米海軍 スカボロー礁付近を航行 中共軍が領海侵入と非難 

2025/08/14 更新: 2025/08/14

米海軍は8月13日、係争中のスカボロー礁付近を海軍艦艇で航行した。これに先立つ11日、中国船2隻がフィリピン船を追跡中に衝突する事故が発生していた。

フィリピン沿岸警備隊によると、米海軍の駆逐艦ヒギンズと沿海域戦闘艦シンシナティがスカボロー礁から約30カイリ離れた海域で確認された。スカボロー礁は南シナ海の中央に位置する環礁で、中国共産党(中共)とフィリピンがともに領有権を主張している。ジェイ・タリエラ沿岸警備隊報道官は記者会見で、中共海軍の艦艇1隻が米艦船2隻を追尾していたと明らかにした。

同日早朝、中共軍は声明で、米駆逐艦ヒギンズが中共の許可なく同国領海に侵入したとして「追い払った」と主張。

これに対し米海軍は「国際法に基づく航行の権利と自由を行使したもので、中国(中共)の発表は事実ではない」と反論した。米第7艦隊は大紀元への書面回答で「アメリカは国際法が認める場所で自由に飛行・航行・活動する権利を守っている。中国(中共)がいかなる主張をしても、アメリカを妨げられることはない」と述べた。

スカボロー礁はフィリピンから約124マイルの距離にあり、同国の排他的経済水域(EEZ)内に位置する。豊かな天然資源を有し、地元漁民にとって重要な漁場でもある。中共は2012年以来、この礁を事実上支配し、南シナ海ほぼ全域の主権主張を強めてきた。

2016年の国際仲裁裁判所の判決は、中国の歴史的権利主張に法的根拠はないと判断したが、中共はこれを拒否し、軍や沿岸警備隊の展開を拡大。

フィリピン沿岸警備隊によると、8月13日には同礁付近で中共海警局船4隻、海軍軍艦2隻、海上民兵船6隻が確認された。

同日、フィリピン沿岸警備隊の航空機がスカボロー礁上空をパトロール中、中共軍のJ-15戦闘機が接近する事案も発生。タリエラ氏によると、中共の軍機は20分以上にわたり追尾し、一時は高度約200フィート(約61メートル)で真上を通過したという。

フィリピン沿岸警備隊は11日、中共海警局船がスカボロー礁付近でフィリピン船を高速で追跡中、中共海軍艦と衝突したと発表した。公開映像には、損傷した海警船の船首や、へこみのある海軍艦の船体が映っていた。衝突当時、海警船の甲板上には少なくとも4人が確認されていたが、その後は姿が見えず、負傷が疑われたため、フィリピン側は捜索・救助や医療支援を申し出たという。

タリエラ氏は「長年、中国側に危険な操船や衝突の恐れがある行為をやめるよう警告してきた。今回の衝突は彼らにとって学びの機会になるはずだ」と述べた。中共海警局は11日の声明で接触を認めたものの、衝突には言及しなかった。

中共の行動をめぐっては、オーストラリアと日本が懸念を表明。遠藤和也駐フィリピン大使は8月12日、Xで「中国船同士の衝突を招いた危険な行動に深刻な懸念を抱く」と投稿した。欧州連合(EU)のマッシモ・サントーロ駐フィリピン大使も「国際法と国際秩序に基づく平和的な紛争解決」を呼びかけた。

アメリカも同盟国フィリピンへの支持を表明。メアリーケイ・カールソン駐フィリピン米大使は8月12日、「中国によるフィリピン船への無謀な行為を非難し、フィリピン沿岸警備隊の職務遂行と支援の申し出を称賛する」とXに投稿した。