米国 台湾への武器売却で過去最高約1兆円超 中共の軍事圧力常態化に対応

2025/12/22 更新: 2025/12/22

トランプ第二次政権の発足以降、米国政府は台湾向け武器売却の第2弾を発表した。売却総額は111億540万ドル(約1兆6657億円)に上り、台湾向け武器売却として過去最高額を更新した。台湾が中国共産党(中共)による軍事的圧力の高まりに直面する中、米国は引き続き台湾の防衛力強化を後押しする姿勢を鮮明にしている。

中共軍が「訓練から実戦へ移行する」可能性への警戒感が高まる中、台湾国防部は12月15日に公表した報告書で、台湾軍が分散型指揮統制を通じ、多様化する脅威に対応可能であると指摘した。

台湾国防部は18日、総額111億540万ドル(約1兆6657億円)に上る台湾向け武器売却8件について、米国政府が議会への通告手続きを実施したと発表した。通告後、正式な発効はおおむね1か月後になる見通しだ。

台湾国防部のシンクタンク「国防安全研究院」国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長は、「米国は新たな台湾向け武器売却を発表した。加えて、米議会は2026会計年度の国防権限法を可決し、台湾に約10億ドル(約1500億円)の軍事支援を提供することや、中共高官の資産状況の公表を求めている。これらはいずれも米国の台湾に対する支持と、米台間の信頼関係を象徴するものだ。今回の武器売却は、トランプ第二次政権で初めて決定された重要案件でもある」との見方を示した。

国防部によると、今回米国が提供・販売に同意した装備のうち、「M109A7自走榴弾砲」、「高機動ロケット砲システム(ハイマース)の追加購入」、「TOW対戦車ミサイルの追加購入」、「対装甲型無人機ミサイルシステム」、および海軍向けの「対戦車ミサイル『ジャベリン』の追加購入」の計5件は、防衛の強靭化と非対称戦力の強化を目的とした特別予算に含まれている。

台湾国防部は、立法院で特別予算が承認された後、関連規定に基づき武器購入契約の署名手続きを進める方針だ。

また蘇紫雲所長は、今回の売却内容の一つとして、「M30A2多連装ロケットの弾薬の追加購入」を挙げた。「これは極めて先進的な子弾式弾薬で、空中爆発により殺傷範囲と抑止効果を一層高める。今回は計756発を購入する。米国がこの弾薬を販売しているのはNATO加盟国のみであり、極めて有効な多連装ロケット砲兵システムだ」と説明した。

今回の米国による武器売却を受け、台湾の総統府は謝意を表明した。武器売却は、米国政府が「台湾関係法」および「六つの保証」に基づき、台湾の安全保障に対するコミットメントを継続的に履行していることを改めて示すものとされる。同時に、米台間の緊密な協力関係を再確認し、台湾の防衛ニーズを米国が極めて重視している姿勢を明確にした。

米国防総省も、今回の武器売却計画の詳細を発表し、この取引が米国の国家的・経済的・安全保障上の利益に合致するものであり、台湾軍の近代化と信頼できる防衛能力の維持を支援するものだと説明した。

一方、中共は台湾への軍事的圧力を一段と強化している。台湾国防部が15日に公表した報告書によると、近年、中共による台湾周辺での軍事活動は頻度・規模ともに拡大を続けており、ほぼ毎日のように「グレーゾーン」における嫌がらせ行動が確認されている。

具体的には、中共は海警船による外離島周辺の制限・禁止水域での定期巡回をはじめ、気球や無人機を用いた情報収集、さらには民間船を利用して台湾と外部を結ぶ海底ケーブルを破壊するなど、段階的かつ多層的に圧力を強化している。

蘇氏は、「戦備警巡、すなわち台湾周辺を常態的に航行する中共軍艦艇は概ね6〜7隻とされ、合計で約500発の巡航ミサイルを搭載可能だ。発射地点から台湾の主要基地までの距離は極めて近く、ミサイルは約3分で到達する。このため、中国による奇襲的なミサイル攻撃のリスクは高い水準にある」と指摘した。

その上で、「台湾は他国と連携し、衛星などを活用して中共軍の部隊集結や動向の兆候を監視している。これは情報による抑止、すなわち防衛における第一層の手段だ」と述べた。

中共軍はまた、軍用機や艦艇による台湾接近行動を常態化させており、その回数と規模は年々増加している。これは台湾軍の戦備を消耗させる狙いがあるとみられるほか、台湾海峡周辺での偶発的衝突のリスクを高める要因ともなっている。

台湾の国家安全局長の報告によると、今年に入って中共軍機が台湾周辺空域に侵入した回数は過去最多の3570回に達し、海空合同演習も39回実施された。これに対し台湾軍は標準作戦手順を確立しており、情勢が緊迫した場合には即座に戦備レベルを引き上げ、各部隊が命令を待たずに分散型指揮系統を運用し、自主的に作戦任務を遂行できる体制を整えている。

台湾国防部は、「中共は武力による台湾併合を決して放棄していない」との認識を示しており、その軍事演習も単なる訓練段階から、常態化・複数軍種による連携、さらには実戦を想定した合同作戦準備へと移行していると警戒感を示した。

こうした状況を踏まえると、台湾海峡情勢が短期間で武力衝突に発展する可能性は低いものの、中共による軍事的圧力の増大はすでに常態化しているといえる。

専門家の間では、台湾が防衛力を一層強化するとともに、社会的な回復力を高め、変化する国際情勢の中で自国の安全と民主主義の基盤を維持・強化していく必要があるとの指摘が相次いでいる。

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