾 7.7%

フィリピン 1.0%

オーストラリア 1.9%

日本 1.2%

ベトナム 2.0%

韓国 2.8%

アメリカ 3.4%

中国の海上威圧戦略とその影響

中国は、海軍、沿岸警備隊、海上民兵の船舶を数百隻規模で動員し、危険な威嚇行為を繰り広げている。状況に応じて、さらに数千隻を投入できる体制も整えている。

こうした行為に対し、標的となった国々は抗議や警告を発しており、国際海洋裁判所も中国の行動を違法と認定している。しかし、中国政府は、意に関せず、依然として他国の船舶を妨害・攻撃し、軍事力を使った領土奪取を試みている。

中国の威圧行動には、次のようなものがある。

  • 他国の船舶の前に割り込み、急停止や回避行動を強要する
  • 衝突の脅威をちらつかせ、実際に衝突する
  • レーザーを使用し、船舶や航空機の乗組員を目くらましする
  • 高圧放水砲を用いて他国の乗組員を攻撃する
  • 他国の船舶に乗り込み、乗組員を暴行・攻撃する
  • ヘリコプターを使用し、威嚇・妨害を行う

このことから、いくつかの結論を導き出すことができる。

第一に、そして最も明白なのは、中国政府はこのような戦術が自国にとって有利であると確信している。実際、これらの威嚇行為と海上勢力の投入は、中国が南シナ海で27か所に及ぶほぼ違法な人工島基地のネットワークを構築し、戦略的優位性を大幅に強化する上で重要な役割を果たした。

また、中国の威圧行為を和らげる目的で、一部の南シナ海沿岸国は、中国との海洋資源利用協定を締結してきた。こうした協定には、中国の対立的な姿勢を、和らげることを期待する意図があったと考えられる。

また、オーストラリア、日本、韓国、フィリピンの場合のようにアメリカと同盟を組むだけでは、中国からの嫌がらせの阻止には十分ではないかもしれないということが、ますます明らかになってきている。

中国は、多数の艦船、潜水艦、航空機、ミサイルを保有し、さらに衛星追跡・監視技術の向上を活用することで、インド太平洋地域において最も強力な軍事大国であると喧伝され、信じられている。

確かに中国はアメリカとの戦争を望んでいない。しかし、アメリカがいくら中国に対して威嚇行為の停止を求めても、中国が応じることはない。

中国の強硬姿勢と国際的な反発

中国共産党(中共)は、こうした威嚇戦略が一定の成果をもたらしていると考えているが、一方で、その影響として中国の脅威にさらされる国々が、戦略的な同盟を形成する動きを加速させている。

その中でも、特に重要な戦略的枠組みが「クアッド」だ。この枠組みは、日本が主導し、オーストラリア、インド、アメリカ、そして日本が連携し、中国の違法な海洋権益主張に対抗し、「ルールに基づく海洋秩序」を東シナ海・南シナ海で維持することを目的としている。

もう一つの重要な枠組みが、日米韓三か国安全保障協力(米日韓安保協定)だ。最近、この枠組みは、以下の声明を発表した。
「南シナ海における、違法な海洋権益主張に反対することの重要性を認識し、国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく航行および上空飛行の自由を含むグローバルな海洋秩序を支持する」

防衛費の増額と各国の責任

アメリカがこれらの同盟で中心的な役割を果たすのは当然だが、中国の脅威にさらされている国々も、防衛費の対GDP比を引き上げ、自国の艦船や航空機を増強し、中国への抑止力を強化すべきだ。

他国が防衛予算を増額したとしても、アメリカが依然として最大の軍事貢献国であり続けることに変わりはない。しかし、各国がより積極的に防衛力を強化すれば、アメリカの負担が軽減され、より均衡の取れた安全保障体制を構築できる。

第二次世界大戦の終結から80年が経過し、現在アメリカの国家債務は36兆ドルに達している。こうした状況下で、アメリカが自由世界のあらゆる安全保障問題に対し、これまで通り軍事的な主導権を担い続けるのは、もはや現実的ではない。

このため、各国が自主的に防衛能力を強化し、共同で地域の安全を守る枠組みを整えていくことが不可欠となる。

国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。
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