中国系企業によるザンビア銅鉱山で有害物質流出 隠ぺいを図るか

2025/09/02 更新: 2025/09/02

ザンビアの中国資本銅鉱山で大量の有害廃棄物が流出し、住民の生活や環境に深刻な影響を及ぼしている。この事態は、環境調査の透明性に関する問題を浮き彫りにしている。

今年の2月18日、ザンビア第2の都市キトウェ近郊にある中国資本の銅鉱山で鉱滓(こうさい)ダムが決壊し、約150万トンの有害廃棄物がカフエ川へ流出した。この影響で当日から広範囲にわたって魚類の大量死が発生し、水道供給も停止するなど、現地住民の生活に深刻な混乱が生じている。

カフエ川はザンビア人口2100万人のうち半数以上に飲料水や農業用水を供給する重要な河川であり、ハカインデ・ヒチレマ大統領は事態を「危機」と位置づけ、空軍やボートを動員して石灰による中和作業を進めた。アメリカ大使館も先月、「危険な発がん性物質を確認した」と警告し、職員に鉱山周辺からの避難を指示している。

南アフリカの環境保護会社が中国企業の対応を批判

事故を起こしたのは、中国有色金属鉱業集団のザンビア子会社であるSino-Metals Leach Zambiaである。同社は事故直後、南アフリカの環境保護会社Drizitに調査を委託した。

Drizitは約2か月間にわたり3500以上のサンプルを採取し、詳細な検査を行った。その結果、カフエ川の水質からはシアン化合物、ヒ素、鉛、カドミウムなどが基準値を大幅に超えて検出された。

Drizitは、実際の流出量がSino-Metalsの公表した値の30倍に及ぶ可能性があると指摘している。これらが健康や環境に与えるリスクは極めて重大であり、住民には臓器障害や先天異常、がんなど長期的な影響が及ぶおそれがあると警告している。

事故の深刻さ隠蔽か 調査契約は最終報告前に打ち切り

Drizitは「汚染の深刻さ」を示す初期報告を中国有色金属鉱業集団側に提出したが、最終報告書の納品直前に契約を一方的に打ち切られた。中国企業側はDrizitのデータの正確性に疑義を示し、「契約違反」と主張した。

ザンビア政府も新たな調査パートナーの選定を進めていると発表した。一方でDrizitは、約90万立方メートルの有害廃棄物が周辺地域に依然残留しており、徹底的な処理を行われなければ住民や生態系に数十年にわたり有害物質にさらされ続ける危険性があると強調している。

資源開発を巡る中国企業の責任と透明性

ザンビアは世界有数の銅生産国で、中国資本が同国の銅鉱山開発を主導している。電気自動車や電池需要の高まりによる銅価格の上昇を背景に、ザンビア政府は2031年に年間300万トンの銅生産を目標に掲げ、急成長を目指している。

しかしその一方で、環境問題や事故隠蔽体質、真相究明および情報公開の不透明さが大きな課題となっている。今回の事件は、中国系企業による大規模な資源開発が地域住民や生態系に深刻なリスクをもたらしている実態を浮き彫りにした。

国際的企業の説明責任や情報公開の透明性の欠如が改めて問われている。現時点でもDrizitの調査報告書の全容は公表されておらず、現地の環境・健康被害が長期化する可能性が高い状況である。今後もザンビア政府や中国企業の対応、さらには国際社会による監視が求められる。

李言
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