米国の封鎖続く イランの石油貯蔵容量が間もなく限界に

2026/05/09 更新: 2026/05/09

かつて1日320万バレルの原油を輸出していたイラン。米海軍の封鎖が続く中、原油を積んだタンカーは依然としてイランの港に足止めされており、石油の「貯蔵時計」(storage clock)が刻々と時を刻んでいる。

アラビア海に面したオマーン湾の封鎖は米国の圧力戦略の一つであり、その世界戦略の一環だ。この輸出出口を封鎖することで米国は、テヘランが毎月得ている130億ドルの収入を遮断するだけでなく、運搬できない石油を保管するスペースがなくなった段階でイランに工場閉鎖を迫り、石油産業を麻痺させることを狙っている。

トランプ大統領が4月13日に封鎖を実施して以降、少なくとも1日150万バレルのイラン産石油が行き場を失い、貯蔵を余儀なくされている。

原油は積み上がる一方だ。英ロンドンを拠点とするエネルギーコンサルティング会社「エナジー・アスペクツ」をはじめとする業界機関の共通見解によると、イランの最大原油貯蔵容量は1億2200万バレルで、4月下旬時点ですでに6800万バレルが埋まっており、残り2千万〜3千万バレルの余裕しかない。

トランプ大統領は4月28日、「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、こうした圧力がイラン・イスラム共和国の指導部を動揺させていると明かした。

大統領は「イランはたった今、自分たちが『崩壊状態』にあると我々に伝えてきた。指導部の混乱を整理しようとしながら、ホルムズ海峡をできるだけ早く『開放』してほしいと求めている」と記した。

大統領はまた、イランが核兵器開発の停止、テロ組織への支援停止、ホルムズ海峡の領有権主張と管理権の放棄という要求に間もなく応じると確信しているとした。

イランは「崩壊状態」ゆえに様々な譲歩を迫られる。その時期を割り出す方程式において、時間と空間は重要な変数だ。時間の答えが「貯蔵時計」であり、その核心は単純だ。時間が経てば経つほど、スペースは減る。

4月下旬、ベルギー・ブリュッセルを拠点とするコモディティデータ・分析会社「ケプラー」と、米ニューヨークを拠点とする「J.P.モルガン」のアナリストらが「貯蔵時計」の計算を行った。両社は、イランが石油を運送できなければ、15〜22日以内(すなわち5月中旬から下旬)に貯蔵の時間的・物理的余裕が尽きると予測した。

「イランは石油貯蔵量の減少が引き金となる生産停止サイクルへと追い込まれつつある」と、ケプラーのアナリスト、ホマユン・ファラクシャヒ氏は4月29日付の分析報告書に記した。

「イランは差し迫った強制減産に直面しており、貯蔵スペースは20〜24日以内に飽和状態に達し、急速な生産縮小を引き起こす可能性がある」

2026年5月2日、西アフリカのガンビア国旗を掲げたタンカー「ビリ」(Bili)がイラン南部バンダルアッバース(Bandar Abbas)近海のホルムズ海峡に停泊している。イラン革命防衛隊は5月4日、商船がホルムズ海峡を通過している事実はないと否定した(Amirhossein KhorgooeI/ISNA/AFP via Getty Images)

ブリュッセルを拠点とするエナジー・アスペクツは4月下旬、封鎖が最長7週間、すなわち6月中旬まで続いた場合に初めてイランの石油企業が操業停止に追い込まれるとの予測を示した。ウッドマッケンジー、大西洋評議会、戦略国際問題研究所、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターなど多くの機関の分析も同様に、5月中旬から6月中旬の間にイランの石油産業が停止するというタイムラインを示している。

一方、貯蔵時計がすでに止まっているとみる向きもある。ワシントンDCの戦争研究所とアメリカン・エンタープライズ研究所傘下の「クリティカル・スレッツ・プロジェクト」は、イランの貯蔵スペースが4月29日時点で限界に達したと指摘している。

同じくワシントンD.C.の民主主義防衛財団の予測では、4月25日以前にイランの油井閉鎖が始まっていたとみられる。

財団の上級研究員で元米財務省高官のミアド・マラキ氏はXへの投稿で、4月12日時点でイランの石油貯蔵余裕は約2千万バレルだったと推計し、その余裕が尽きてから13日以内に「イランは油井を閉鎖しなければならない」と予測した。

イランの石油、行き場なし

イランには4つの石油・ガス産地がある。1960年代から生産が続くフゼスタン油田の日産量は約220万バレル。イラク国境沿いの西カルン油田は日産50万バレル。ペルシャ湾岸のファールス州とブシェール州は主に海洋天然ガスを産出し、世界最大のガス田であるカタールのノースフィールドのイラン側に当たる南パルスガス田もここに属する。第4の産地であるペルシャ湾の海上油田では、産出量の約65%がカーグ地区の3油田から生産されている。

すべての道路・鉄道・パイプライン、そしてイランの油田・ガス田から採掘されるほぼすべての炭化水素は、ホルムズ海峡から北に約480キロに位置する面積約20平方キロのサンゴ礁の島、カーグ島へと集まる。同島はイランの石油貯蔵能力の25%超を担っており、テヘランの石油輸出の90%がここから超大型タンカー(最大10隻同時停泊可能)に積み込まれて出荷される。

2017年3月12日、イラン南部ハルク島の石油施設(Atta Kenare/AFP via Getty Images)

コロンビア大学グローバルエネルギー政策センター(CGEP)の研究員アントワーヌ・ハルフ氏は4月28日付の分析報告書で、封鎖実施から1週間後の4月20日の時点でハルク島の貯蔵量が74%に達していたと記した。

スコット・ベッセント米財務長官も4月21日のX投稿で、カーグ島の貯蔵施設が「数日以内に」満杯になり、「脆弱なイランの油井」が閉鎖に追い込まれると述べた。

イランには輸出能力を持つ港が他に5つあるが、そのうち4つはペルシャ湾内にある——シッリ島、ラバン島、サルーシュ港、そしてブシェール近郊のアッサルイェ港だ。海峡南側に位置するジャスク港だけが例外だが、米海軍が付近で活動しているため、オマーン湾に新設された埠頭には現在も船が寄港していない。

国内の強力なパイプライン網を持ちながら、イランは現在、カザフスタンとトルクメニスタンからのパイプライン経由でしか原油を受け入れられず、輸出もトルコ、イラク、アルメニアへの天然ガスパイプライン輸送のみに限られている。

イラン石油輸出業者連合報道官のハミド・ホセイニ氏は、イラン政権が中国の義烏・西安へと延びる新設鉄道回廊を利用した石油の鉄道輸送を検討していると広く報じられた発言の中で示唆したが、イラン政府が鉄道による石油輸出を拡大できる能力には限界がある。

2016年2月15日、中国とイランを結ぶ初の列車がコンテナを積んでイラン・テヘランの駅に到着した。イラン石油輸出業者連合のハミド・ホセイニ報道官は、イランが中国の義烏・西安などと結ぶ新設鉄道回廊を利用した石油輸送を検討していると述べた(Stringer/AFP via Getty Images)

米海軍が封鎖を解除しない限り、イランは石油・ガスを国外に運ぶことができず、イラン政府への圧力は高まり続ける。これは3月初め以降、イランがペルシャ湾岸の近隣諸国に加えてきた圧力と同質のものだ。ホルムズ海峡での威嚇により湾岸貿易を停滞させ、無人機やミサイル攻撃で港湾・インフラを破壊し「アラブ側」に停泊する船に約2万人の船員を足止めさせてきた。

ハルフ氏は「イランが最初にホルムズ海峡のタンカー交通を妨害した際、貯蔵能力が最も乏しく他の輸出ルートを持たないアラブの産油国は素早く生産を削減した。今度は米国がイランの港への海上交通を制限し、テヘランが同じ苦境に立たされている」と語る。

2016年1月19日、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターのグローバル石油市場プロジェクト主任アントワーヌ・ハルフ氏が、ワシントンDCの連邦議会上院エネルギー・天然資源委員会でエネルギー・コモディティ市場の見通しについて証言した(Chip Somodevilla/Getty Images)

巨大な生産停止圧力

石油の「貯蔵時計」が止まれば、油井は封鎖(または閉鎖)され、掘削リグは撤去され、油田パイプライン網は切断され、製油所は操業を停止し、人員と設備は遊休状態に置かれる。稼働停止前の生産水準に戻すには、数週間から数か月を要する可能性がある。

石油・ガスインフラが稼働停止した状態が長引き、保守人員が減れば減るほど、構造的な損傷を受けやすくなる。トランプ大統領が指摘したように、圧力の逃げ場がなくなることで「爆発」のリスクも高まる。

CGEPの研究員ロビン・ミルズ氏は同センターのウェブサイトに次のように記した。「長期的な油井停止は、坑井やパイプラインの腐食、砂・泥などの不純物の坑内やポンプへの堆積、または坑井の機械的変形を引き起こす可能性がある。……ただし、停止と再稼働の綿密な技術的計画を立てることで……これらの問題の大部分は解決できる」

イランの「ワックスオイル」は停産時に凝固して油井やパイプラインを詰まらせる重質原油であり、停産中のインフラ被害リスクをさらに高めている。

「たとえ封鎖が緩和されても、生産井や油田の閉鎖による施設へのダメージ、施設の『爆発』、またはイランの石油生産能力の永続的な低下を招く可能性があるとみる向きもある」とミルズ氏は記した。

2025年6月15日、イスラエルによるテヘラン南部の製油所への夜間空爆で黒煙と炎が上がった(Atta Kenare/AFP via Getty Images)

操業停止中の油井に対するもう一つの脅威として、水錐現象がある。これは油田開発において生産井の生産強度が高すぎる場合、地層底部の水が油水界面を突き破って円錐状に射孔区間へ流れ込み、油井の含水率が急激に上昇する現象だ。

「老成した油井を閉じると、底の水が流れ込んでくる。これが水錐効果と呼ばれるプロセスだ」とマラキ氏はXに記した。

「油滴は岩石の孔隙に永久に残留する。その石油は二度と回収できない」

「強制的な生産停止は、1日当たり30万〜50万バレルの生産能力を永久に破壊する可能性があり、毎年90億〜150億ドルの収入が永遠に失われることを意味する」

「長期停産による損害リスクは……現実に存在するが、油田によって状況は異なる」と、元イランの実業家で、イラン政権に8年間拘束された後2023年に釈放されたシアマク・ナマジ(Siamak Namazi)氏は、4月29日付のワシントンDCの中東研究所(MEI)の分析記事に記した。

彼によれば、停産からの復旧においてイランが最も懸念するのは「急な揚油能力の喪失」ではなく「一部の油田では回復が遅れ、生産量が減少したり、生産能力が持続的に低下したりする可能性がある」ことだという。

「言い換えれば、被害は局所的で不均一、かつコストのかかるものになりうる。必ずしも絶対的なものではないが」と彼は述べた。

したたかで頑固な相手

ファラクシャヒ氏を含む複数のアナリストは、「崩壊状態」に陥ってもイラン・イスラム共和国は、何らかの見返りなしに米国の要求に応じる可能性は低いと警告する。

テヘランのイラン国家石油会社(NIOC)は、半世紀に及ぶ制裁、イラン・イラク戦争、新型コロナウイルス(中共ウイルス)感染拡大による海運障害など、数多くの逆境を経てきた「深い専門知識」を有していると彼は述べた。

ミルズ氏は「現実には……天然ガスの減産は余儀なくされるかもしれないが、イランは過去にも深刻な結果をもたらすことなく石油を停産させたことがあり(他の産油国もそうしてきた)」と記した。

2026年4月27日、フランス・ブレスト(Brest)の海洋情報・協力・状況認識センターで、仏海軍司令官トマ・スカラブル(Thomas Scalabre)がスクリーンに映し出されたホルムズ海峡の艦船位置を指し示している(Fred Tanneau/AFP via Getty Images)

イランがこれまでフル封鎖を回避するために取ってきた手法の一つが、油田全体を完全閉鎖するのではなく、油井を交代で閉鎖することだ。複数のメディアによれば、イランは老朽タンカーや「仮設倉庫」など、あらゆる場所・容器に石油を貯め込んでいるという。

ハルフ氏は、イラン中南部では「貯蔵能力が輸出量に対して構造的に高い」これは油井から港までの距離が長いことを指すため、陸上貯蔵能力が低く見積もられている可能性があると指摘する。

また、イランはこの10年間「代替貯蔵・輸出施設の増設」に多額の投資をしており、これは「同国が即座に大規模な原油生産停止に直面する危険はないことを示唆しているかもしれない」と彼は述べた。

ナマジ氏は「テヘランへの圧力は本物だ」としながらも、イランには独自の行動原理があると釘を刺す。

「スプレッドシート上では甚大に見える生産損失も、イラン政権の判断においては、多くの西側アナリストが想定するよりもはるかに軽い重みしか持たない可能性がある」

1979年以来、イスラム共和国は「政権存続、強制力、イデオロギー的立場、そして内部支配を、経済的福祉よりも優先させてきた」と彼は言う。

「かつてイランは、制裁、孤立、インフレ、資本逃避、深刻な経済的損失を受け入れてきた。指導部がそれらを戦略的譲歩よりも好ましいとみなしたからだ」とナマジ氏は述べた。

彼は「カウントダウン的なナラティブ」は「危険だ」と述べ、「イスラム共和国が普通のビジネス志向の国家のようにコストを計算すると仮定する、より深い分析上の誤り」を犯さないよう警告した。

「石油生産能力を失う可能性を示すことで、テヘランの現在の意思決定者たちを米国の要求に屈服させられる可能性は極めて小さい」と彼は述べた。

2023年9月19日、米国人のシアマク・ナマジ(右)、モラド・タハバズ(中)、エマド・シャルギ(左)の各氏が、バージニア州フォートベルボワー(Fort Belvoir)のデービドソン陸軍飛行場(Davison Army Airfield)で飛行機を降りた(Jonathan Ernst/POOL/AFP via Getty Images)

ホルムズ海峡をめぐる対立は米国のエネルギーコストを押し上げており、全国平均ガソリン価格はすでに1ガロン4ドルを超えている。11月の中間選挙が近づく中、共和党のわずかな多数派が危うい状況にあることから、多くのアナリストはイランが苛立つトランプ大統領を消耗戦で上回れると踏んでいると見ている。

「テヘランはおそらく、イランの痛みへの耐久力が相手方や石油価格に敏感な世界経済よりも高く、イランが妥協を求める前に他国が先に解放を求めると読んでいる」とナマジ氏は述べた。

「湾岸のアラブ側」

ロイター通信によると、ゴールドマン・サックスの試算では、4月24日時点で湾岸の原油生産量は戦前の日量2千万バレルから57%減少しており、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、バーレーンの日産約1450万バレル相当の生産能力が停止しているという。

米エネルギー情報局(EIA)は、膠着状態が5月中旬以降も続いた場合、湾岸の石油輸出量が日量900万バレル以下に落ち込む可能性があり、その半分はサウジアラビアの東西パイプライン経由で紅海沿岸のヤンブーから輸出されるとの見通しを示した。

イランによるホルムズ海峡の支配は湾岸地域の輸出経済を妨げるだけでなく、テヘランが「湾岸のアラブ側」に向けて実施したミサイル・無人機攻撃により生産が停止し、数十億ドルの損害が生じており、戦前の生産水準に戻すには数か月を要する。

3月18日のイランのミサイル攻撃では、カタールのラス・ラッファン工業都市にある「パール」液化天然ガス工場が破壊された。同工場は輸送用に天然ガスを液化する施設で、カタールエナジー最高経営責任者のサアド・アル=カービー氏は再建に最長5年を要すると述べた。

カタールのエネルギー相兼カタールエナジーCEO、サアド・シェリダ・アル=カービー氏が2024年9月1日、カタールの首都ドーハで開かれた記者会見で発言した(Karim Jaafar/AFP via Getty Images)

アラブ首長国連邦国防省によると、開戦以来、イランが発射した弾道ミサイル314発、無人機1672機、巡航ミサイル15発を迎撃したという。

イランによるホルムズ海峡支配がもたらす圧力はペルシャ湾地域内の亀裂を露わにしており、米国の行動を支持する湾岸諸国もあれば、イラン政府と個別に和平交渉を行う意向があるとされる国もある。この摩擦は亀裂を生んだ。4月28日、アラブ首長国連邦は「新たなエネルギー時代における主権的責任の追求」を理由に、5月1日付でOPEC(石油輸出国機構)からの脱退を宣言した。

「これは重大なニュースだ。今も衝撃を受けている」と、ケプラーの中東エネルギー・OPEC+インサイト責任者アメナ・バクル氏は4月30日のウェビナーで述べた。

UAEとサウジアラビアの間の緊張は「しばらく前から水面下でくすぶっていた」と彼女は言う。

「一部のUAE当局者が、自分たちがイランに攻撃されている際にアラブ諸国から十分な支援が得られなかったと公言しているのを耳にしている。ご存じの通り、イランによるUAEへの攻撃はイスラエルへのそれよりも激しいものだった」と彼女は述べた。

ワシントンD.C.の戦略国際問題研究所(CSIS)名誉会長ウィリアム・ラインシュ氏は4月22日の分析記事でこう記した。この戦争は「湾岸の小国の脆弱性を露わにした」と。

「湾岸諸国は数十年にわたり、外国投資・製造業・観光・通過輸送の安全で信頼できる目的地として世界に売り込んできた。しかし現在の戦争はその幻想を打ち砕いた。インフラは修復できるし、実際に修復されるだろうが、投資家と観光客の信頼を取り戻すことははるかに難しい。人と資金は他の場所へ向かう」

2026年4月28日、オーストリア・ウィーンのOPEC本部外観。アラブ首長国連邦は4月28日、5月1日付でOPECを正式脱退すると発表した(Christian Bruna/Getty Images)
受賞歴を持つエポックタイムズ記者。米国選挙、米国議会、エネルギー、防衛、インフラ分野を専門に担当。 45年以上にわたる豊富なメディア経験を活かし、深い洞察と正確な情報を読者に提供し続けている。
張紫珺
関連特集: 国際