米中が7月末にスウェーデンで貿易交渉を行っていた時期、中国共産党(中共)と関係があるとされるハッカー集団が米議会「対中共特別委員会」のジョン・モーレナー委員長になりすまし、関係団体に制裁案への意見を求めるメールを送っていたと疑われている。添付ファイルを開くとスパイウェアが作動し、トランプ大統領が外部団体から受け取る貿易政策上の助言を探る狙いがあったとみられる。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、貿易団体や法律事務所、米政府機関が同様のメールを受信。「あなたの見解は極めて重要です」と記され、立法草案とされる添付ファイルを確認するよう促していた。サイバーセキュリティ企業マンディアントは、ファイルを開くと組織内部に侵入可能なスパイウェアが展開する恐れがあると指摘。
現在、FBIと米議会警察が調査にあたっており、悪意あるソフトは中国国家安全部と関係があるとされるハッカー集団「APT41」によるものと分析している。
最初の偽メールが送られた数日後の7月28、29日には、米中両政府がストックホルムで第3回貿易交渉に臨み、両国は追加関税の応酬を11月初旬まで停止することで一致した。
FBIの報道官は詳細を明らかにしなかったが、事件を把握しており、関係機関と連携して捜査を進めていると述べた。議会警察はコメントを控えている。
モーレナー議員は声明で「今回の攻撃は米国の戦略を盗み取ろうとする中国のサイバー活動の典型例だ」と指摘し、「われわれは脅されない」と強調した。一方、中共当局は米側の非難を否定し、「米国自身の攻撃的行為から目を逸らさせるためのものだ」と反発している。
この事件を受け、中共によるサイバー諜報活動への警戒が改めて強まっている。8月にはアメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、フィンランド、ポーランドの当局が共同声明を発表し、中国政府によるハッカー攻撃が米国内の200以上の組織、さらに80の国・地域に及んでいると警告した。
FBIサイバー部門のブレット・レザーマン副局長は、中国の攻撃は通常のサイバー活動の範囲を大きく超え、世界の重要インフラに対して広範かつ無差別な攻撃を仕掛けていると述べた。同氏によると、中共と関係のあるハッカー集団「ソルト・タイフーン」は過去に米通信会社9社に侵入し、高度なアクセス権を不正に取得。通話記録や一部の法執行命令を抜き取っていたという。これにより、中共のスパイは携帯電話の位置情報を利用してアメリカ人の行動を追跡し、国外での動きまで把握できる可能性がある。
レザーマン氏はさらに、中共からのサイバー脅威は今も続いており、ハッカーはソフトに再侵入用のバックドアを残し、攻撃を繰り返せる状態にあると警告した。
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