物議を醸している英ロンドンにある中共の「メガ大使館」計画が、3度目の延期となった。イギリス政府は12月2日、この計画の審査期限を来年1月20日まで延長すると発表し、国家安全保障上の懸念が一段と高まっていることを理由に挙げた。これに対し、中共側は強い不満を示している。一方、「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」のルーク・ド・プーレンデ事務局長は、「イギリス政府は、無期限の延期を繰り返すのではなく、この極めて問題の多い提案を速やかに却下すべきだ」と指摘した。
スターマー英首相の報道官は2日、審査期限の再度延期について「関係機関が『特別な安全保障上の影響』について意見を示しており、それらを十分に考慮する前に決定を下すのは適切ではない」と説明した。
これについて、ルーク・ド・プーレンデ氏は次のように述べている。
「政府はこの深刻な提案を即座に否決し、問題を終わらせるべきだ。これ以上、住民や異なる意見を持つ人々を困難な立場に置くべきではない。さもなければ、政府は司法審査に直面することになるだろう」
今回の決定は、スターマー政権にとって極めてデリケートな局面で下されたものである。イギリス政府は最近、中共による国家安全保障上の脅威を「意図的に過小評価している」との批判にさらされているためだ。
先日、イギリス検察当局は中共のスパイ容疑事件の起訴を突然取り下げた。理由として、「中共が国家安全保障上の脅威となることを示す十分な証拠を、政府が提示できなかったため」と説明している。
しかし、ジャービス安全保障担当相は先月の議会で「中共などの政権による安全保障上の脅威に対抗するため、政治介入やスパイ活動に対応する新たな計画を打ち出した」と述べた。
ジャービス安全保障担当相
「イギリスの情報機関は、中国がイギリス議会や政府の機密情報にアクセスできる人物をリクルートし、育成しようとしていると警告している」
スターマー氏も1日、「中共はイギリスにとって『国家安全保障上の脅威』である」と述べたが、同時に「両国の経済関係の深化はイギリスの国益にかなう」とも語った。
スターマー首相
「この国(中国)はイギリスに対して、実質的な国家安全保障上の脅威をもたらしている。このような状況に直面しながら、我々が十分に対応してこなかったのは驚くべきことだ」
中共は、ロンドン塔の近くに位置する「王立造幣局」の旧跡地に、ヨーロッパ最大規模となる大使館を建設する計画を進めている。敷地面積は2万平方メートルにも及ぶ。しかし、地元住民や議員、さらにイギリス在住の香港人らの強い反対を受け、この3年間、計画は着工されないまま事実上棚上げされている状況である。
イギリスの野党議員らも、政府に対してこの計画の中止を求めている。理由は、この「メガ大使館」の建設予定地が、戦略的に重要な光ファイバー通信ケーブルの敷設区域のすぐ近くに位置しているためだ。さらに、米英双方の一部政治関係者の間では「ロンドンに建設されるメガ大使館が、中共によるスパイ活動の拠点になるのではないか」という懸念が広がっている。
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