中国では、一般市民に対する銀行口座からの預金引き出しや送金に対する制限が広がっており、市民の生活やビジネスに大きな不便をもたらしている。
ネット上では「銀行は金欠なのか?」「自分の預金なのに自由に使えないのか」といった市民の不満が噴出している
中国メディア「界面新聞」(3月12日付)によると、どの銀行も新規カードの発行にも「引き出し」などの制限を設けている。
銀行で新たに口座を開設する際には、身分証明書や居住証明だけでなく、仕事をしていることの証明や社会保障費の支払い記録まで求められるケースが増えている。なかには、現地警察署が発行する「証明書」を求められることもあるという。
(自身の預金口座から現金20万元を引き出そうとする市民と銀行とのやり取り。「そのお金をどう使うのか?」と銀行から聞かれている)
例えば、北京市でフードデリバリーの仕事をする李さんの場合、毎月15日には故郷の家族あてに1万元(約20万円)の仕送りを送金してきた。しかしある日突然「1日の送金上限は、5千元」というメッセージが届いた。
上海の王さんは、子供の幼稚園の学費を支払おうとして、スマホの銀行アプリから送金しようとしたら「取引できない」との表示が出た。3時間におよぶカスタマーサービスへの問い合わせの結果、「単筆の支払いが2万元(約40万円)を超える場合は収入証明が必要」と告げられてしまった。
杭州でミルクティー店を営む張さんも、仕入れ代金の振り込みで苦しんだ。3年間使っていたのに突然、1日の送金上限が1万元(約20万円)に制限されたため、「毎日の金の動きは5万元(約100万円)、こんな制限では商売にならない」と困り果てていると言う。
(銀行の送金制限に不満を述べる市民)
「詐欺防止」の名目で強まる制限
中国での銀行引き出し制限は、2020年に始まった「断卡行動」(詐欺防止対策)がきっかけだ。
当局は、詐欺防止を名目に、各大手銀行は半年間取引のない「睡眠口座」や「異地口座(居住地以外で開設した口座)」の送金を制限。さらに、非窓口での取引に厳しい制限を設けた。
2023年になると、この「断卡行動」がさらに強化され、6か月間取引のない口座は、1日の送金上限が500元(約1万円)に設定される事態となった。
しかし、多くの市民は「詐欺防止」という当局の主張に、疑問を抱いていると言う。
「詐欺犯は、数十万から百万元単位で送金するのに、制限されていないのはなぜか? 銀行とグルなのか? なぜ一般市民の送金だけが厳しく規制されるのか?」と批判が相次いでいる。
(銀行の送金制限に不満を述べ、「なぜだ? 自分の預金を自由に使えないのか!」と怒る市民たち)
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