アステラス社員 中国で「スパイ活動」有罪確定へ 企業撤退が加速か

2025/07/19 更新: 2025/07/19

中国北京市の裁判所は2025年7月16日、「スパイ活動」を行ったとして大手製薬会社アステラス製薬の60代の日本人男性社員に懲役3年6か月の実刑判決を言い渡した。男性は上訴しない方針を固めており、判決は確定する見通しだ。日本経済新聞などが報じた。

NHKによると男性は中国現地法人の幹部であり、2023年3月に北京市内で拘束された。裁判では、情報機関の依頼を受け、中国の政治や経済に関する情報を提供し、報酬を得ていたと認定した。ただ、捜査や裁判の過程で、具体的にどのような情報が提供されたのか、それが日本のどの組織と関係していたのかといった詳細は中国側から明らかにされていない。判決は一部非公開で行われ、日本のメディアにも詳細は伝えられなかった。

中国では、2014年に反スパイ法が施行されて以降、スパイ摘発の動きが強まっている。2015年以降「スパイ行為」などを理由に少なくとも17人の日本人が拘束されてきたが、起訴したケースでは全て有罪判決が出されている。

この一連の動きに対し、日本を含む外国企業の現地駐在員やビジネス界には強い不安が広がっている。何が法に違反するスパイ行為と見なすのか基準が不明瞭であり、専門家は、「普通のビジネス会合や雑談、業務メモがスパイ行為とみなされる危険性がある」と指摘している。判決理由の説明も十分ではなく、日本政府も「非常に残念」とコメントし、拘束された邦人の早期解放と司法手続きの透明性向上を中国側に強く申し入れている。

こうした中国当局の厳格で不透明な運用は、日本をはじめとする外国企業の中国ビジネスへの信頼を揺るがし、中国進出企業の間では自衛策を強化したり、撤退や出張者の受け入れ制限といった対応が進んでいる。中国市場が国際的な人材やビジネスから敬遠される傾向が、今後ますます強まる可能性も指摘している。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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