【分析】中共軍高官の更迭の背景 中国共産党の将来をめぐって習近平と張又俠が対立

2026/01/29 更新: 2026/01/29

「張又俠は実際に軍事力を握っていた。彼は中国で習近平に挑戦できる唯一の人物だ」と唐伯橋氏は大紀元に語った。

 

中国で最上級の軍高官2人が突然更迭されたことを受け、習近平が中国人民解放軍をどの程度掌握しているのかに疑問が生じるとともに、軍指導部の最上層で長年続いてきた権力闘争の存在が浮き彫りになったと、関係者の一部はみている。

中国共産党(中共)は1月24日、中央軍事委員会第1副主席の張又俠と、同委員で統合参謀部部長の劉振立を更迭したと発表した。党は詳細な説明を公表していないが、中国情勢を研究する専門家や観測筋は、今回の措置は通常の反腐敗粛清を超える意味を持つと指摘している。

米国在住の中国民主化活動家、唐柏橋氏は、習近平と張又俠の対立は3年以上前からくすぶっており、中共の政治路線、軍事戦略、中国の将来像をめぐる根本的な見解の相違に根ざしていたと述べた。

唐氏は1月27日、大紀元に対し「これは習近平がこれまで行ってきた将軍粛清とは全く性質が異なる。張又俠は実際に軍事権力を握っており、中国で習近平に挑戦できる能力を持つ唯一の人物だった」と語った。

張又俠は中国共産党でも屈指の名門軍人一家の出身である。父の張宗遜は共産政権の創設期の将軍で、後に人民解放軍総後勤部長を務めた。張宗遜と習近平の父、習仲勲は、1949年に共産党が中国で政権を掌握する以前から親交があった。

習近平が権力を掌握した際、張又俠は軍内の「太子党」と呼ばれる一群の中で、習近平の権力集中を支持する存在として頭角を現した。習近平の第3期政権に入ると、張又俠は事実上、習近平の下で人民解放軍の最上位の実務指揮官となり、他の将官を上回る地位に就いた。

唐氏は、この立場こそが、郭伯雄や徐才厚など、習近平の下で粛清された他の高官とは張又俠を根本的に異なる存在にしていたと指摘した。

唐氏は、郭伯雄や徐才厚について「彼らは執行役にすぎなかったが、張又俠は実際に軍事権力を掌握していた」と述べた。

唐氏によると、張又俠には習近平に取って代わろうとする野心はなく、両者の対立は価値観の衝突に起因していた。大きな転機となったのは、習近平が2018年に憲法改正を強行し、国家主席の任期制限を撤廃した後だった。張又俠は当初この動きを受け入れたものの、後に習近平の長期独裁は党にとって不安定かつ持続不可能だと考えるようになったという。

台湾をめぐっても、両者の溝は深まったと唐氏は述べた。張又俠は、台湾に対する軍事行動を控えるよう習近平を繰り返し説得したが、習近平は軍事的選択肢を試すことに次第に積極的になっていったという。

米ワシントンのシンクタンク、ジャムズタウン財団が1月26日に公表した分析も、こうした緊張関係の存在を裏付けている。同財団は、習近平が人民解放軍に対し、2027年までに台湾侵攻が可能な能力を備えるよう求めた一方、張又俠と劉振立はこの目標を非現実的と見ており、内部計画では2035年頃までを想定していたと指摘した。

ジャムズタウン財団によると、当初は発言や計画をめぐる意見の相違だったものが、次第に実施段階での対立に発展し、最終的には習近平の指示に対する公然たる抵抗の様相を帯びるようになった。

大紀元は2025年10月、複数の軍関係者の話として、張又俠が台湾への武力行使をめぐり習近平と激しく衝突していたと報じた。関係者によると、張又俠は即時の軍事作戦に繰り返し反対し、その理由として、米国や同盟国の介入を招く危険性を挙げていた。

別の関係者は、張又俠が経済減速や外交的孤立が進む中で、情勢の安定化と大規模衝突の回避を重視していたと述べた。一方、習近平はこの姿勢を「軍の士気を損なうもの」と受け止めたという。

張又俠の更迭後、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、匿名の関係者の話として、張又俠が汚職に加え、核兵器関連情報を米国に漏洩した疑いをかけられていると報じた。

これに対し唐氏は、そのような疑惑は非現実的で、政治的動機に基づくものだとして否定した。唐氏は、最高級の軍司令官に核スパイの嫌疑をかけることは、張又俠を「裏切り者」と位置付けることで軍内部の反発を抑える狙いがあると指摘した。

唐氏は「国家の最重要機密は通常、核関連事項である。その分野での疑惑を流布することは、張又俠を政治的に完全に葬り去る意図を示している」と述べた。

注目されるのは、張又俠の公式経歴が、依然として中共の宣伝・軍事関連サイトから削除されていない点だと唐氏は指摘する。張又俠と劉振立を批判する限定的な軍の論評を除き、各戦区や軍種から忠誠表明や支持声明、組織的な宣伝がほとんど見られない状況が続いているという。

唐氏は「過去の粛清では、全面的な宣伝が展開された。今回は宣伝が後に続いておらず、極めて異例だ」と語った。

中国国内で軍に近い関係者は1月26日、大紀元に対し、内部統制が強化される中、中堅・高級将校の一部が突然休暇を停止され、待機を命じられたと明らかにした。

唐氏は、事態はなお収束しておらず、中国共産党内部で習近平の行動に反対する動きが拡大しているとみている。唐氏によると、習近平と張又俠はかつて兄弟のような関係にあり、習近平の家族の一部も張又俠に同情していると伝えられている。

唐氏は最終的な帰結について、双方にとって損失となる可能性が高いと結論付けた。張又俠が地位を回復する見通しは低い一方で、習近平の官僚機構や軍内での権威は今後も低下し、消極的抵抗や命令不履行が拡大していくとみられるという。

中国関連の話題に焦点を当てる大紀元の寄稿者です。
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