35%のトランプ関税を警戒 日本食品メーカー 現地生産へシフト

2025/07/03 更新: 2025/07/03

トランプ米大統領が日本製品に対して30〜35%の関税を課す可能性を示唆する中、日本の食品メーカー各社がアメリカでの現地生産を本格的に検討している。日米間の貿易交渉が難航する中、価格上昇や供給網の混乱といったリスクを回避する狙いがある。

日経アジアによると、緑茶飲料「お〜いお茶」で知られる伊藤園は、アメリカでの生産体制構築を視野に入れている。同社は現在、東南アジアの工場からアメリカへ製品を輸出しており、原料の茶葉は日本国内で摘採されている。2001年にアメリカ市場へ進出して以降、現地販売子会社を通じて事業を展開してきたが、今後は生産拠点の設置も本格的に検討する方針だ。

東京の菓子メーカー、ギンビスは「たべっ子どうぶつ」や「しみチョココーン」など人気商品のアメリカ生産を模索している。両商品は現在、日本および中国の工場から輸出されているが、アメリカ市場の需要増加に対応するため、包装、味、サイズを現地仕様に調整する方向で検討を進めている。

こうした動きは他社にも広がっている。亀田製菓はイリノイ州の子会社THフーズを通じて、アメリカでの生産体制を強化。アメリカ産の米を使ったライススナックの製造を拡充し、製品ラインアップの多様化を図る。

清酒メーカーの八海山は、アメリカ・ニューヨークの酒造会社「ブルックリンクラ」と資本提携を結び、現地生産に対する技術支援を行っている。当初は単独でのアメリカ進出も検討していたが、現地企業との連携による展開がより効率的と判断。最近では、MLBのロサンゼルス・ドジャースと提携し、「八海山」が球団公式の日本酒ブランドとして採用されている。

山口県の日本酒製造会社「獺祭」(旧 旭酒造)もすでにアメリカでの清酒製造を行っているが、従来の輸出中心モデルに代わり、関税コストの抑制を目的に現地生産の拡大を検討している。

トランプ大統領は今年4月、日本からのほぼすべての輸入品に24%の「対等関税」を課す方針を発表。その後、発動時期は7月9日まで猶予されている。7月1日には、報道陣の質問に対して「交渉期限の延長は考えていない」と明言し、「関税率は30〜35%、あるいは我々が決める数字になるだろう」と発言した。

関税の引き上げは、アメリカ国内の物価上昇にもつながる可能性がある。このような見通しの中、冷凍食品大手・日本水産は、アメリカ事業におけるコスト対策として、より安価なエビの調達先を確保する方針を進めている。また、中国にある水産加工拠点の一部を他国に移転する可能性も視野に入れている。

夏雨