経団連会長 選択的夫婦別姓制度の議論促進を改めて訴え

2025/04/09 更新: 2025/04/09

経団連は4月7日の定例会見において、選択的夫婦別姓制度の必要性について改めて言及した。同会長は、ビジネスにおける旧姓使用のトラブルが減少している点を評価しつつも、依然として解決すべき課題が多く残っていると指摘した。

旧姓使用の現状と課題

会長は、政府調査で銀行の約7割が旧姓名義での口座開設を可能としている現状を認めつつも、残る約3割の金融機関では依然として旧姓での口座開設や証券取引が不可能である点を問題視した。また、旧姓使用が可能な場合でも、本人確認書類の提示など手続き上の負担が依然として存在しており、これらの課題が完全に解消されていないことを強調した。

選択的夫婦別姓制度の意義

選択的夫婦別姓制度については、「あくまで選択制」であり、別姓を望む人々にとってはアイデンティティに関わる重要な問題であると述べた。単に利便性や不便さの解消だけで議論されるべきではなく、多様な価値観を尊重する観点から議論されるべきだと主張した。

経団連の提言と今後の対応

経団連は2024年6月に発表した提言で指摘したトラブル事例について、必要に応じてアップデートする用意があると述べた。ただし、議論が進む中で状況が変化することは当然であり、政治の場で速やかに議論を深めることを求めた。「この問題は万機公論に決すべし」と述べ、まずは国会や自民党内で本格的な議論を始めることが重要だと強調した。

DEIとの関連性と懸念

経団連はダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)の推進「DEI」を掲げており、この流れの中で選択的夫婦別姓制度も推奨している。しかし一方で、米国ではトランプ新政権下でDEI推進への逆風が強まり、同運動が左派的な性格を持つとの指摘もある。さらに、日本国内では夫婦別姓が伝統破壊につながるとの懸念も根強く、一部では中国共産党による社会分断工作との類似性を指摘する声もある。

選択的夫婦別姓制度は、多様な価値観を尊重し個人のアイデンティティを守るための重要な取り組みである。一方で、その背景には国内外の政治的・文化的対立や懸念も存在する。経団連としては、この問題について冷静かつ建設的な議論を進めるよう求めており、多様性を尊重する社会の実現に向けた取り組みを今後も推進していく姿勢を示している。

大紀元日本の記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。
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