EUの3ユーロ関税で越境ECに変化 リトアニアで中国発小口貨物98%減

2026/08/21 更新: 2026/08/21

2026年7月1日、EUは150ユーロ以下の輸入品に対する免税措置を正式に撤廃し、Temu、AliExpress、SHEINなどの越境ECプラットフォームから届く荷物について、商品分類ごとに3ユーロの暫定関税を課し始めた。長年続いてきた免税制度の抜け穴をふさぐことを目的とした新制度は、導入からわずか1か月余りで大きな効果を見せている。

リトアニア 中国からの小口貨物が98%減

EUへの貨物輸入の主要な玄関口の一つであるリトアニアでは、7月に小口貨物の申告件数が急減した。

リトアニア税関のデータによると、2026年7月に申告された中国からの小口貨物は約7200個にとどまり、2025年同期の44万1300個から約98.4%減少した。

EU域外からの小口貨物全体でも、申告件数は4万1100個となり、約91.7%減少した。

リトアニアで申告された小口貨物に占める中国からの荷物の割合も、2026年1月の91%から7月には18%まで低下した。

リトアニア国営放送LRTによると、大手物流会社でも取扱量が大幅に落ち込んでいる。

フランスの物流大手Geopost傘下のDPD Lietuvaは、新制度の導入後、対象となる荷物の取扱量が約70%減少したとしている。リトアニア郵便はEU域外国からの輸入量が30%減ったと報告し、物流会社Omniva Lithuaniaも、アジアから直接発送される荷物が大幅に減ったと明らかにした。

一方、リトアニア税関や物流業界関係者は、7月の数字には販売業者による通関手続きの調整や、消費者が新たな関税制度に慣れるまでの期間、税関が一時的にEORI番号を義務付けたことなど、制度移行に伴う一時的な要因もあると指摘している。

単月のデータだけで長期傾向を判断するのは難しいが、導入直後から小口貨物が大幅に減ったことは明らかだ。

商品分類ごとに課税 「まとめ買い」も割高に

こうした傾向はリトアニアに限らず、ヨーロッパ各地に広がっている。

欧州委員会や各国税関が公表した最新の運用指針によると、3ユーロの関税は荷物1個につき一律で課すのではなく、荷物に含まれる商品の「関税分類コード」ごとに加算する。

例えば、消費者が同じ荷物でTシャツ1枚と靴1足を注文した場合、それぞれ異なる商品分類に該当するため、3ユーロずつ、計6ユーロの関税がかかる。

この仕組みにより、複数の商品を一つの荷物にまとめて免税の恩恵を受ける従来の購入方法は通用しにくくなった。

EUの最新の消費者保護規則では、越境ECサイトが決済時に関税を明確に徴収していない場合、消費者は配達時の支払いを拒み、返品を選ぶことができる。

フィンランドやフランスなどの物流業者によると、7月には一部のEU域外プラットフォームでシステム対応が間に合わず、配達時の受け取り拒否や現地での廃棄が相次いだ。

北アイルランドにも波及

新制度はEU域外にも波及している。

英メディアによると、EU離脱後に設けられた特別な貿易制度により、3ユーロの小口貨物関税はイギリスの北アイルランドにも適用する。

このため、イギリス本土から北アイルランドへの配送でもEUと同程度の厳格な申告・審査を求め、EC事業者や宅配業者も手続きの見直しを進めている。

EU関税で消費に変化 域内ECには追い風

新制度はヨーロッパの小売市場にも変化をもたらしている。

ケルンの電子商取引研究機関やヨーロッパの商業団体の分析によると、海外ECプラットフォームは長年、免税制度や配送費補助を活用して低価格商品をヨーロッパ市場に大量投入し、域内の実店舗やEC企業との競争条件に格差を生んできた。

関税導入後は、海外の格安商品とヨーロッパ域内の商品との価格差が縮まりつつある。

オランダ、ドイツ、バルト三国では、Bol.comやOttoなどの域内ECプラットフォームで、注文数やサイト訪問者数が回復している。

「安いから買う」消費にも変化

1回の注文に3ユーロ以上の負担が生じることで、数ユーロの商品を送料無料で買える従来の割安感は薄れた。

調査では、消費者の半数近くが海外ECプラットフォームでの購入頻度を減らしたと回答している。

安さを理由に予定外の小物を買う傾向が弱まり、複数回の注文を1回にまとめて関税負担を抑える消費者も増えている。

荷物減少で環境負荷や税関業務も軽減

欧州委員会のデータによると、これまでは年間約60億個の小口貨物がヨーロッパへ直接発送され、航空輸送によって大量の二酸化炭素が排出される一方、プラスチック包装ごみも大量に発生していた。

荷物の急減により、「ファストファッションごみ」による環境負荷も大幅に軽減した。

また、荷物の総量が減ったことで、税関は検査により多くの人員や資源を振り向けられるようになり、製品の安全確認や基準に適合しない商品の抜き取り検査も強化している。

中国の販売業者、「欧州域内倉庫」へ切り替え

関税という新たな負担が加わっても、海外の販売業者やECプラットフォームがヨーロッパ市場から撤退したわけではない。

Venipakなど物流関連企業の分析によると、直送件数の減少が、そのまま需要の縮小を意味するわけではない。多くの販売業者は「大量の海上・陸上輸送+ヨーロッパ域内の保税倉庫」方式へ切り替えている。

商品をあらかじめ大量にポーランド、ドイツ、チェコなどの倉庫へ運び、まとめて通関した後、現地から消費者へ発送する仕組みだ。

この方式は、個別の直送小包にかかる関税負担を抑えるだけでなく、域内の倉庫や保税区域、B2B物流の需要拡大にもつながる。

越境ECの物流は、より規制に対応した現地配送型へ移りつつある。

今後は2ユーロの取扱手数料も

商品分類ごとに3ユーロを課す暫定関税は、2028年7月まで続く予定で、その後EUは恒久的な規制制度を導入する見通しだ。

ただ、直送小包をめぐる規制は今後さらに厳しくなる。

現在の3ユーロの暫定関税に加え、EU各国は2026年11月1日の導入予定の2ユーロのEU共通取扱手数料(Union Handling Fee)について協議を進めている。同日には、商品情報を追跡するためのPIDsも義務化する予定だ。

両方を導入すれば、複数の商品分類を含む注文では、分類ごとの3ユーロに加え、荷物1個につき2ユーロの取扱手数料もかかる。

直送小包の事務・通関コストはさらに増えることになる。

李言
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