中国 退役後の扱いに絶望か

中国 旧正月直前に元軍人が木に登り自殺図る

2026/02/17 更新: 2026/02/17

2026年2月9日、旧正月を目前に控えた北京で、元軍人の高齢男性が政府機関の前で木に登り、自ら命を絶とうとする事件が発生した。

場所は北京市豊台区にある退役軍人事務部の相談窓口前である。警察や消防が出動し、現場は一時騒然となった。

動画には、男性が木の上から自らの置かれた苦しい状況を訴える様子が映されている。警察官が塀の上によじ登って説得を続け、消防隊員が下で待機する緊迫した場面である。周囲には多くの市民が集まり、スマートフォンで撮影する姿も見られた。

映像には、元軍人が自身の不満や苦境を語る声が残されている。助けを求めても応じてもらえなかったとみられ、生活への絶望感がにじむ内容である。

中国では、退役軍人の再就職や住居、補償などをめぐる問題が長年にわたり続いてきた。入隊時には「退役後の仕事を保障する」と説明されるケースもあるが、実際には地方政府の財政難などを理由に十分な支援が行われない例が少なくないと指摘されている。

本紙はこれまで、こうした実態を継続的に取材してきた。2020年には、広東省の退役軍人袁玉文氏が本紙の取材に対し、退役後17年間にわたり各地を回って救済を求めたが、問題は解決されず、逆に強制労働や圧力を受けたと証言している。

2016年には、数万人規模の元軍人が北京中心部に集まり、待遇改善を求める大規模な抗議活動が起きた。その後、退役軍人事務部が新設されたものの、各地で不満の声が消えたわけではない。山東省や江蘇省では、元軍人が抗議の声を上げる映像が拡散し、当局による取り締まりが行われた例もある。

本来、旧正月は家族が集い、新しい一年を迎える時期である。その直前、かつて国に仕えた元軍人が政府の窓口前で木に登らざるを得なかった現実は重い。

それは一人の突発的な行動として片づけられる出来事なのだろうか。長年にわたり積み重なってきた不満と、行き場を失った声が、ついに目に見える形で現れた瞬間であったのかもしれない。

答えが示されないまま、同じ窓口に立ち続けている人々が全国にいる限り、この光景は決して過去の出来事にはならない。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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