【閲覧注意】本記事には、残虐な映像や画像があります。ご注意ください。
3月11日、中国河北省にある大学(河北工業大学)の校門前で、博士課程の学生が、指導教授を刃物で襲撃する事件が発生した。
犯行の背景には、教授による研究成果の搾取や過度な要求への不満があったとみられる。
事件発生時の映像は、SNSで拡散され、同国のポータルサイト大手、網易(ネットイース)は、事件の関連報道を2本掲載していたが、いまは封殺に遭い、見れなくなっている。
事件が起きた「河北工業大学」は、教育部と天津市が共同運営する国家「211プロジェクト」指定の重点大学である。

白昼堂々
犯行は白昼堂々、多くの人が行き交う大学門前で起きた。
ネット上で拡散されている襲撃当時の映像のなかには、加害者によって地面に押さえつけられ、刃物で何度も刺される被害者の姿があった。周囲の人たちは、なんとか2人を離れさせようとしていたが、うまくいかなかった。
目撃者の1人によれば、容疑者は犯行時、
「私のデータを返せ!」
と叫んでいたという。
加害学生と同じ実験室に所属する学生と思われるユーザーによれば、
「襲撃された張教授は長年、学生を学術の奴隷として扱ってきた」
という。
同ユーザーがいうには、
「同教授は博士課程の学生に対し、論文の第二著者にするように、保証書にサインを強要していた。さらに、加害者の学生は、昨年末、SNSのサブアカウントで『(研究)データをすべて指導教員に奪われて発表されてしまった。卒業はさらに3年延びることになった。奴(指導教員)の子供の送り迎えもさせられている」
と訴えていたと言う。
また、事件発生の数時間前、加害学生は自身のSNS(ウェイボー)に「労働法」を転載し、「以血還血(目には目をにちなんで、血には血を)」という復讐をほのめかす書き込みをしていた。
(襲撃当時の様子)
事件をめぐって、ネット上では
「中国の指導教員の権力が強すぎる」
「学生は学術的、ひいては性的に搾取され続けているのにちっとも改善しない」
といった嘆きが広がっている。
捨て身の告発に追い込まれる学生たち
中国では、大学教授が学生に対して、絶対的な権力を持っている。指導教授の推薦がなければ、学生は卒業も進学もできず、研究の道を閉ざされてしまうのだ。だから、被害を受けても告発するのは容易ではない。
中国家族計画連盟が2016年に公表したデータによると、
「大学生の3分の1が性的暴力の被害を受けたことがある」
と回答している。
被害者による実名と顔だしたSNS告発に世論が味方し、大学側が対応を迫られて、加害者に処分が下る事例が多く報道されているが、このように捨て身になれる学生は一部に過ぎない。
家庭の経済的事情や将来のキャリアを考えて、沈黙を強いられ泣き寝入りするしかない学生も多数存在するだろう。
そもそもSNSで実名告発する学生が増えているのは、通常の手段では正義が実現されないことを示している。
近年、複数の大学で、教授によるセクハラが明るみに出たが、告発がなければ大学側は問題を隠蔽し、教授がその地位を維持するケースがほとんどだ。
今回の河北工業大学の事件は、中国の大学に根深く存在する「教授による搾取と権力乱用」という構造的な問題を浮き彫りにしている。
こうした歪んだ権力構造を根本から見直し、学生が正当な権利を得られる環境を整えない限り、今回のような悲劇は今後も繰り返されるだろう。

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