米中対立の波及か? 李嘉誠がパナマ運河港湾を売却 CKハチソン株価急騰

2025/03/07 更新: 2025/03/07

香港の大富豪、李嘉誠(リカーシン)氏が創業した長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)は、傘下のグローバルな港湾事業の中核資産であるパナマ運河関連の港湾などを売却し、190億ドル(約2兆8500億円)を超える現金を手に入れた。この取引は、市場に衝撃を与え、CKハチソンの株価を急騰させた。

3月4日夜、香港証券取引所で発表された声明によると、CKハチソンは米投資会社ブラックロックが主導するコンソーシアムと基本合意に達し、パナマ港湾会社の株式90%を含む資産を売却すると言う。

この取引により、米国側が、パナマ運河の主要港湾の支配権を握ることになる。ホワイトハウスはかねてから、これらの施設を「中国(共産党)の影響」から切り離すよう主張してきた。取引額はアナリストが予想した130億ドルを大きく上回り、市場の注目を集めた。

背景には、米トランプ大統領が、1月20日の就任演説で「パナマ運河を取り戻す」と発言したことがある。複数の報道によると、この発言を受けて香港で売却計画が動き出し、李嘉誠氏自らが交渉に参加。CKハチソンは数週間で取引をまとめ、政治的な混乱から脱却しつつ巨額の利益を確保した。

「オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー」は6日、トランプ氏の1月20日の発言後、CKハチソンが売却を検討し始めたと報じた。政治的な理由だけで、パナマ運河の港湾を手放すのは賢明でないが、株価低迷からの回復を狙う好機と判断したという。交渉には、李氏の長男でCKハチソンの会長である李沢鉅(ビクター・リー)氏やブラックロックのラリー・フィンクCEOらが加わり、主にオンライン会議や電話で進められた。

CKハチソンの共同執行役員フランク・シクスト氏は

「この取引は純粋に商業的判断に基づくもので、最近の政治的動きとは無関係」

と強調した。しかし、地政学的な圧力を受けた決断との見方が強い。

香港の金融関係者は、CKハチソンがパナマ運河の港湾運営を続けていれば、米国の圧力や訴訟リスクが高まり、他の地域での事業にも、影響を及ぼす可能性があったと指摘している。

匿名の香港の評論家は、李嘉誠氏が米国の圧力に屈したとの見方がある一方で、

「国際的な視野を持つ実業家として、政治的な駆け引きの中で、利益を最大化する計算があった」

と分析し、

「一歩引くことで将来の大きな利益につなげる戦略かもしれない」

と述べた。

香港の投資家、邵志堯(しょう しぎょう氏は5日、シンガポールの「聯合早報」のに対し、

「李嘉誠氏の今回のパナマ港湾事業売却は、100%政治的な判断だ」

と語った。

「トランプ氏がパナマ運河の奪還を主張した後、パナマ政府は中国(中共)が推進する『一帯一路』構想から距離を置き始めた。CKハチソンがこのタイミングで関連事業を売却したのは、中米間の対立に巻き込まれるのを避けるためだ」

との見方を示した。

邵氏はさらに、近年の世界経済の低迷で、現金保有が重要視されている中、今回の取引額が魅力的だったこともあり、CKハチソンにとって有利な決断だったと指摘。実際、発表後の5日に同社株価は大きく上昇した。

一方、パナマのムリーノ大統領は今年2月、ルビオ米国務長官と会談後、中国企業が関与するパナマ国内の事業を見直す方針を示した。対象には、2021年にCKハチソンと25年間の契約を更新した、パナマ運河の両端にある港湾の運営権も含まれる。ブルームバーグによると、ムリーノ氏は、CKハチソンとの契約解除も検討していたと言う。

トランプ氏はこれまで繰り返し、パナマ運河の管理権を取り戻す考えを表明した。1月20日の就任演説では、

「パナマ運河の建設には、米国が莫大な資金を投じ、3万8000人もの命が犠牲になった。本来、手放すべきではなかったのに、譲り渡してしまった。その結果、私たちはとても不当な扱いを受けている。パナマは約束を破った」

と指摘した。

また、中国共産党の影響力についても懸念を示し、

「中国(中共)が現在、パナマ運河を実質的に管理している。我々はこれを取り戻さなければならない」

とも述べ、パナマ政府が、運河の不公平な通行料制度を見直さなければ、米国は管理権の返還を求めると警告した。さらに、「必要であれば軍事力の行使も排除しない」と発言し、武力介入の可能性にも言及している。 

「パナマ運河は米国が建設し、パナマに譲ったものだ」

と強調し、現在の運営方針が変わらない場合、米国は運河の管理を取り戻すべきだと主張した。

さらに、

「必要であれば軍事力の行使も排除しない」

と発言し、武力介入の可能性にも言及した。

李淨
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