中国では、司法の独立が存在せず、権力者による違法行為が公然と行われていた。
中国広東省で2018年、少年・王嘉禧さんが派出所長を親族にもつ加害者らによって暴行され、重傷の末に死亡した。
事件翌日、警察は、暴行の様子を収めていた飲食店の監視カメラ映像を押収したが、返却されたハードディスクからは肝心の映像が消えていた。
警察側は当初、「自首扱い」でわずか15日間の拘留処分で幕引きがされかけた。後に市民の怒りと家族の粘り強い訴えによって、再捜査が始まったが、それでも量刑(「騒乱挑発罪」で1年半の実刑)が異様なまでに軽かった。
権力を持つ側が証拠を消し、犯罪を揉み消すと言う。いっぽうで正義を求める遺族は、6年にわたり訴え続け、ようやく再審にこぎつけたが、正義の実現は、果てしなく遠い。
今月に行われた「再審」では判決はすぐに出されず、法曹界からも「1年半の実刑はあまりに軽すぎる」との批判が噴出した。
家族の執念と世論のプレッシャーがなければ、事件は闇に葬られていただろう。しかし、再審にこぎついたからといって、司法は正義を果たしてくれるのだろうか?
本来、中国は古代から「徳」と「法」を重んじ、世界有数の法文化を築いてきた国だ。しかし中国共産党の支配以降、法は完全に権力の道具へと堕落した。腐敗と癒着が国中に蔓延し、正義は金と権力の前にひれ伏す存在となった。
今の中国に、真の司法など存在しない。あるのは「力による支配」だけだ。

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