17か国 海底インフラ防衛で連携 米中不在のシャングリラ対話

2026/06/01 更新: 2026/06/01

5月30日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議、通称「シャングリラ対話」で、17か国の国防相や代表が、海底ケーブルなど重要な海洋インフラの防衛協力について協議した。アメリカと中国共産党(中共)が加わらない中、各国は意図的な破壊行為を防ぐため、国際的な規範づくりを進める方針を示した。

シンガポール、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、カタール、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、オランダ、スウェーデン、イギリスの17か国は、「水中インフラ国防交流指導原則」の発表会に参加した。一方、米中は参加国リストに含まれていなかった。

海底インフラ 新たな防衛課題に

近年、海底ケーブルの損傷や破壊が相次いでおり、今年の会議でも重要な議題となった。こうした脅威について、専門家の間では中共、イラン、ロシアの関与を指摘する見方が多い。

オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は5月30日、海洋は現在の戦略環境の中で最も複雑で、競争が激しい領域だと述べた。

「近年、海底の重要インフラを狙った一連の攻撃が相次いでいる。その規模と頻度は前例がなく、世界の重要インフラの脆弱性を浮き彫りにしている」と指摘した。

マールズ氏は、バルト海でドイツ、フィンランド、スウェーデン、リトアニア、エストニアを結ぶ光ファイバーケーブルが、複数回にわたり意図的に切断された事例を挙げた。

「これを受け、NATOは『バルト海の番人』と呼ばれる作戦を開始した。重要な海底インフラを監視し、保護することが目的だ」

同氏はまた、台湾周辺で日本やフィリピンなどと結ぶ海底ケーブルも切断されたと述べた。台湾では近年、ケーブルの損傷が相次いで報告されている。専門家の間では、中共が「グレーゾーン」戦術の一環として台湾の海底通信網を破壊し、台湾側の対応を試しているとの見方が出ている。

さらに、中共の官製メディアや研究機関は4月、自主開発した海底ケーブル切断装置が、水深3500メートルの深海での試験に成功したと明らかにした。この発表を受け、国際社会では強い警戒感が広がり、非難の声も上がった。

一方、イラン革命防衛隊は4月、アメリカとペルシャ湾岸諸国を威嚇した。イラン政権への爆撃を停止せず、イラン港湾への封鎖を解除しなければ、報復としてペルシャ湾地域の海底ケーブルを破壊すると主張した。

「現代文明の動脈」海底ケーブル

マールズ氏は、海底ケーブルの破壊リスクは、オーストラリアにとって深刻な脅威だと強調した。

「オーストラリアのインターネット通信量の99%は、15本の海底ケーブルに依存している。これらのケーブルは、わが国の国際的なデジタル接続のほぼすべてを支えている。金融、医療、通信、情報協力、現代経済、そして国家機能の維持は、いずれもこれらのケーブルに大きく依存している」

同氏は、こうした課題に直面しているのはオーストラリアだけではないとも述べた。

「多くの太平洋島しょ国は、一本の海底ケーブルに通信を依存している。東南アジアの海域にも同様のインフラが広がっている。近年、インド太平洋地域では海底光ファイバーケーブルが急速に普及し、各地をクラウドサービス、世界市場、デジタル経済へと結び付けている。これらの光ファイバーケーブルは、まさに『現代文明の動脈』である」

マールズ氏は、「われわれ全体の対応が遅すぎた。これらを戦略上重要なインフラとして十分に位置づけてこなかった」と述べた。そのうえで、海上での競争も海洋領域のあり方を変えつつあると警告した。

海上競争の激化 「影の船団」も懸念材料に

マールズ氏は、制裁逃れなどに使われる、いわゆる「影の船団」にも言及した。これらの船団は、海底ケーブルの破壊に使われるだけでなく、制裁逃れや制裁対象原油の輸送、違法漁業、人身売買、麻薬密輸の主要な手段にもなっているという。

海洋領域の変化は差し迫っている。海底は新たな対立の場となり、「影の船団」も武器として利用されつつある。地域の繁栄を支えてきた海上交通の要衝は、近代史上かつてない圧力にさらされている。

マールズ氏は、各国が東南アジア、北東インド洋、太平洋地域のパートナーと協力する必要があると訴えた。紛争を防ぎ、地域の安全と繁栄を守るためには、こうした連携が欠かせないとの考えを示した。

専門家からは、今回の指導原則と参加国の広がりが、国際社会の関心を高め、インフラ防護に向けたより具体的な政策の推進につながるとの見方が出ている。

オーストラリアに本部を置く地域安全保障研究所のクリス・ガーディナー所長は、中堅国同士の協力によって、効率的な運用と先端技術を組み合わせ、水中の重要インフラを共同で守ることができると指摘した。

一方で、協力枠組みに主要大国が参加していない場合、技術や実行面で課題が残る。ただ、大国を除くことで、各国間の意思疎通や協力が進みやすくなる場合もある。志を同じくする中小国が連携することで、大国に対する一種の「ソフトな抑止力」になるとの評価も出ている。

呉瑞昌
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