中国各地で市民の足となっている電動バイク(中国語:電瓶車)の取り締まりが急激に強化され、罰金や車両押収が相次いでいる。
上海では速度超過や夜間のヘルメット未着用走行にまで対象が拡大し、南京や深圳、東莞、珠海などでも、ヘルメット未着用、無登録、旧規格車の使用、飲酒運転などを理由に、数十元〜数百元(数千円)の罰金、さらには車両没収が行われている。
9月1日からは、駐車や充電の違反まで徹底的に取り締まる全国的な新基準が導入される予定で、無登録や旧規格車の使用を禁じ、過積載や危険運転を必ず罰金対象とするという。

そんな中、福建省泉州市南安市では8月11日、通勤途中の市民・肖さんが、交通警察を名乗る制服姿の複数人に電動バイクを押収される事件が起きた。肖さんによれば、交差点で突然制服姿の男らが現れ、何の説明もなくバイクの鍵を奪い、そのまま車両を押し去ったという。男らは身分証明書や押収に関する書類を一切提示せず、「どこが違法なのか」「何が問題なのか」といった説明もなかった。肖さんは翌12日、新唐人テレビ(NTD)の取材に対し、「告訴しようにも相手がどの部門かすら分からない。110番通報もしたが返答はない」と憤りを語った。

肖さんは、中国経済の不振で仕事も見つかりにくく、生活が苦しい中、地方政府は民生の改善よりも罰金での歳入確保を優先していると話す。以前は不要だった電動バイクのナンバーや免許が新車に義務化され、無登録車は路上で摘発されるようになった。さらに、交通警察が販売店の前で待ち伏せして摘発するなど、商売の妨害も当たり前になっているという。「金がないから強奪している。違反かどうかは彼らのさじ加減。庶民が本当に生活できなくなれば反抗するしかない。『江油事件』のようなことは、これからもっと増えるだろう」と警鐘を鳴らした。
(「江油事件」)
こうした強硬策の背景に、地方財政の逼迫があるとみられる。元体制内職員の証言によれば、地方政府は多額の債務を抱え、公務員給与の一部を病院や地方融資平台から借り入れる状況にある。
かつて潤沢だった手当や物品支給も打ち切られるなか、いまや庶民の足である電動バイクが格好の「収入源」と化している。


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