中谷防衛大臣は6月26日午後、北海道道東地域の自衛隊各部隊を視察した後、陸上自衛隊別海駐屯地、本部庁舎2階会議室で臨時記者会見を開いた。今回の視察は、陸上自衛隊美幌駐屯地、標津分屯地、別海駐屯地、航空自衛隊網走分屯基地、根室分屯基地などを対象とし、今後は釧路駐屯地も訪問する予定である。視察の目的は、近年南西地域への関心が高まる中で、北海道周辺でもロシアによる活発な軍事活動が続いている現状を踏まえ、北の守りの最前線である各部隊の状況を自らの目で確認することにあった。
中谷大臣は会見で、各部隊の訓練展示を視察し、隊員一人ひとりが高い緊張感と使命感を持って任務に取り組んでいる姿に強い安心感を覚えたと述べた。また、北海道の良好な訓練環境の中で部隊が精強性を維持・向上させていること、地域社会の理解と支援を得て活動していることも確認した。特に、隊員の処遇や生活環境の現状と課題について現場の声を直接聞いたことを重視し、今後の政策に反映させる考えを示した。
隊舎や庁舎などの施設については、Wi-Fiの整備や居室のプライバシー強化など改善が進んでいる一方で、戦前から使われている老朽化した施設や冷房が整っていない部屋が多く残っている現状も明らかになった。中谷大臣は、これらの老朽施設の更新や設備整備を急ぐ必要があるとし、給与や手当の見直し、特に若年退職金の充実など、地方勤務の隊員の処遇改善に向けて令和8年度概算要求に反映させる方針を強調した。
また、ロシアによる領空侵犯や極東地域での軍事活動、中国との軍事連携の強化などを受け、北海道に配置される自衛隊部隊の重要性が増していると指摘した。北海道は訓練環境に恵まれており、国内初となる88式地対艦ミサイルの実射訓練や日米共同訓練などが行われている。今後も高い練度を維持した部隊の配置や、最新装備の導入、警戒管制部隊の強化などを進めていく考えを示した。
中東情勢については、イスラエルとイラン間の停戦合意を歓迎し、情勢の推移を注視していると述べた。自衛隊は邦人保護のため、アフリカのジブチにC-2輸送機2機を派遣し、待機態勢を継続している。今後も関係省庁と連携し、情勢に応じて適切に対応する方針である。
さらに、防衛費のGDP比5%引き上げについては、NATO諸国の動向を注視しつつも、日本としては金額よりも防衛力の中身が重要であり、国家安全保障戦略に基づいた防衛力強化を着実に進めていく姿勢を示した。
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