台風13号「ドルフィン」による大雨に見舞われた中国浙江省で、はるか昔に築かれた城壁が、現代の洪水から街を守ったとして注目を集めている。
8月10日、浙江省台州市臨海市では大雨で川が増水し、市内各地が冠水した。そのなかで注目されたのが、旧市街を囲む「台州府城壁」である。
ネット上に投稿された上空からの映像を見ると、城壁の外側では道路や木々が茶色い水につかっている。一方、城壁は水をせき止め、旧市街への流入を防いでいる。城門には土のうを積むなどの対策も取られた。
この城壁は、単に敵から街を守るためのものではない。臨海市は霊江という川のそばにあり、昔から洪水に悩まされてきた。そのため城壁には、敵の侵入を防ぐと同時に、川の水を街へ入れない「堤防」としての役割も持たせてきた。
台州府城壁の歴史は1600年以上。全長はかつて6000メートルを超え、現在も5000メートル以上が残っている。長い年月の間に何度も修復を重ね、現在まで受け継がれてきた。
今回、城壁の外側が一面の水となった映像が中国のSNSで広がると、「古人の知恵はすごい」と驚きの声が相次いだ。
こうした「昔の人の知恵」が今も現役で働いている例は、中国各地に残っている。
四川省の都江堰は、2000年以上前につくられた水利施設でありながら、今も洪水を防ぎ、農地に水を届けている。古代の治水技術が、2000年以上たった現在も現役なのである。
山西省の応県木塔(仏宮寺釈迦塔)は1056年に建てられた木造塔だ。木材を巧みに組み合わせる伝統的な構造によって、約1000年の間に多くの地震を経験しながら、今なお立ち続けている。
北京の紫禁城(故宮)にも、明代から受け継がれてきた排水設備がある。2023年7月の豪雨では一部が冠水したが、排水路を調べると、泥のほかペットボトルやビニール袋などが詰まっていた。これらを取り除くと、排水は改善したという。
昔の人々は、水がどこから来て、どこへ流れるのか。地震の揺れをどう受け流すのか。その土地の自然を長く観察し、その知恵を建造物そのものに組み込んでいた。
そして今回、その知恵が決して過去のものではないことを、台州府城壁が改めて見せた。
1600年以上の歴史を持つ構造物が、現代の防災の最前線で今なお役に立っている光景は印象的だ。
新しいものを造ることだけが「進歩」とは限らない。
何百年も洪水を見てきた城壁は、今年も黙って濁流の前に立ちはだかっていた。
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