ココナッツ1個15円に暴落 タイの農業を侵食する中国系企業 当局が厳罰化へ

2026/06/15 更新: 2026/06/15

中国系企業がタイで現地人の名義を借りて事業を行い、規制を回避している問題が警戒を集めている。ココナッツなどの農産品サプライチェーンを徐々に掌握しているとの指摘もあり、タイ政府はこのほど、中国系企業15社に対する調査を始めた。

ココナッツの買い取り価格が3分の1に 悲鳴を上げる地元農家

日経が6月14日に報じたところによると、タイ商務省の当局者は、外資が名義貸しを利用して各産業に入り込む問題は長年存在しており、タイ経済、とりわけ農業に影響を与えていると述べた。政府は現在、取り締まりを強化しているという。

この問題はココナッツ産業で特に目立っている。複数の地元業者は、中国と関係のある企業が現地のサプライチェーンを徐々に支配しつつあると指摘している。

タイ政府は最近、複数の中国系企業を名指しし、名義上の株主を通じて現地のココナッツ関連企業を支配していると指摘した。また、買い取り価格を引き下げることで市場を独占しようとしているとみている。

タイ中部ラーチャブリー県のココナッツ農家、タンワ氏は「中国企業がココナッツ産業を支配し続ければ、私たちは生計を維持できなくなる」と訴えた。

53歳のタンワさんは、父親が30年前に始めたココナッツ農園を継いだ。農園の面積は約4万8千平方メートルで、1千本以上のココナッツの木を栽培している。しかし、近年は赤字が続いているという。

現地では2024年に市場環境が急変した。中国企業と関係のある農産品仲介業者が大量に参入し、低価格での買い取りを通じて供給網に影響を及ぼした。その結果、ココナッツの買い取り価格は下落を続けている。現在の価格は1個あたり約3バーツ(約15円)で、以前の3分の1にも満たない。

法律の抜け穴を突く「名義貸し」 タイが中国人事業15社を調査

タイの「外国人事業法」では、外国資本の持ち株比率が50%以上の企業は外国人事業とみなされる。外国人事業は農業分野への参入や土地購入を禁じられている。

しかし、タイ政府関係者によると、一部の中国系企業はタイ国民の名義で株式を保有させ、現地企業を装って規制を回避しているという。実際の経営判断は、背後にいる企業が握っているとみられる。

タイ商務省商業発展局のプーンポン・ナイヤナパコン局長は日経に対し、タイ国民を名義上の株主として利用する行為は長年続いており、社会、経済、国際貿易に影響を及ぼしていると述べた。

タイ商務省は現在、外資規制に違反した疑いのある中国系企業少なくとも15社を調査している。これらの企業の一部はすでに社名が公表されている。関係者によると、違法営業の疑いに加え、利益の過少申告や脱税などの問題も浮上している。同様の事例は観光業やサービス業でも見られるという。

タイ当局は今年4月、新規会社登録の申請手続きを厳格化した。申請者には、企業が名義貸しによる経営に関与していないことを文書で確認するよう求めている。違反した場合、最高で禁錮3年、または100万バーツ、約3万600米ドルの罰金が科される可能性がある。

急増する中国投資と、東南アジア諸国に広がる規制強化

近年、中国企業によるタイへの投資は増加している。中国人への就労許可証の発行数は、2025年11月時点で5万6202件に達し、5年前の2倍以上となった。

また、タイが昨年承認した中国からの対内直接投資は1981億バーツ、約61億米ドルに上り、2024年から14%増加した。

タイの野党・人民党のシティポン・ラオワニ議員は、統計や政府関係者の発言から、中国企業が名義貸し問題に関与する事例が多いことは明らかだと指摘した。そのうえで、タイは法改正を行い、罰則を強化する必要があると述べた。

タイの法律事務所TNY Legalに所属する弁護士、長田貴久氏は、近年、違法の疑いがある企業が増えており、特に中国関連企業の問題が目立っていると指摘した。

同氏は、農業などの分野では外国企業の参入が明確に禁止されており、タイ政府は今後、関連法の執行をさらに強化する可能性があると述べた。

同様の問題はタイ以外の東南アジア諸国でも表面化している。ベトナムは昨年、企業に対し、実際に経営を支配する関係者の開示を求める法改正を行った。カンボジアも今年1月、取締役や関係者に対する身元確認を厳格化する政令を公布した。

高杉