中国 抑え込まれる不満と高まる緊張

「中国社会は限界に近づいている」専門家が警鐘 官も民も不満拡大

2026/05/05 更新: 2026/05/05

いま中国では、一般市民だけでなく、体制を支える官僚の間でも不満が広がっている。

背景にあるのは、当局による統制の強化だ。反腐敗の名のもとに幹部の摘発が急増している。摘発は汚職に限らず、忠誠心を疑われた幹部にも及んでおり、体制内部の緊張が高まっている。

さらに、退職した幹部に対しても管理が強化されている。海外渡航の制限や思想動向のチェックが行われ、自由に動けない状況が続く。体制内でも「いつ対象になるか分からない」という不安が広がっている。

一方で、社会全体への締め付けも強まっている。監視対象とされる人々の範囲は広がり、帰国した留学生や海外経験者まで注意対象とされるケースがある。

ネット規制はこれまでにない水準まで強まっている。海外サイトに接続するためのVPNは、3月以降急速に使えなくなり、「全くつながらない」という声も広がっている。通信会社と当局が連携して遮断を進めたことで、従来の回避手段はほぼ通用しなくなった。海外の情報に触れること自体が、急速に難しくなっている。

こうした状況の中、生活の厳しさも増している。経済の悪化で失業者が増え、働いても給料が支払われないケースが珍しくなくなった。各地では賃金未払いをめぐるストライキや抗議も絶えない。追い詰められた一部の市民が、無関係の人々を狙う「社会報復」とみられる事件も各地で相次いでおり、社会全体に不安が広がっている。

同時に、表に出ない形での抵抗も見られる。働かない、競争しない、いわゆる「躺平(タンピン)」と呼ばれる動きは、若者だけでなく官僚にも広がっている。行政の現場では指示待ちと責任回避が常態化し、問題解決より問題回避が優先される傾向にある。

こうした内外の圧力について、台湾のシンクタンクである国防安全研究院の研究員、龔祥生氏は「体制は不満を抑え込んでいるが、社会は限界に近づいている」と分析する。経済は減速している一方で、統制力は依然として強く、大きな変化には至っていない状態だという。

一方で、中国の著名な法学者で、北京大学元教授、体制の内側を知る論客の袁紅冰(えん・こうひょう)氏は本紙に対し、「民衆と官僚の不満が同時に噴き出している」と指摘する。習近平体制についても、「砂の上に建てられた建物のように崩れ始めている」と述べ、「大きな変化は一つのきっかけで起こり得る段階にある」との見方を示している。

また、当局の資金確保の動きにも変化がみられるという。袁氏は、資金の徴収対象が広がっている点に注目し、各地の寺院が税務当局の重点的な監視対象となっているほか、売春に関わる女性への摘発も罰金収入を目的とした側面が強まっていると指摘する。こうした動きは、財政状況の厳しさを映し出している。

社会の空気も変わりつつある。インターネット上では「スパイ探し」を呼びかける動きが広がり、外国人や留学生、外資系企業の関係者まで疑いの目を向ける投稿が増えている。相互に監視し合うような空気が広がっているとの指摘もある。

長年にわたる強い思想統制と暴力的な抑え込みのもとで、社会の底辺にたまった不満は行き場を失っている。その結果、人々同士が傷つけ合うような状況が広がり、無差別に人を襲う事件が各地で頻発している。

こうした「社会報復」とみられる事件の頻発を受け、無関係な人を巻き込むべきではないとの声が広がっている。華人圏では、「問題の根本は中国共産党体制にある」として、矛先を誤らず向き合うべきだと訴える意見も目立つ。

一方で中国国内でも、拘束や処罰のリスクを承知のうえで、命がけで抗議の声を上げる人々が断続的に現れており、人々が自由に情報を共有し、つながる手段が生まれれば、状況は一気に動く。

体制の内側でも外側でも不満が積み上がる中、中国は今、静かに圧力が高まり続けている段階にある。その行き先がどこに向かうのかは、まだ見えていない。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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