中共系基金が米元軍高官と核対話 米政府の枠外で非公式ルート構築か

2026/08/17 更新: 2026/08/17

8月13日、米保守派の政治記者ナタリー・ウィンターズ氏は自身のウェブサイトで、「中国(中共)のスパイが、アメリカの元軍高官とブラックリスト入りした中共兵器研究機関の間に秘密の核戦争ルートを構築」と題する調査報告書を発表した。

報告書は、「北京を拠点とする宣伝・諜報組織が、その規約で中共最高指導部への忠誠を掲げ、核分野に関する秘密の交流ルートの構築を支援していた」と指摘した。このルートを通じ、米国家安全保障分野でかつて最高レベルの職に就いていた元高官らが、核兵器研究開発を担う中共機関の研究者と直接接触していたという。

ウィンターズ氏によると、中国語の記録を調べた結果、これらの会合は米政府による外交活動ではなかった。関連情報の多くは中国語で報じられていたが、一部はすでに削除されたり、公開されなくなったりしている。

会合の運営に関わった中米交流基金について、米議会の調査担当者は「中共が政治戦を進めるための道具」と位置付けており、中共の幅広い統一戦線工作の一部だと指摘している。

「交流」に参加した元米高官らは、その経歴を通じ、米国家安全保障機関の内部事情に関する豊富な知識や人脈、信頼を有していた。

報告書によると、この交流ルートは約1年の間に、非公開の戦略協議から、米国家安全保障分野で最高レベルの職に就いていた元高官と中国(中共)の核兵器研究開発関係者との直接交流へと発展した。さらに、中共外交当局者や中共高官との接触へと広がった。

報告書は、中共がアメリカ側との対話を「トラック2」「トラック1.5」「トラック1」の3段階に分けていると説明している。トラック2は非公式対話、トラック1.5は非政府関係者と政府当局者が参加する半公式対話、トラック1は政府間の公式外交を指す。

ウィンターズ氏は報告で、「言い換えれば、中共とつながりを持つ主催者側は、アメリカの元高官と非公開で接触し、その後の正式協議の議題や条件を整える仕組みを公然と説明していた」と指摘した。

2024年9月 交流ルートを構築

2024年9月21〜22日、国観智庫(Grandview Institution)は第1回「米中戦略安全保障・安定対話」を開催した。

会議は太平洋国際交流基金会の支援を受けて行われた。同基金会は中米交流基金の中国本土における支部組織である。

国観智庫は2013年に設立された北京拠点のシンクタンクで、自らを独立系シンクタンクと位置付け、「中国(中共)と世界各国との効果的な対話の構築に取り組む」としている。

会議では、核政策と核戦略、危機管理、地域紛争の焦点、米中間の戦略的安定の将来など、国家安全保障上、極めて敏感な問題が議論された。参加者は「米中間における戦略的安定の新たな定義」についても意見を交わした。

この会議は、アメリカの核政策や国家安全保障政策の策定に携わった元米高官らと中共との継続的な非公開対話の始まりとなった。

国観智庫は2024年9月30日、この会合について報じた。

国観智庫:第1回「米中戦略安全・安定対話」(トラック2)を開催

2024年10月 核指揮・統制分野へ拡大

ウィンターズ氏は報告で、その1か月後には協議内容がさらに敏感なテーマへと踏み込んだと指摘した。

2024年10月11〜13日、国観智庫は北京で第1回「核フェイルセーフ対話」(Nuclear Fail-Safe Dialogue)を主催し、アメリカの元高官や核分野の専門家を招き、核政策、核戦力態勢、核兵器管理システムについて協議した。

参加者は、核指揮・統制のプロセスや核戦力態勢に加え、核兵器や運搬システムの設計の一部についても議論したという。

議題には、発射後の弾道ミサイルを破壊する仕組み、核関連要員の信頼性を確認する制度、指導者の意思決定時間を延ばすための政策、弾道ミサイル発射の早期警戒データを共有する可能性などが含まれていた。

国観智庫は関連報告書で、「米中両国によるトラック1、トラック1.5、トラック2の二国間対話は、ほかの問題で進展を得るための足がかりになる可能性がある」としている。

国観智庫は2025年9月16日、この会合について報じた。

国観智庫 第1回「米中核フェイルセーフ対話」を開催

2025年4月 元米統合参謀本部議長が参加

2025年4月には、アメリカ側からこれまでより高位の元政府・軍高官が参加するようになった。

PIEFは第2回「米中戦略安全・安定対話」に資金を提供し、中米交流基金も自らを共同主催者としている。

米代表団には、元米統合参謀本部議長や元米戦略軍司令官など、米軍の元高官が参加した。議題には、米中両国の核戦略や核政策、核態勢の評価、世界の核戦力バランス、米中間で想定される危機や衝突などが含まれた。

対話に先立ち、米代表団は中共外務省や中共軍備管理・軍縮協会と会談したほか、中共中央対外連絡部の馬輝副部長とも面会した。

ウィンターズ氏は調査報告書で、この段階になると、こうした取り組みはもはや学術交流というより、中共が影響力を拡大するための仕組みに近いと指摘した。

具体的には、アメリカでなお高い知名度と人脈を持つ元政府高官を選び、中共側が管理する交流に繰り返し参加させ、次第に高位の中共関係者と接触させながら、通常の米政府の監督や審査を経ずに非公式な連絡ルートを維持するというものだ。

国観智庫は2025年4月8日、この活動について報じた。

国観智庫 第2回「米中戦略安全・安定対話」を開催

2025年10月 中共の核兵器研究機関が対話に参加

ウィンターズ氏の報告書によると、その6か月後、PIEFは北京で開かれた第2回「米中核フェイルセーフ対話」に資金を提供した。

米代表団には、元エネルギー長官、元上院軍事委員長、元米戦略軍司令官、元国家核安全保障局高官らが参加した。いずれもアメリカの核政策に精通し、核政策や核安全保障に関わる機関で要職を務めた経験を持つ人物だった。

これに対し、中共側には中国工程物理研究院の関係者が出席した。中国工程物理研究院戦略研究センターの趙武文主任、孫向麗副主任、張啓正副研究員のほか、中核戦略計画研究院の孫祥利副主任も参加した。

中核戦略計画研究院は、中国核工業集団が全額出資する直属機関で、同集団の中核的な専門シンクタンクでもある。

このほか、清華大学国際関係学部、復旦大学発展研究院、陝西国際問題研究院などの関係者も参加した。

中国工程物理研究院は、米政府が中国(中共)の核兵器の研究、開発、実験を担う機関と認定しており、1997年以来、アメリカの輸出規制の対象となっている。

会談では、米核兵器の誤作動や誤使用を防ぐ「フェイルセーフ」の審査制度、世界の核情勢、中国の核フェイルセーフ手続き、新興技術、国際協力の可能性などが議論された。

報告書によると、PIEFは、この取り組みがすでに概念上の議論を超え、「制度設計」と具体的な実施段階に入ったとしている。

翌日には、非公開対話に続いて中共政府高官との会談も行われた。

国観智庫の関係者が米側参加者に同行し、中共外務省軍備管理局の孫暁波局長や、北米事務を担当する高官の唐志文と会談したほか、中共中央対外連絡部の馬輝副部長とも再び面会した。

国観智庫は2025年10月17日、この活動について報じた。

国観智庫 第2回「米中核フェイルセーフ対話」を開催

2025年12月:非公式ルートを通じ中共の政策判断に情報提供

12月16~17日、会合は再び開かれた。

報告書によると、中米交流基金は第3回「米中戦略安全・安定対話」を支援し、中米交流基金の周建成総裁も参加して共同議長を務めた。

中米交流基金の公式サイトは第3回「米中戦略安全・安定対話」について報じていたが、現在、この掲載記事は削除されている(google)

中米交流基金は以前、対話の議事概要を公開していたが、その後ウェブサイトから削除した。

今回の対話には、中核戦略計画研究センターの孫祥利副主任が再び参加した。中国工程物理研究院のほかの関係者もオブザーバーとして出席した。

会議では、従来の核抑止、新興技術、AIが核安全に及ぼす影響、危機管理などについて議論した。

国観智庫は報告書の中で、米中対話について「まずトラック2対話(米中戦略安全・安定対話)から始め、トラック1やトラック1.5の対話に向けて条件を整え、議題を絞り込むことができる」としている。

国観智庫は2025年12月18日、この活動について報じた。

国観智庫 第3回「米中戦略安全・安定対話」を開催

誰がこのルートを築いたのか

ウィンターズ氏は調査報告書で、一連の対話がどのように発展してきたのかを最初から最後までたどることで、中米交流基金が果たした役割が明確になると指摘した。

PIEFは2012年9月、中米交流基金が中国本土に設立した法人で、設立時の2千万元の出資金は中米交流基金が拠出した。中国人民対外友好協会の所管下にある。

PIEFの定款には、同基金会が「中国共産党の全面的な指導を支持する」と明記されている。

また、共産党組織を設置し、党の代表が運営に関する会議へ参加することを認めるよう求めている。さらに、重大な意思決定や「対外活動」の審査に党組織が関与することも定めている。

同基金会の使命の一つには、「戦略的相互信頼」の構築を目的とした米中の政府間・非政府間のハイレベル対話を組織し、資金援助することも含まれている。

米中安全保障分野をめぐる政治戦

中米交流基金については、中共の統一戦線工作のより広範な戦略を反映しているとして、アメリカで繰り返し調査の対象となってきた。

米議会の調査担当者は、中米交流基金を「中共が政治戦を展開するための手段」と表現している。

また、米中経済安全保障調査委員会は、中共の統一戦線工作について、中共に対する潜在的な反対勢力を「取り込み、無力化する」ことを目的とした活動だと説明している。

ウィンターズ氏はこれまで、外国代理人登録法に基づく文書を調査し、アメリカの主要報道機関に所属する記者、編集者、コラムニストらが中米交流基金の資金提供を受け、無料で中国を訪問していたことを明らかにしている。

ウィンターズ氏は報告書で、中米交流基金のほかの活動についても、米議会スタッフ、研究者、軍関係者、政策エリートとの関係構築に重点を置いてきたと指摘した。

米中対話という形式は、こうした手法を、これまで以上に機微性の高い安全保障分野の関係者に適用したものだとしている。

報告書によると、PIEFが支援した対話に参加した複数の元米政府高官と中国との関係は、学術交流だけにとどまっていない。

一部の人物は、中国市場や中共系の合弁企業と深い事業関係を持つ多国籍企業から、多額の報酬を受け取っていたという。

唐鳳
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