グーグルも「多様性・公平性・包摂性(DEI)」に基づく採用目標廃止

2025/02/06 更新: 2025/02/06

米IT大手グーグルが5日、多様性・公平性・包摂性(DEI)に基づく採用目標を撤回した。同社は「米連邦政府の仕事を請け負う立場として、大統領令に従った変更を検討する」と説明している。日本経済新聞やロイターなどが報じた。

2020年に黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官による暴行死した事件を受け、グーグルは2021年から年次報告書に「DEIを全ての活動に統合する」との文言を記載していた。しかし2025年2月5日提出の最新年次報告書からこの記述が削除され、採用目標からの廃止が明らかになった。

背景にはトランプ政権の政策転換がある。同政権は1月に「連邦契約企業におけるDEIプログラム縮小を求める」大統領令に署名し、違反企業には罰金や法的措置を科す方針を示していた。

業界全体の潮流として、メタ(旧フェイスブック)が1月にDEI専門チームを解散、アマゾンも2024年末に多様性推進プログラムの縮小を決定している。ウォルマートやターゲットなど非IT企業でも同様の動きが広がっている。同社の方針転換は業界全体の潮流と連動している。

企業のDEI後退加速

2024年夏以降、米国企業のDEI撤退が顕著化している。フォード・モーターズやメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、ターゲット(米小売大手)、マクドナルドなどがDEIポリシーを撤回または終了を決定。これら企業は「人種・性別に基づく採用目標の撤廃」「DEI関連イベントへの不参加」を打ち出している。特に自動車業界では、トヨタ自動車が2024年10月に、LGBTイベントへのスポンサー活動を終了し、代わりに「STEM教育や職業準備」に重点を置いた慈善活動に取り組むと表明した。STEM教育(ステム教育)とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取った教育用語で、これらの分野を統合的に学ぶ教育手法だ。 

政治的要因との関連

教育分野では2025年1月24日、米教育省がDEI関連予算4億8900万ドル(約745億円)の削減を決定。多様性、公平性、包摂性(DEI)の取り組みを省庁から削除する措置を講じていると発表した。

「これらの措置は、連邦政府全体で違法な差別と無駄な支出をなくすというトランプ大統領の継続的な取り組みに沿ったものだ。これは、学校における分裂的なイデオロギーよりも有意義な学習を優先するよう省の方向性を変える第一歩だ」と同省は声明で述べた。

この決定は、ドナルド・トランプ大統領が1月20日に発した「過激で無駄な政府のDEIプログラムと優遇措置の終焉」という大統領令に従ったものである。

スポーツ界の対応

NFL(全米プロフットボールリーグ)は2025年2月5日、DEI政策維持を正式発表。ロジャー・グッデルコミッショナーは「多様性がリーグの強み」と述べ、他の業界とは異なる姿勢を示した。これに対し、保守派団体からは「人種より能力を優先すべき」との批判が上がっている。

大紀元日本の記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。
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