アメリカのトランプ米大統領が68か国・EUに新関税を発動した。米国通商代表は「当面、税率は変更しない」と明言し、米中貿易協議や鉱物資源交渉の動向にも注目が集まっている。
トランプ大統領は7月31日、世界68か国および欧州連合(EU)からの輸入品に対して「相互主義関税」の調整を盛り込んだ大統領令に署名した。新たな関税率は8月7日に施行され、各国との貿易関係に大きな影響を与える見通しである。
米国通商代表(USTR)のジェミソン・グリア氏は8月2日、アメリカCBS放送の報道番組「フェイス・ザ・ネーション」に出演し「トランプ大統領が発表した新関税について、今後数日間で交渉により引き下げる可能性は低い」と明言した。
グリア氏は「多くの関税は協定に基づき税率が決定されている。既に公表されたものもあれば、未発表のものも存在する。一部の関税はアメリカと各国の貿易収支によって調整が左右される」と説明した。
その上で、「関税率は基本的に既に決定されており、今後しばらくの間は変更しない方針だ。もちろん、各国の貿易担当大臣から連絡が寄せられるだろうが、現在の税率が大統領の関税政策全体の方針を示している」と述べた。
米中協議も継続中
また、グリア氏は米中間の貿易交渉にも言及した。米中両国は7月29日、スウェーデン・ストックホルムで第3ラウンドとなる2日間の貿易協議を終えたが、具体的な成果は公表されていない。ただし、関係各国は「関税休戦期間」の延長について協議を継続することで一致し、最終判断はトランプ大統領が行うことになっている。
現行の関税休戦期限は8月12日に迫っており、大統領が延長を決断しなければ、アメリカは対中関税を再び引き上げる見通しとなる。
グリア氏は「現在、議論の焦点はここにある」と語り、「中国側との対話は非常に前向きに進行している」と強調した。「技術的な諸問題を処理しつつ、大統領との連携も維持している。全体として状況は良い方向に向かっている」と述べた。さらに、「私が大統領に先んじて発表する立場ではないが、誰も関税が84%まで逆戻りする事態を望んでいない」とも明かした。
ストックホルム会談で中国側から具体的な約束を引き出したかとの問いに対し、グリア氏は「イエス」と即答したものの、内容については機密保持を理由に詳細を語らなかった。交渉の中心テーマとしては、レアアース磁石や鉱物資源問題が挙げられている。
今回の動きにより、アメリカの貿易政策は各国との駆け引きを続けながらも、当面は新たな関税率を据え置く状況となった。米中両国の関税休戦延長や鉱物資源をめぐる協議の行方に、今後も国際社会の注目が集まる。
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