マラッカ海峡 中共の最も致命的な弱点

2025/07/11 更新: 2025/07/11

中国は、石油輸入の8割以上をマラッカ海峡に依存し、封鎖されれば経済が深刻な打撃を受ける。米中対立や台湾有事を背景に、この「マラッカ困境(困った境)」は中国の地政学的リスクとして注目されている。

 中国共産党(中共)の地政学上の最大の弱点――いわゆる「マラッカジレンマ」を検証しよう。

フランス・ソルボンヌ大学の研究員ラファエル・ドソン氏は、国際誌『Modern Diplomacy』において、中共経済の急成長の裏に、致命的な脆弱性が潜んでいると指摘した。それはエネルギー供給に関する依存である。現在、中国は1日あたり約1500万バレルの石油を輸入しており、そのうち8割以上がマラッカ海峡を経由している。

マラッカ海峡は、全長805キロに及び、最も狭い部分はわずか2.5キロで、マレー半島とインドネシアのスマトラ島の間に位置し、アンダマン海(インド洋)と南シナ海(太平洋)を連結するこの海峡が、アジア、中東、ヨーロッパを結ぶ炭化水素、コンテナ、バラ積み貨物の主要な海上輸送路である。

この航路の利用により、アジア・中東・ヨーロッパ間の輸送時間とコストを大幅に削減でき、毎年、世界全体の約4分の1の貿易貨物と、石油およびその他液体製品の約3分の1がこの海峡を通過。この実績により、マラッカ海峡は、ホルムズ海峡に次ぐ世界第2位の石油輸送要衝として位置づけられている。

平均して1時間に10隻の船舶が通過し、年間の貨物取扱量は64億トンを超え、中国の石油輸入の83%以上、貿易の3分の2以上がこの海峡を通過しており、数日でも封鎖されれば、中国経済は深刻な麻痺状態に陥るという。

中共は長年にわたり、マラッカ海峡における戦略的脆弱性を公然と論じてきた。2003年11月、当時の国家主席・胡錦濤は「マラッカ・ジレンマ」という概念を提示し、マラッカ海峡への依存が国家安全保障上の重大な課題であると明言した。胡は、中国が代替ルートを欠いている状況に警鐘を鳴らし、海峡封鎖のリスクが中国のエネルギー安全を直撃すると指摘した。

中共は陸路による石油供給網の整備を進めたものの、建設したパイプラインは1日あたり約370万バレルしか運べず、需要全体には到底追いつかない。今後も中共はこの「喉元」を握られ続けることになる。

台湾有事 マラッカ海峡で中共の喉元を締め上げる

アメリカは、この弱点を早期から戦略的に把握してきた。米軍はグアム、沖縄、フィリピンにおける軍事展開を強化し、日本、オーストラリア、インドとともに「クアッド(QUAD)」や英米豪同盟(AUKUS)といった多国間枠組みを構築した。これにより、アメリカは、マラッカ海峡を軍事的に包囲し、封鎖可能な体制を整えた。アメリカが意志を示せば、マラッカ海峡封鎖によって、中共のエネルギー供給を一気に断つことが可能となった。

この戦略的な脆弱性が、中共が台湾侵攻を容易に開始できない理由の一つを成している。

ドソン研究員は、台湾海峡での武力衝突が発生すれば、アメリカは即座に、マラッカ海峡の封鎖に踏み切り、中共に対してエネルギー崩壊か軍事衝突かの選択を突きつけるだろうと見た。歴史を振り返れば、1941年に日本も同様の状況に直面し、アメリカによる石油禁輸の圧力に対抗する形で、真珠湾攻撃へと踏み切り、最終的に敗北へと至った。

中共がこの困難を打開できるかどうかについては、短期的にはほぼ不可能である。海外のエネルギー供給に依存する限り、戦略的主導権を確保することはできない。中共が海軍力を急速に拡張している背景には、こうしたエネルギー輸送路の確保がある。しかし軍事力を高めるほど、アメリカによる包囲網も強化され、衝突の危険性が増していく。この悪循環こそが、中共にとっての「マラッカ困境(困った境)」である。

唐青
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