ミャンマー人身売買の実態 4日間に3回転売 学歴や入力速度で被害者を「値踏み」

2026/10/08 更新: 2026/10/08

中国の俳優、王星が昨年だまされてミャンマー東部ミャワディに連れ去られた事件について、新たな事実が明らかになった。王星はわずか4日間で3回にわたり別の詐欺組織に転売され、金銭を支払って解放してもらおうとしたこともあったという。

事件の捜査資料によると、現地の人身売買組織は学歴やタイピング速度などを基準に被害者の「価格」を決め、1人当たり最大20万元で売買していた。

4日間で3回転売 1人最大20万元

中国メディア「上観新聞」が10月7日に報じたところによると、王星はミャワディに連れ込まれた後、まず「アポロ団地」に送られた。その後、「環亜団地」に隣接する拠点へ売られ、最後に「凱旋団地」へ移された。わずか4日間で3回転売された。

王星は人身売買組織側と交渉し、金銭を支払う代わりに解放してもらおうとした。しかし、組織のメンバーは「ミャワディで足りないのは金ではなく人だ」と答えたという。

捜査資料によると、関係する組織は主に人身売買で利益を得ており、被害者1人を10万元、場合によっては20万元で取引していた。

学歴やタイピング速度などによって価格が変わる一方、被害者の能力にかかわらず買い取り、それぞれの条件に応じて値段を付けていた。

偽オーディションで誘い出す 恋人にSOSの合言葉

2024年12月末、王星は俳優のWeChatグループで、タイで撮影する作品の出演者募集を見つけた。

かつてエキストラとして活動していた顔某磊が「顔十六」と名乗り、撮影スタッフの助監督を装って俳優を募集していた。

王星はオーディションを通過した後、2025年1月2日に上海を出発し、翌3日未明にバンコクへ到着した。

しかし、迎えの車はホテルには向かわず、タイとミャンマーの国境方面へ進んだ。途中で別の車に乗り換えるよう求められ、そのまま拘束された。

危険を察知した王星は、恋人との間で事前に決めていたSOSの合言葉「猫に餌をやった?」とメッセージを送った。

その後、武装した人物らによってミャンマーのミャワディへ連れ込まれ、外部との連絡が途絶えた。

王星の恋人は1月5日夜、インターネット上で救助を求めた。王星は1月7日にタイで保護された。救出後、施設には自分のほかにも約50人の中国人が拘束されていたと明かした。

相次ぐ救助要請 「立件されず」との記録も

国営メディアのドキュメンタリーで、中国共産党(中共)公安部の担当者は、中共が2023年の時点ですでにミャワディについて「特別調査と情報収集」を行っていたと説明した。

一方、同じ担当者は王星事件の発生後、「ミャワディのふたが開いたようなものだった」とも語っている。

王星が行方不明になった後、恋人と弟はそれぞれ上海の警察に届け出るとともに、中国の在タイ大使館にも連絡した。

家族は当初、タイ国内で警察に届け出る必要があると説明されたという。上海の警察が王星に対する違法拘禁の疑いで事件を立件したのは1月6日だった。

王星の救出後、ミャワディなどに拘束されている人々の家族から、インターネット上で救助を求める声が相次いだ。

家族らが作成した被害者の帰国支援を目的とする「星星帰還プロジェクト」の文書は中国国内のインターネット上で更新が止まったが、その後、海外版の「千万星星帰還プロジェクト」が情報の収集と整理を続けている。

海外の運営チームが公表した2025年の報告によると、このプロジェクトでは、中国人の誘拐や人身売買に関する情報1877件を整理した。

過去の救助要請リストには、未立件や警察に届け出たが立件されなかったと記されたケースもあった。

亜太新城 中共機関との関係も浮上

王星事件をきっかけに、ミャワディへの関心が改めて高まっている。

同地域にある亜太新城と、中共の国有企業や関連機関とのつながりについては、これまでにも研究報告で取り上げられてきた。

米平和研究所が2020年に発表した報告書によると、ミャンマーの一部のカジノ都市開発を手がける中国系事業者は、中共の政府機関と協力し、関連プロジェクトを一帯一路の一環として位置づけていたという。

同研究所が2024年に発表した別の報告書によると、亜太新城は中共国有企業の中国冶金科工集団と2億6千万ドル規模の建設契約を締結した。

また、国家発展改革委員会傘下のシンクタンクと関係する組織や、中国僑商聯合会ともつながりがあったという。

亜太新城の創設者、佘智江は2024年、タイで拘束されていた際に衛星テレビ局アルジャジーラの取材を受け、自身はかつて中国の国家安全当局に所属していたと主張した。

さらに、中共の国家安全当局者が自身をミャンマー視察に同行させたほか、中国僑聯がプロジェクトの契約締結を支援したとも語った。

平和研究所は報告書で、こうした事例について、国際的な犯罪ネットワークが中国の国有企業や関連機関とのつながりを利用し、事業の正当性を演出していたと分析している。

徐亦揚
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