米中AI競争 中国共産党の輸出規制に対抗

2026/07/24 更新: 2026/07/24

周知の通り、現在、中国共産党(中共)政府は人工知能の一部の指標、例えばコストやアルゴリズム効率などで優れた成果を上げている。中共は最先端のAIモデルを国家安全保障上の資産とみなし、AI技術や新興企業に対する輸出規制や投資制限などの導入を検討している。

中共当局は6月以降、バイトダンス、アリババ、智譜の中国企業3社を招集し、規制について協議した。

Metaは、中国のAI新興企業Manusを20億ドルで買収した。最も極端なケースでは、中共政府がManusに対し、買収を撤回するよう命じた。中共政府はこれに先立ち、Manusが対外投資、技術移転、輸出規制に関する法律などに違反した可能性があると主張していた。

その後、中共政府は、Manusがシンガポールに移転してMetaに売却されることにより、中国の技術基盤を空洞化させようとしたと非難した。中共政府は、Manusの共同創業者2人に中国国内にとどまるよう命じた。これは中国のAIエコシステムに萎縮効果をもたらし、一部の中国人AI研究者が中共の支配から逃れる事態につながる可能性がある。

前述の企業が開発したAIモデルに加え、中国が新たな輸出規制措置を導入した場合、杭州に本社を置くAI企業、DeepSeekが新たな中国製モデルを発表することにも影響を及ぼす可能性がある。

現在協議されている規制措置は、Z.ai GLM-5.2やDeepSeek V4 Proのように、すでに公開されているオープンウェイトモデルよりも、クローズドソースモデルや新たに開発されたオープンウェイトモデルに大きな影響を与える可能性がある。クローズドソースモデルとは異なり、オープンウェイトモデルは、いったん利用者のシステムにダウンロードされると、利用者が企業から独立してカスタマイズし、運用できる。このため、ほとんど規制や回収が不可能となり、テロリストやハッカーにも利用されやすくなる。

中国のオープンソースAIモデルは、米国の先進的な同種製品と比べて、価格が最大で60分の1である。このため、米国の価格に敏感な消費者の間で急速に普及している。しかし、中国のこうしたモデルは、多くの場合、米国のAI企業が苦労して生み出した成果を「蒸留(distillation)」したものを基礎としている。この蒸留は、窃盗(theft)に等しいといえる。その結果、米国の購入者は、中国の安価な消費財、医薬品、レアアースに依存するだけでなく、中国が窃取したAI技術にも依存することになりかねない。

米国政府が、国内での中国製モデルの利用を制限するとのうわさがある。これにより、米国が再び中国に依存することを避けられる。しかし、米国は自らの優位性を維持するため、中国が窃取したAI技術の使用を世界規模で禁止し、補助金などを通じて米国独自のAI技術の発展を促進することも計画すべきである。

米国は、戦略的資源であるAIと、政府や企業の情報システムに侵入する能力をますます高めているAIを、中国共産党系企業にみすみす明け渡す余裕はない。

米国はまた、中国共産党勢力がAIを利用し、1921年の結党からわずか数年後には中国人民を対象に始めた、前例のない窃取行為を継続することを許すべきではない。中国共産党が勢力を伸ばしてきた歴史の全過程で、窃取行為は繰り返されてきた。ソ連からの技術窃取や、現在の西側諸国からの大規模な技術窃取も、その中に含まれる。「蒸留」によってAIを獲得する行為は、中国共産党による長年の窃取の歴史に新たに加わった略奪行為であるといえる。

世界を中共のAIの渦に、これ以上巻き込んではならない。それは、さらなる窃取行為を正当化する理由を与えることになるからだ。その窃取行為が、いわゆる中国の民間AI企業に関連する異なる形で現れた場合であっても同様である。

自由市場は、AI人材の中国からの流出を招く。いずれにしても、利用者は米国製モデルをより選好するだろう。中国が自国のAI製品に輸出規制を導入すれば、外国の利用者にとっての信頼性が低下するだけでなく、中国のAI開発者の収益力も低下する。北京が科学の自由を声高に訴えるのは、自らが関連技術を欠いている場合だけである。

過去1か月、中国のAIは米国のAIに対して限定的な優位性を持っていた。これは、米国が6月にアンソロピックに一時的な輸出規制を課す一方、OpenAIも自主的な輸出制限措置を講じたためである。これにより、欧州を含む海外市場による両社製品の購入が抑制された。米国は、新たなAI製品の公開前に最大30日間の評価期間を設けることにより、関係企業にこうした制限を自主的に順守させようとしている。

しかし、米国の緩やかな規制政策は多くの場合、魅力的ではあるものの、米国企業が中国にAIを販売し、より高い利益を追求することを阻止するには不十分な可能性がある。報道によると、GoogleとOpenAIは、ブラックリストに掲載された中国企業の子会社が中国国外に所在している限り、そうした子会社にAI技術を提供している。

この方法は合法とされているため、議会はAI技術が敵対国に流出することを防ぐ、より厳格な法律を制定すべきである。関連法は、AI企業に過度な負担を課し、人材の米国外への流出を招くものであってはならない。補助金などの奨励措置が必要となる可能性がある。

中国と比べ、米国は依然として、より暮らしやすく、より自由な場所である。米国の生活様式を将来にわたり長期的に維持できるのであれば、AIを支援するために支払う代償は、それに見合うものとなるだろう。

時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。
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