中国 30年以上を経て家族と再会

「妻」として売られた女性たち 10代で誘拐、8年半にわたり監禁・虐待

2026/08/15 更新: 2026/08/15

10代で誘拐され、見知らぬ男の「妻」にされる。地下室に閉じ込められ、虐待を受け続けること8年半。そんな女性が中国で、30年以上ぶりに家族と再会した。

中国メディアの報道によると、内モンゴル出身の王小紅さんは10代のころ、四川省南部の山深い地域・大涼山(だいりょうざん)へ連れ去られた。そこで年配の男から「妻になれ」と迫られ、地下室に監禁されたという。

部屋には高い位置に小さな窓があるだけ。食事は小さな穴から渡された。王さんはそこで8年半にわたり虐待を受け、腕や首には今も、たばこの火を押しつけられたという傷痕が残っている。

脱出の機会は突然訪れた。酒に酔って戻ってきた男が扉を開けた瞬間、王さんは男を地下室へ押し込み、逆に外から鍵をかけた。そのままいくつもの山を越え、ようやく逃げ延びたという。

しかし、自由になっても故郷には戻れなかった。長年の心の傷から家がどこだったのか思い出せず、その後は各地を転々とした。結婚して娘をもうけたが、今度は家庭内暴力に遭い、再び逃げた。広東省東莞にたどり着いてからは、身分証もないまま、荷物の梱包などの仕事で暮らしてきた。

今年8月、ようやく故郷が内モンゴルだったことを思い出し、支援者とSNSに家族を捜す動画を投稿した。すると、動画を偶然見た宅配便の配達員が、王さんの話す家族に心当たりがあることに気づいた。そこから親族に連絡がつながり、8月9日、30年以上ぶりの再会が実現した。

 

「妻」として売られる女性たち

中国では、女性を誘拐し、結婚相手を見つけにくい農村部などへ「妻」として売る人身売買が長年問題となってきた。

さらに根深いのは、女性の売買が人目につかない場所だけで行われてきた犯罪ではないことだ。買われた女性は村で暮らし、子どもを産み、村人や地元当局にも存在を知られながら、「その家の妻」として扱われ、被害者として救われない状況が長く続いてきたと批判されている。

2022年には江蘇省徐州市で、人身売買された女性が8人の子どもを産み、真冬に首を鎖でつながれ、小屋に閉じ込められていた「鉄鎖女事件(鎖につながれた女性事件)」が発覚した。

女性が動画の中で口にした言葉は、中国社会に大きな衝撃を与えた。

「这个世界不要俺了(この世界は、私を捨てた)」

ネット上ではこれに応えるように、「世界は、あなたを捨てていない」と書いたカードを掲げる人々が相次いだ。

 

在米の彫刻家・陳維明氏が製作した「鉄の鎖の女性」の彫像。首に鎖が巻かれ、光を失った目で悲しそうに立つ女性の像の背後には、それを押しつぶすように巨大な「中国」の文字がある。(同氏のXより)

 

それから4年以上が過ぎた今も、3月8日の国際女性デーが近づくと、華人圏のSNSではこの女性の写真が繰り返し投稿される。すべての中国女性を代表する姿ではない。それでも人々が忘れようとしないのは、「女性の権利は本当に守られているのか」という問いが、まだ終わっていないからだ。

王さんは家族のもとへ帰ることができた。だが、その人生に刻まれたものはあまりにも重い。10代で家族から引き離され、8年半にわたり監禁され、虐待され、体には傷が残った。故郷さえ思い出せなくなるほど心を傷つけられ、その後も各地をさまよった。

「妻」や「母親」である前に、一人の人間として自由に生きること。本来なら誰にも奪われてはならないその人生を、「妻」として売られた女性たちは奪われてきた。

だからこそ、あの女性が鎖につながれた小屋で発した言葉は、今も重く響く。

「この世界は、私を捨てた」
 



「世界はあなたを見捨てない!」 鎖の女性を救え、中共領事館前で抗議=ロサンゼルス

2024年1月27日、米ロサンゼルスの中国領事館前で、数十人の華人が「鉄の鎖の女性を忘れない」をテーマとした抗議集会を行った

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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