「あんまりじゃないか! 年に一度の新年ぐらい祝わせろ!」
中国の旧正月期間中に行われた市民のお祝いイベントが現地公安当局によって「安定維持」される事態が各地で起きた。市民の不満と怒りが渦巻いている。
10日、広東省と江西省各地で市民の新年祝いイベントが現地公安に邪魔され、街中で市民が公安と対峙する事態となった。
「龍踊り」
この日、江西省南昌市では村民による「龍踊り」が企画された。しかし、現地当局は「イベント中止」を命じ、大勢の公安を派遣して町の通りを封鎖、その行く手を阻んだ。
この事態に不服の村民たちと元凶の公安は、街中で長時間対峙する事態になった。
「祖先祭祀」
同じ日、江西省南昌市の「鄧氏祖廟」では、祖先祭祀が行われた。しかし、こちらにも「安定維持」の名目のもと、暴動鎮圧用の盾を手にした大勢の公安がやってきた。
「游神」
同じ日、広東省湛江市(たんこうし)で行われた当局の許可を得ている新年祝いの恒例イベントの「游神(ゆうしん)」でも同様の邪魔が入った。
現場を映した動画のなかには、一部のイベント参加者を追い払ったり、現場で指揮を行う公安の姿があった。
「龍舞」
同じ日、広東省潮州市の新年祝いの出し物「龍舞(りゅうまい)」も公安に邪魔された。行く手を阻まれた「龍舞」チームは致し方なくその場で太鼓を叩くなどして不安を表し、公安と対峙した。
当局は何を恐れている?
年に一回の旧正月を祝おうとする民衆の集まりに、なぜ現地当局はこうまでして神経を尖らすのか?
共産党についての九つの論評【第六評】中国共産党による民族文化の破壊によると中国共産党は元来、こうした民衆の行事に残る中国の伝統文化を壊滅させようとしてきた。なぜなら古代中国では、「民を貴と為し、社稷は之に次ぎ、君を軽と為す」と、つまり民は国家(社稷)よりも大切であり、また国家は君主よりも尊い ものである説いた儒教の教えが受け入れられており、中共独裁政権にとって許されないことだったからだという。
中国共産党は自党こそ中国で最高権威的存在だとし、自分の上に存在する伝統文化の中にある「天、道、神」などのものに束縛されたくなかった。中国共産党にとって伝統文化は全部極悪なものであり、なぜなら伝統文化が存在する限り、人々は中国共産党の「偉大さ、光栄さ、そして正しさ」を賞賛しないからだ。
中国市民は当局による全方位の監視のなかで生きている。しかし、失踪者はほとんど見つからないのに、政府に不都合な言動をすれば、その居場所をただちに突き止められ、口を封じられるのだ。
とくに近年では社会報復を目的とした無差別殺傷事件が相次いでおり、当局は神経を極限までピリピリさせている。
こうした高圧的な環境下で、長きにわたって受けてきた社会の不公平などにより、行き場のない、怒りを心に蓄積してきた一部市民が、やがては些細なことをきっかけに爆発するに違いない。

このような中国独特の事情があるなかで、当局が恐れているのは、まさにこうした市民の「爆発」なのだ。
巨大な社会的圧力と心理的負担に直面している中国の人たち。精神病院患者風の衣服を着て狂ったふりをしてストレス解消する「瘋遊ブーム」が巻き起こったように、中国人は感情を発散して、自己表現をする方法を切実に必要としているのだ。
新年祝いのお祭りはバカ騒ぎもできて、一時的に現実逃避できる数少ないチャンスである。本来そこには政治的なものはない。
しかしこうした政府の過剰反応が、人々の反逆心を刺激し、本来平和的なイベントを潜在的な抗議と対立の場に変えてしまったに違いない。

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