中国 健康被害、情報統制、食品汚染懸念…止まらぬ不信と生活不安

臭う水道水は「糞水」だった?消えぬ疑念=杭州市【動画あり】

2025/07/22 更新: 2025/07/23

水は濁り、不信も濁る──中国・浙江省杭州市で発生した水道水異臭事件が、政府の説明不信と情報統制により市民の怒りを招いている。「糞水混入」疑惑が拡散し、食の安全や行政不信が全国規模で波紋を広げている。

中国屈指の観光都市・杭州市。世界遺産・西湖(せいこ)の美しさは古来より詩や絵に詠まれ、天上の楽園とも称されてきた。近年はアリババ集団の本拠地としてIT産業の先端を走り、歴史と現代が融合する水と緑と経済の都として知られる。そんな杭州で、思いもよらぬ水道異変が起きた。

7月16日以降、余杭(よこう)区で水道水が黄色く濁り、下水臭や腐敗臭を放つ事態が発生。「料理に使ったら家族が気分を悪くした」「ろ過すると糞便のような黄褐色の異物が出た」との投稿がSNSで相次ぎ、健康被害も報告された。

 

「ろ過すると糞便のような黄褐色の異物が出た」と訴える杭州市民の投稿より(スクリーンショット)

 

公安通報によれば、余杭区を中心に約300万人に影響が及んでいる。

「排水管との誤接続による糞水流入」との情報がSNSで拡散し、「人事に不満を抱いた水道管理会社の幹部が報復で排水管に接続した」との公安通報まで出回った。公安当局はデマと否定し、情報統制と摘発を強化したが、火に油を注いだのは「水道管理会社が16日午前に異常を把握しながら隠蔽した」との内部告発だった。

加えて、5月以降に水源の大腸菌群が基準の730倍に達していた事実も発覚。SNSでは「水藻:私に口がないのをいいことに好き放題言いやがって…」といった皮肉まで飛び交い、批判と不満が渦巻く。

こうした事態に不安を募らせた市民は生活防衛に走り、飲食店や露店ではミネラルウォーター使用が急増。住民は買い占めに奔走し、山の湧き水を求めて行列をなす事態に。悪臭で浄水器は使用不能になり、「水道料金5トン分減免」で済ませようとした当局への反発も強まった。

さらに懸念されるのは、臭水被害の最中も稼働を続ける食品加工工場の存在だ。地元紙も工場分布を報じ、SNSでは「杭州製造」「製造地確認」が検索トレンド入り。ブロガーは「製造地と製造時期を確認せよ」と警鐘を鳴らした。

杭州市では2020年にも西湖区で排水混入事故が起き、下痢や腸炎を引き起こした際には市民抗議が武装警察に鎮圧された。

 

ボトル水を買い占める市民と、品薄となったスーパーの棚。2025年7月、中国・浙江省杭州市。(映像よりスクリーンショット)

 

今回も、CCTV(中国中央テレビ)の投稿にコメントした市民自身が「コメントは削除され、アカウントもブロックされた」とSNSで訴えている。

当局発表を信じない一部市民は独自に水質検査を依頼したが、地元4機関と省外1機関すべてが「理由は明かせない」として拒否。

SNSでは「便水を飲んで耐えるのが余杭人の胆力」「水道局は便利ではなく“便(大便)”利をもたらした」といった皮肉が飛び交い、怒りは沈静化する気配がない。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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