ドナルド・トランプ米大統領は2月15日、ヨーロッパや他の国々で広く使用されている付加価値税(VAT)制度を、対米関税と同等のものとして扱うと述べた。この措置は、トランプ大統領が不公平な貿易慣行と呼ぶものに対抗するための相互関税政策の一環である。
「米国のこの政策の目的上、関税よりもはるかに厳しいVAT制度を採用している国は、関税と同等とみなす」とトランプ大統領は2月15日のトゥルース・ソーシャル(Truth Social)への投稿で述べた。
この動きは、2月13日に発表された相互関税政策の一環であり、他国が米国の輸出品に課す関税や貿易障壁に対応することを目指している。
トランプ氏によれば、諸外国は高関税や制限的な貿易政策を通じて米国を長年利用し、米国の企業や労働者に損害を与えてきたという。
「米国は長年、敵味方を問わず他国から不当な扱いを受けてきた」とトランプ大統領は2月13日、大統領執務室で述べた。
また「この制度は、これまで複雑で不公平だった貿易制度に、直ちに公平性と繁栄を取り戻すだろう」と発言した。
ホワイトハウスのファクトシートは、米国の輸出業者が132カ国、60万品目の製品ラインで3分の2以上のケースでより高い関税に直面していることを強調している。VATについては明示的に言及していないが、ファクトシートは米国の企業、労働者、消費者のコストを膨らませる「不公平、差別的、または域外課税」に言及している。
トランプ大統領が2月13日に署名した覚書では、相互関税は従来の関税だけでなく、煩わしい規制、デジタルサービス税、VAT制度などの非関税障壁にも適用されることが明記されている。
ホワイトハウスのファクトシートは、特にカナダとフランスを名指ししている。両国はデジタルサービス税を課しており、米国企業に年間20億ドル以上の負担をかけている。ホワイトハウス当局者は記者との電話会議で、国内商品と米国から輸入された商品の両方に適用されるEUのVATも引用し、その平均がブロック全体で21.8パーセントであることを指摘した。
販売時点でのみ課税される売上税とは異なり、VATは生産と流通のあらゆる段階で課せられるため、VAT導入国に輸入される米国製品のコストが上昇する。ホワイトハウスは、VATにより米国輸出品に対するEUの関税率が実質的に3倍になり、EU輸出業者を後押しする補助金と相まって「二重の打撃」になると述べている。
トランプ氏はTruth Socialの投稿で、相互関税のアプローチは外国政府に責任を負わせるシンプルで公正な政策だと擁護した。
「これはすべての国にとって公平であり、他の国は文句を言うことはできない。米国によって課せられる関税が高すぎると感じた国は、自国が米国に対して課している関税を削減または撤廃するだけでよい」、「米国で製品を製造または組み立てる場合、関税はかからない」とトランプ氏は述べた。
トランプ氏はさらに、米国以外の輸出業者に競争上の優位性を与える外国の補助金を考慮に入れると明言した。また、正式な関税が課されていない場合でも米国企業のコストを増大させる隠れた貿易障壁を指す「非金銭的関税」という概念も導入した。
トランプ氏は、自国の貿易政策をさらに明確にした。外国の補助金で有利になっている他国の輸出業者に対抗するため、これらの補助金も考慮に入れるという。また、正式な関税ではないが実質的に米国企業の負担を増やす隠れた貿易障壁を「非金銭的関税」と呼び、これにも対処する考えを示した。
経済協力開発機構(OECD)によると、少なくとも175カ国がVAT制度を採用しており、世界中で深く根付いた税制となっている。米国はOECD加盟国の中で唯一VATを持たず、代わりに州ごとに0%から11.5%の売上税を課している。
オランダ発祥の大手総合金融機関・ING(Internationale Nederlanden Groep)のエコノミスト、インガ・フェヒナー(Inga Fechner)氏は、一部の国はトランプ大統領の相互関税を回避するために関税を米国レベルまで引き下げるかもしれないが、VAT制度を廃止するまでには至らないだろうと指摘した。
さらにフェヒナー氏は、トランプ氏の政策が関税やVATだけでなく、より広範な貿易障壁を対象としていることから、各国が完全に対応するのは不可能だろうと分析している。
トランプ大統領が相互関税政策を進めた場合、いくつかの国は報復関税で応じると誓っている。
トランプ大統領はすでに中国製品に10%の関税を課しており、中国も報復措置を取った。また、カナダとメキシコに25%の関税を課したが、国境警備と犯罪削減に関する各国との交渉の結果、施行は30日間延期された。
日本の消費税もVATの一種
日本の消費税もVATの一種であり、輸出時には還付され、輸入時には課税される仕組みだ。トランプ氏の方針が日本の消費税にも適用されるなら、日本からの輸出品に対して米国が追加関税を課す可能性がある。
トランプ氏の相互関税政策が日本の消費税にも適用されるかどうかは明言されていないが、VAT全体を「関税と同等」とみなす方針であれば、日本も影響を受ける可能性が高い。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。