世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は9月5日、文部科学省による解散命令請求の根拠とされた元信者の陳述書4通が偽造されたものであるとして、文科省宗務課長・山田泰蔵氏を含む職員ら計6人を、有印私文書偽造・同行使罪などの容疑で東京地検に告訴・告発した。
同日開かれた記者説明会で、代理人の徳永信一弁護士や告発人らが詳細を明らかにした。国家権力による証拠捏造という疑惑は、解散命令請求の正当性を根底から揺るがす事態に発展する可能性もはらんでいる。
結論ありきの「定型パターン」
徳永弁護士によると、告訴・告発の対象となったのは、文科省が請求の根拠として裁判所に提出した132通の陳述書のうちの4通だ。これらの陳述書は、本人の意思に反して作成され、署名や捺印を不正に利用した「名義の冒用」にあたると指摘。これは刑法の有印私文書偽造・同行使罪に該当するとした。
告発人となった小笠原裕氏は、提出された陳述書の多くが「生活上で困ったことや悩みがある人を勧誘し入信させ、先祖の因縁を説かれて高額献金を行い、さらに生活が困窮した」という、特定の結論に誘導するための定型的なパターンで作成されていると述べ、小笠原氏は結論ありきで証拠が作られたことを示唆していると述べた。
徳永弁護士は、「公務員がそんなことをするはずがない」という社会の先入観が、法廷で不正を覆すことを困難にしていると語り、権力機関に対する司法の構造的な問題を指摘した。この「密閉されたおかしな手続き」が、中国のような権威主義国家と同様の人権侵害につながる危険性をはらんでいると警鐘を鳴らし、「岸田総理の後ろに習近平がいる」ということにもなりかねないと疑義を呈した。
当事者が語る偽りの内容
説明会では、陳述書が本人の意思と全く異なる内容であると訴える当事者の証言が示された。
91歳の母親の陳述書が偽造されたとして告発に踏み切った女性(Aさん)は、会場で悲痛な思いを語った。陳述書の中には「娘にそそのかされて献金をした」という証言があり、Aさんは事実に反する記述にショックを受け、母親に直接確認すると、母親は強く否定したと述べている。また、9ポイントという極めて小さい文字サイズで30ページ以上にわたって作成された専門的な内容の文章を、高齢の母親が作成・理解することは到底不可能だと訴えた。
他にも、元信者の男性は、陳述書の作成過程について「内容が違うと指摘しても、その都度修正されることはなかった」と明言した。
「非訟事件」の密室性が温床か
徳永弁護士は、このようなずさんな証拠作成が可能になった背景に、今回の手続きが「非訟事件」という特殊な形式で進められていることがあると指摘した。
非訟事件は原則非公開で、通常の裁判のような厳格な証拠調べや証人尋問が予定されていない。徳永氏は、「行政側は、証拠が表に出ないだろうと高を括って、いい加減な手続きに及んだのではないか」と推測している。
今年5月、NHK党の浜田聡参議院議員(当時)が、国会の文教科学委員会で陳述書の偽造疑惑について文部科学大臣を追及。この際も大臣は「非訟事件であり非公開であるため、お答えできない」との答弁に終始し、具体的な説明を拒否した。
一方で文化庁は、被害者救済と称して「指定宗教法人」の解散後に清算手続きを進めるための指針案をまとめている。「指定宗教法人」には、現在、旧統一教会しか指定されていない。
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