中国共産党による統治下の中国に正義はなく、民衆の不満や怨念が渦巻いている。
それでも庶民は失われた「本当の正義」を求めて、千年以上も前の宋代に実在した清廉潔白な名裁判官(本名:包拯・ほうじょう/包公とも呼ばれる)に泣きついている。
今年3月から、包拯を祀った廟である包公祠(ほうこうし)や包拯の墓に跪いて拝み、ひたすら「自身が受けた冤罪や不公正な扱いによる被害」を泣きながら訴えるという「ブーム」が巻き起こり、いまでは一種の「社会現象」として定着している。
「包公」に扮した大学教授
今月17日午前7時30分ごろ、中国江蘇省南京市で開催されたマラソン大会(3万人参加)の会場で、ランナーたちと共に走るとても目立つ男が現れ、話題になった。
男の恰好は一目見ただけで、華人であればそれが誰かすぐにわかる。そう、それは紛れもない「包公」の恰好。「包公」は自身の無実を訴える文字入りの「白い紙」を手に掲げて走っているのだ。
その異様な存在に気づいたランナー仲間たちは、彼が掲げる紙に何が書かれているのかを確かめたくて、何度も何度も振り返った。なかには、彼を撮影する人もいた。
しかし、すぐさま5、6人の警察が駆け付け、「包公」が手に持っていた白い紙を奪い、彼を強引に連行した。
その白い紙には「マラソンは(距離が)長いがいずれは終わる、王広(その人の名前)の濡れ衣は8年経った今も晴れていない」「江蘇省高等裁判所よ マラソン式の審査を終わりにして、王広光教授の汚名を晴らすために直ちに再審をせよ」と書かれていた。
(中国語:「馬拉松雖長有終,王廣蒙冤8年無果」「江蘇高院結束馬拉松式審查,立即再審王廣教授沉冤昭雪」)
(自身の無実を訴える文字入りの白い紙を手に掲げて走る『包公』)
そうして、一度は捕まった「包公」。後に彼はネットに自身の身分を明かし、受けた濡れ衣を訴えた。
「皆さんこんにちは、私は南京理工大学の教授、王広です、このような形で皆さんとお会いするのはとても心苦しい」という挨拶から始まった王教授の訴えによれば、彼は汚職の濡れ衣を着せられて8年経つ。「無実を証明する証拠もあり、再審を申し込んでいるのに全く結果がない」という。
王教授の斬新なアイディアに、「世界へ中継されるマラソン大会中に、目立つ格好で登場して訴えを掲げる、これは良い方法だ、みんなもマネをしたらいい」といった称賛のコメントも多く寄せられている。
これ以降、中国各地で行われるマラソン大会には、「包公」の模倣者が出るのではないか。
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