東京商工リサーチの調査によると、物価高騰が続く中、企業の約9割(86.1%)が総コストの上昇を報告している。エネルギー価格や物価の上昇が止まらず、為替の乱高下も相まって、企業経営に大きな影響を与えている。
コスト上昇と価格転嫁の実態
コスト上昇分を販売価格に転嫁できた企業は78.8%に達したが、その内訳を見ると課題が浮かび上がる。
– 27.8%の企業がコスト上昇分の「1割以上2割未満」の転嫁にとどまっている
– 21.1%の企業が価格転嫁できていない
これらの数字は、コスト上昇への対応がまだ不十分であることを示している。
産業別の影響
コスト上昇の影響は産業によって異なる。
– 運輸業 93.3%が上昇を報告(最多)
– 金融・保険業 68.7%が上昇を報告(最少)
– 情報通信業 44.1%が「1割以上2割未満」の上昇を報告(全産業平均35.4%を上回る)
賃上げとの相関関係
価格転嫁と賃上げには明確な相関関係が見られる。
– 賃上げを実施する企業のうち、価格転嫁できていない企業は17.3%にとどまった。
– 賃上げを実施しない企業のうち、36.4%が価格転嫁できていないと回答。
この結果は、価格転嫁が賃上げ原資の確保に直結することを示唆している。
価格転嫁の課題
価格転嫁が困難な背景には、取引構造や商慣習の問題がある。公正取引委員会の下請法勧告件数や相談件数の増加は、この状況を裏付けている。しかし、官主導の価格転嫁には危うさもあり、企業自身の努力も重要だ。
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