関税引き上げで米国企業の90%が国内回帰を計画=グローバル信用調査会社

2025/05/23 更新: 2025/05/23

アリアンツ・トレード・グローバル・サーベイの最新調査によると、アメリカ企業の10社中9社が、トランプ大統領の新たな関税政策を受けて、生産や調達の一部または全部を国内回帰(リショアリング)させることを検討していると回答した。

この調査は5月20日に公表され、トランプ政権の関税政策に適応する中で、アメリカ企業によるリショアリングの動きが加速していることを示唆している。トランプ氏は、国内製造業の強化と、長年にわたりアメリカを不利にしてきたとする他国の不公正な慣行の是正を掲げ、世界的な貿易の再構築を進めている。

アリアンツの調査によれば、アメリカ企業のおよそ90%が、4月2日の世界的な関税発表を受けて、リショアリングや国内調達への切り替えを計画している。アメリカ企業は、イタリアやスペインの企業と並び、世界で最も国内調達を志向する傾向が強いことが明らかになった。

「とはいえ、言うは易く行うは難しだ」とアリアンツの報告書は指摘している。「リショアリングの障壁として最も多く挙げられたのは、サプライヤー関連の問題や、コスト高の解消が最も多く、人材に関する課題も上位に挙げられている」

また、企業の4分の3以上が、サプライチェーンの構造(複雑さ、集中度、競争など)を海外生産の大きなリスク要因と見なしており、多くの企業が、トランプ政権の貿易政策の下で、よりシンプルな国内サプライチェーンに明確なメリットを見出していることがうかがえる。

一方で、アメリカ企業の過半数が、関税の影響を相殺するために価格を引き上げる予定だと回答している。4月の関税引き上げ後、アメリカ企業の54%が価格を上げると答えており、これは以前の46%から増加している。

アリアンツ・トレードの最高経営責任者(CEO)、アイリン・ソマーサン・コキ氏は「4月2日の関税発表前の楽観的な雰囲気とは対照的に、今年のグローバル・サーベイは、市場全体で不確実性と分断が構造的なものになりつつあることを裏付けている。特にサプライチェーンや輸出市場が高度に集中している企業は、政権の関税政策によるリスクが最も高い」と述べている。

トランプ大統領は1月の就任以来、米国の労働者を守り、国内製造業を促進するために、世界貿易の再編に取り組んできた。ほぼすべての輸入品に10%の関税を課し、一部の国(中国など)にはより高い税率を適用している。中国に対しては、一時的な90日間の猶予措置後も30%の関税が維持されている。

政権側は、市場が適応すれば、最終的に外国の輸出業者が関税負担の大半を引き受けるようになると主張しているが、アリアンツの調査では、現時点で自社でコストを吸収すると答えた米国企業は15%にとどまり、世界平均の22%を下回っている。

トランプ氏の関税を「必要な是正措置」と評価する声がある一方で、批判的な立場からは、経済の混乱や消費者価格の上昇を懸念する意見もある。ウォルマートのように、関税コストの一部を消費者に転嫁せざるを得ないとする企業もあれば、ホームデポのように価格転嫁はしないとする企業もある。アリアンツの調査では、値上げ以外にもさまざまな関税対策が取られていることが示されている。

企業は、高関税の港を避けて出荷ルートを変更したり、関税の低い国から調達したり、関税引き上げ前に輸入を前倒ししたり、契約を再交渉して通関や為替リスクをサプライヤーや顧客に転嫁するなど、多様な対応策を取っている。

コキCEOは「企業は立ち止まっていません。2020年以降、次々とショックを乗り越えてきた経験を生かし、再び適応し、パートナーを多様化し、物流を再構築し、バリューチェーン全体でリスク分散を図っています。今の貿易環境では、適応力が成功の鍵となります」と述べている。

一方、関税収入は急増している。米財務省によると、4月の関税収入は過去最高の163億ドルに達し、1年前の2倍以上となった。この増加により、4月の連邦予算黒字は2580億ドルと、前年同月比で23%増加した。

ただし、経済学者は、こうした財政上の利益も、貿易量の減少によって相殺される可能性があると警告している。タックス・ファウンデーションは、10%の一律関税で10年間に2.2兆ドルの歳入増が見込まれるが、輸入減少や経済全体への影響を考慮すると、実際の増収は1.7兆ドルにとどまると試算している。

「関税による輸入品の相対価格上昇は、消費者が関税対象外の代替品に切り替えることで輸入量が減少する」と同団体は4月の報告で指摘している。

エポックタイムズ読者への最近の世論調査では、トランプ氏の貿易政策を支持する声が多く、関税をアメリカ産業保護と長期的な経済的自立強化のために「公正で必要な措置」とみなす意見が多数を占めた。

The Epoch Times上級記者。ジャーナリズム、マーケティング、コミュニケーション等の分野に精通している。