防衛省は、退職した自衛隊員やその家族を支援する「退職自衛隊員・家族支援庁(仮称)」を外局として新設し、2027年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めた。人員は約110人規模を想定している。
新庁は長官をトップに、「政策課」と3人の参事官を置く体制を検討している。それぞれ退職隊員、家族、予備自衛官の支援を担当する。
政策課は退職隊員の情報を管理するほか、民間サービスなどで割引や特典を受けられる退職者向けアプリの開発・運用を目指す。退職隊員担当は再就職や、負傷して退職した隊員の社会復帰、給付に関する業務を担う。家族担当は育児支援などの環境整備や慰霊・顕彰、予備自衛官担当は募集や雇用企業への支援を進める。
小泉防衛相「退職後や家族も支える環境を」
新庁の構想は、小泉防衛相が6月に打ち出していた。
防衛省は6月17日、「退職自衛隊員・家族に対する支援の強化に関する検討委員会」を設置した。小泉氏は同月26日の記者会見で、退職隊員の管理や家族への支援、退職後の給付、負傷した隊員の社会復帰支援などを担う「退職自衛隊員・家族支援庁」のような組織が必要だとの考えを示した。
小泉氏は、現役隊員の待遇改善だけでなく、「退職した自衛隊員や御家族の皆様も誇りを持って、胸を張って人生を全うできる環境」をつくる必要があるとしている。
背景に自衛官の深刻な人手不足
背景には、自衛官のなり手不足がある。
2025年度末の自衛官の充足率は88.1%にとどまった。2025年度の採用者は1万1177人と前年度から1453人、14.9%増えたものの、定員割れは続いている。防衛省は人材確保を「至上命題」と位置付けている。
さらに、約20年後には自衛官の募集対象となる人口が約3割減るとの推計もある。防衛省は現役時代の処遇改善だけでなく、退職後の生活や家族まで支援する体制を整え、自衛官の採用や定着につなげたい考えだ。
自衛官には一般の国家公務員より早く退職する「若年定年制」がある。多くの幹部や准尉、曹は55~58歳で定年を迎える。2026年度には陸海空合わせて約5800人が定年退職する見込みで、退職後の再就職や生活設計は長年の課題となっている。
防衛省には現在、装備品の研究開発や調達などを担う防衛装備庁が外局として置かれている。退職自衛隊員・家族支援庁が実現すれば、新たな外局が加わることになる。
一方、新庁の設置には慎重な声もある。すでに防衛省が再就職や給付などの支援を行っていることから、「既存組織の拡充で対応できるのではないか」との指摘や、行政組織の肥大化、再就職支援を通じた「天下り」の受け皿になることへの懸念も出ている。また、自衛官不足が続く中、新組織の設置より現役隊員の給与や勤務環境の改善を優先すべきだとの意見もある。
防衛省は今後、2027年度概算要求に向けて組織や業務の具体化を進める方針だ。
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